アギーレが日本代表に異例の要請 佐藤龍之介が2試合で離脱も…未来への英断「三者にとってベスト」

日本代表の佐藤龍之介【写真:徳原隆元】
日本代表の佐藤龍之介【写真:徳原隆元】

アギーレ監督の就任に伴いクラブから要望か

 ベネズエラ戦(9月28日)で先発した佐藤龍之介が日本代表を離脱、所属クラブのバレンシアに戻ることになった。

 今季不振のバレンシアは2回目の監督交代で、かつて日本代表を率いたハビエル・アギーレが新監督として就任した。今季からバレンシアでプレーしている佐藤は開幕当初レギュラー扱いだったが、1回目の監督交代からは出番を失っていた。代表戦でリーグが中断しているうちに新監督の下で立て直しを図ろうとしている時期だけに、佐藤をそこに参加させてほしいとバレンシアから要望があったという。

 ベネズエラ戦で45分間プレーした佐藤は才能の片鱗を見せていた。

 ボールタッチと動きに無駄がない。無駄がないので非常にスムーズで、佐藤を経由すると攻撃のテンポが上がっていた。決定的なパスを供給し、流れるような前線への飛び出しも良く、チームの基盤となっている守備面でもそつがなかった。

 シャドーのポジションには久保建英、堂安律、伊東純也、鈴木唯人、中村敬斗など競合する選手は多いが、十分ポジション争いに加われる能力の持ち主だと思う。日本代表デビューしたころの香川真司と似ているかもしれない。キレは香川の方があったが、判断とプレーの速さがよく似ていると思った。

 この45分間で手放してしまうのは惜しい。しかし、佐藤がバレンシアでポジションを掴むために重要な時期ということで離脱を了承した。長い目で見れば、今回の強化試合で活躍することよりも、バレンシアでポジションを獲得する方が、本人にとってもバレンシアにとっても、日本代表にとってもプラスになる。

 今や日本代表選手のほとんどが欧州クラブでプレーしている。今回のようなケースだけでなく、選手のコンディションやクラブ側の事情によってあえて招集しないという判断はこれからも出てくると思う。

 招集に強制力がある限り、呼べる選手は呼ぶという方針の代表チームもあり、かつての日本にもそういう時期があった。クラブ側としては負傷や疲労のリスクがあるので、重要な選手ほど代表に招集してほしくないのが本音だ。かつてイングランドでは負傷を偽装して代表からの招集を逃れているのではないか、という疑惑もあったくらいだ。

 代表としては限られた強化日数を有効に使いたい。その選手を試合に起用する予定がなくても、とりあえず招集してチームのコンセプトを理解させる、代表に慣れてもらうために招集するケースもある。

 クラブと代表は利益が相反する関係だ。それだけに協力が重要になる。所属クラブと連携して選手、クラブ、代表の三者にとってベストな選択は何かを話し合う必要があるわけだ。

 今回の佐藤についての判断は良かったと思う。日本は欧州から遠く、代表戦のたびにクラブを離れるのは獲得判断に影響すると考えられる。欧州移籍してキャリアアップすることが代表強化につながる現状からも、欧州クラブとのコミュニケーションを密にしておくのは代表チームの重要な仕事になっていくし、すでにそうなっている。

(西部謙司 / Kenji Nishibe)



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西部謙司

にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。

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