第3次森保Jに「セコム」の時代到来 フランス移籍で急成長…もたらした代表DF陣の“序列変化”

急成長を見せる日本代表の瀬古歩夢【写真:徳原隆元】
急成長を見せる日本代表の瀬古歩夢【写真:徳原隆元】

今回の代表ウィークで一際存在感を見せている瀬古歩夢

 悲願の2027年アジアカップ(サウジアラビア)制覇に向け、ここまで3試合を消化した第3次森保ジャパン。

 直近10月1日のエクアドル戦(横浜)は90分0-0のまま決着がつかず、PK戦に突入。日本は上田綺世(リール)、鎌田大地(クリスタル・パレス)、伊藤洋輝(バイエルン・ミュンヘン)、相馬勇紀(FC町田ゼルビア)、前田大然(イプスウィッチ)の5人が揃って成功させ、守護神・鈴木彩艶(アストン・ビラ)も相手3人目を阻止し辛くも勝利した。5日の決勝・ニュージーランド戦(東京・国立)に駒を進めている。

 その試合でまたも異彩を放ったのが、瀬古歩夢(ル・アーブル)だった。DF陣で唯一の3戦連続先発した彼は、球際と寄せの激しいエクアドルアタッカー陣相手に奮闘。特にニルソン・アングロ(サンダーランド)との再三のマッチアップは見応え十分だった。そこで粘り強い対応を見せ、ピンチを阻止する姿は見る者を大いに釘付けにした。

 SNS上では、大手警備保障会社になぞらえて「セコム」の異名が生まれたほど。本人はそのことを報道陣に指摘され、「変わらずやっていければいいと思います」と笑っていたが、本当にグングン成長しているのは間違いない。

「やっぱり個人のDFとして5大リーグに行けたことが、今の自分のプレーに表れているのかなと思いますし、あの決断をしてよかったと思います」と瀬古は2025年夏にフランス・リーグアンに身を投じたことが、飛躍の転機になったと考えている様子だ。

 2026年北中米ワールドカップ(W杯)でも、チュニジア戦(モンテレイ)、スウェーデン戦(ダラス)の2試合に出場し、世界最高峰を体感。チームを統率していた板倉滉(ボルシアMG)やサポートプレーヤーの吉田麻也(LAギャラクシー)の立ち振る舞いを目の当たりにしたことも、主力としての自覚を引き上げる好機になったという。

「麻也くんであったり、滉くんであったり、そういう偉大な先輩たちがいるなかで、その人たちに負けないような絶対的な存在になっていきたい。『自分たちの世代が引っ張っていくんだ』という自覚が生まれたのは確かです」と彼は神妙な面持ちで言う。

 とはいえ、セレッソ大阪ユース時代からよく知られていた“やんちゃな部分”を卒業するつもりはないようだ。「そこは今まで通り、貫いていきたい。何歳になってもこのままでいたい」とマイペースな物言いを見せるあたりも、瀬古の頼もしさ。彼の台頭によって、今後の日本代表DF陣の序列も変化しそうだ。

 2023年~26年にかけての第2次森保ジャパンを改めて振り返ってみると、当初、主軸を担っていたのは、板倉と冨安健洋(現クリスタル・パレス)。そこに谷口彰悟(シント=トロイデン)と伊藤洋輝(バイエルン・ミュンヘン)が加わった形だ。24年6月のミャンマー戦(ヤンゴン)で3バックにシフトしてからは町田浩樹(ホッフェンハイム)、橋岡大樹(ボルシアMG)らもプレー。瀬古も呼ばれてはいたものの、起用されないケースが多かった。

 その後、最終予選が始まると、冨安が長期離脱を強いられ、谷口が左足アキレス腱断裂の重傷を負った。伊藤洋輝も右足第5中足骨骨折を繰り返したため、結果的に瀬古の出場機会が増加。北中米W杯出場権獲得を決めた2025年3月のバーレーン戦(埼玉)では彼もスタメンに名を連ねることになった。

 さらに、2025年夏になると、今度は町田も左膝前十字じん帯断裂で長期離脱。板倉、冨安も怪我で代表活動不参加が増えた。そのタイミングで渡辺剛(フェイエノールト)が一気に台頭し、鈴木淳之介(コペンハーゲン)も急成長。谷口が復活したことからその3人のセットがファーストチョイスになりつつあった。

 実際、2025年10月のブラジル戦(東京・味スタ)ではこの3枚で歴史的金星を獲得。2026年3月のイングランド戦(ロンドン)では復帰した伊藤が加わり、谷口・渡辺と組む形でサッカーの母国を撃破した。森保一監督も瀬古については「不安定さが垣間見える分、使いどころが難しい」と考えていたのではないか。

 しかしながら、ここへきて彼が主軸の座を射止めたのは間違いない。怪我がちで今回参加していない冨安、谷口、町田らより「計算できる存在」と位置づけられているはずだ。

 今後、この3人が戻ってきたとしても、瀬古は優先して使われるようになるのではないか。「3バックの左右に中央、ボランチもできる186センチの大型プレーヤーを起用しないのはもったいない」と今は指揮官やコーチングスタッフも認めているだろう。

 改めて考えてみると、谷口はすでに35歳。板倉も来年1月には30歳になる。97年の町田が現在29歳、冨安が間もなく28歳、伊藤と今回途中離脱した安藤智哉(ザンクトパウリ)が27歳と、優れたDFが東京五輪世代に偏っている。彼らは4年後には30代に突入する。怪我のリスクも高まるだけに、彼らだけに依存しているわけにはいかないのだ。

 もちろん今シリーズにも23歳の鈴木淳之介、追加招集された25歳の望月へンリー海輝(町田)らがいるが、中堅世代より下が少ないのは確か。だからこそ、瀬古自身がコメントしているように、ここから4年間は自分自身が中心的な存在となって、若い世代の底上げを牽引していくべきだ。

 パリ五輪世代以下のDFに目を向けると、高井幸大(シント=トロイデン)、チェイス・アンリ(ザルツブルク)、市原吏音(AZ)らがいるが、それぞれに苦境に直面している。彼らが壁を乗り越えてくれないと、代表守備陣の高齢化はどんどん進むだろう。アジアカップまでは現状維持だろうが、先々を見据えると、DF陣の人材不足は間違いなく懸念材料だ。だからこそ、26歳の瀬古の進化は頼もしい。彼の姿に刺激を受け、台頭する若手が増えてくれることを期待したい。

 10月5日のニュージーランド戦は今回の活動のラスト。そこでも瀬古が板倉、伊藤らとともにピッチに立つのではないか。4連戦はさすがにきついだろうが、乗りに乗っている今の彼ならば、疲れも感じないだろう。上昇気流に乗っているこのチャンスを逃す手はない。さらに自信を深め、フランスに戻ってほしいところだ。

(元川悦子 / Etsuko Motokawa)



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元川悦子

もとかわ・えつこ/1967年、長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに転身。サッカーの取材を始める。日本代表は97年から本格的に追い始め、練習は非公開でも通って選手のコメントを取り、アウェー戦もほぼ現地取材。ワールドカップは94年アメリカ大会から8回連続で現地へ赴いた。近年はほかのスポーツや経済界などで活躍する人物のドキュメンタリー取材も手掛ける。著書に「僕らがサッカーボーイズだった頃1~4」(カンゼン)など。

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