権田修一が衝撃「ポジション争いは存在しない」 常勝軍団神戸の文化…悲願達成へ「全てを捧げる覚悟」

インタビューに応じた神戸の権田修一【写真:牛島寿人】
インタビューに応じた神戸の権田修一【写真:牛島寿人】

昨夏より神戸に加入した権田修一

 ピッチの最深部から常にチーム全体を見渡し、時に鋭い声で味方の背中を押し続けるヴィッセル神戸GK権田修一。新体制で挑んだ激動のシーズンを振り返りつつ、熾烈なポジション争い、アジア・チャンピオンズリーグエリート(ACLE)制覇への強い執念、そしてベテランとしてクラブに継承すべき「勝者の文化」について、その熱い胸中を語った。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・小西優介/全5回の1回目)

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「ノーチャンス」の選手は作らない。新指揮官の就任は、チームに大きな地殻変動をもたらした。2023年、24年と連覇を成し遂げた神戸は吉田孝行監督が2025年限りで退任。百年構想リーグより、サンフレッチェ広島を率いていたミヒャエル・スキッベ監督を新たに招聘した。2025年のシーズン途中より加入した権田は、新指揮官がチームに注入した新しい空気感を肌で感じ取っている。

「スキッベ監督は、本当によく選手のことを見ていますし、こんな監督は初めてでした。練習中も『あ、こんな細かいところまで拾っているんだ』と驚かされることが多いです。目立たないところで泥臭く頑張っている選手のアピールもしっかりと評価してくれる監督ですね」

 若手起用でも定評のあるスキッベ監督。「ルヴァンカップも含めて、監督は実に多くの選手をピッチに送り出します。だからチーム内に『自分にはもうチャンスがない』と腐ってしまう選手が一人もいないんです。日々のトレーニングからすさまじい活気が生まれていますし、これはクラブの将来を考えても非常に価値のある変化だと実感しています」と、その公平で観察眼に長けた指導スタイルが、チーム全体の熱量を一段引き上げたのだという。

 同じく代表クラスの実力を持つGK前川黛也とのゴールマウスを巡る争い。しかし、権田の視線はより高みを見つめており、ライバル関係とは一線を画している。

「スキッベ監督のもとでは、誰がいつ起用され、逆に誰が出ないのかを事前に予測することができません。だから正直、僕の中ではポジション争いという概念自体が存在しない感覚なんです」

 いつどんなタイミングで名前を呼ばれても、即座に最高のパフォーマンスを発揮することのみに焦点を当て、「出番を与えられた時に、確実に結果を残す。考えているのはそれだけです。GKは1年間を通して一度もチャンスが巡ってこないことすらある過酷なポジションです。けれど、チャンスをくれる監督だからこそ、いつでも100%で戦える準備をしておく。出ろと言われればピッチで全てを出し切り、ベンチを温める日があれば次の機会に向けて静かに爪を研ぐ。それがこの指揮官のもとで戦う僕のスタイルです」と権田が胸に刻むのは、ゴールキーパーという特殊なポジションゆえの矜持だ。

百年構想リーグで優勝も満足せず

 神戸はスキッベ監督就任初年度で臨んだ百年構想リーグで西地区を制すると、順位決定戦では、前年度王者である鹿島アントラーズ相手に第一戦で5-0と快勝。第二戦では0-2で敗れたが2戦合計5-2で見事に優勝を果たした。

 しかし特別リーグで優勝シャーレを掲げた歓喜の裏で、チームには静かな不完全燃焼感が漂っていた。ACLE敗退という現実が、彼らのプライドを激しく揺さぶったからだ。

 神戸はACLEのグループステージを突破すると、ラウンド16も制して準々決勝以降が集中開催されるサウジアラビアへ。そして準々決勝ではカタールの強豪アル・サッドを破ったが、準決勝ではMFリヤド・マフレズ、FWイヴァン・トニーを擁するアル・アハリ(サウジアラビア)に敗れて無念の敗退となった。

「百年構想リーグ優勝という結果は半年間の取り組みのご褒美ですが、それ以上にACLで結果を残せなかった悔しさの方がチームには重くのしかかっていました。帰国後の戦いぶりを見ても『このままでいいはずがない』という焦燥感の方がみんな強かったと思います」

 だからこそ、新シーズンに向けた始動期にも一切の甘えはなかった。選手たちは課題と正面から向き合い、より高次元のサッカーを目指して歩みを進めている。

「悲観的になるのではなく『自分たちはもっとできる』というポジティブな熱量を持ってリスタートを切りました。戦術の大枠だけでなく、パス1本、トラップ1つのディテールにこだわり抜く姿勢が求められています。Jリーグで勝てないチームが、アジアの頂点に立てるほど甘くはありません。目の前の1試合に全力を尽くし、課題を潰し、強みを磨き上げる。その愚直な積み重ねの先にしか、ACLEファイナルステージでの完成度は生まれないんです。ピッチに立ってトロフィーを掲げるのが理想ですが、チームの一員である以上、自分の立場に関係なくクラブの悲願達成のためにできる全てを捧げる覚悟です」

 神戸には権田の他に大迫勇也や、酒井高徳といった経験豊富なベテラン勢が在籍している。権田はそのベテランが担うべき真の役割を噛み締めている。

「元日本代表の僕らがチームを引っ張っていますが、僕らがいなくなった途端に弱くなってしまうのなら、それは一過性のブームに過ぎません。サコ(大迫)や高徳のように、プレー面はもちろん人間的にも素晴らしいお手本となる選手が揃っている。彼らの背中を下の世代に見せ、神戸というクラブに『勝者のメンタリティ』を根付かせることが何より重要なんです。口で言うのは簡単ですが、一番説得力を持つのはピッチ上のプレー。僕たちが見せる日々の姿勢こそが、今果たすべき最大の役割だと思っています」

 さらに、神戸の誇るアカデミーのレベルの高さには、権田自身も強い衝撃を受けた。

「加入して驚いたのですが、ヴィッセルは育成年代のクオリティが本当に高い。ジュニアユースの全国大会での活躍やユースのプレミアリーグでの戦いぶりを見ても、素材として素晴らしい選手が次々と育っています。スター選手を集めるビッグクラブというイメージが先行しがちですが、実は未来がすごく楽しみな組織なんです」

 それでも、「素晴らしい素材であっても、トップで通用するかはまったく別の話です。僕たちベテランもサポートはしますが、最後は自分の力で立ち位置を奪い取らなければ生き残れない。キーパーなら僕から、フォワードなら大迫勇也から定位置を奪わなければピッチには立てないんです。ここは日本で最もポジション奪取が難しいクラブの一つ。だからこそ、若い選手たちにはその高い壁を自らの力でぶち破って出てきてほしいと切に願っています」と、未来のクラブを背負う若き才能たちへ向ける眼差しには、厳しさと期待が入り混じる。

 目の前の1試合、そしてアジアの頂へ。背中で語る守護神の覚悟が、神戸を更なる高みへと押し上げていく。

(FOOTBALL ZONE編集部・小西優介 / Yusuke Konishi)



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