再始動する森保J「路線継続と若返り」 カギ握る“W杯落選組”…野心抱く20歳「次のW杯では主力に」

森保ジャパンが再始動した
「今回の我々が(日本サッカー)協会からいただいたミッションは(2027年)アジアカップ優勝」と日本代表の森保一監督が強調した通り、9月21日からスタートする9・10月シリーズは4か月後の大舞台につながる貴重な強化の場だ。
【PR】DAZNを半額で視聴可能な学生向け「ABEMA de DAZN 学割プラン」が新登場!
ご存じの通り、今回から9・10月シリーズが統合され、15日間で4試合を戦うという過密日程になっているが、その後は11月の10日間と大会直前しか活動期間がないことを考えると、このシリーズである程度の新チームの骨格を固めておく必要がある。
指揮官が31人中20人を2026年北中米ワールドカップ(W杯)に挑んだメンバーから選出したのも、「既存戦力を多めに入れた方がチーム成熟度を短時間で高められる」という計算があってのことに違いない。W杯メンバーの状態チェックというのは、今シリーズの最初の重要ポイントと言っていい。
その20人に目を向けると、今夏新天地に戦場を移したのは、鈴木彩艶(アストン・ヴィラ)、板倉滉(ボルシアMG)、冨安健洋(クリスタルパレス)、前田大然(イプスウィッチ)、中村敬斗(リヨン)、上田綺世(リール)、後藤啓介(フライブルク)の6人。
このうち、後藤を除く5人はいずれも新たな環境でスタメン、またはそこに近い序列を確保。上昇気流に乗りつつある中、再始動する代表に合流できる。この5人がもたらす新たな活力はチームを活性化させるだけの材料になるはず。まずは上記5人の爆発的なパフォーマンスに期待したい。後藤に関しては、まだ新天地での適応段階。ただ、今回の代表活動を飛躍のきっかけにしたいと燃えていることだろう。その闘争心をこの活動で前面に押し出してほしい。
一方、残る14人はW杯前と同じ所属先で新シーズンに挑んでいるが、試合出場状況はまちまちだ。伊東純也(ゲンク)や鎌田大地(クリスタルパレス)、田中碧(リーズ)、佐野海舟(マインツ)、鈴木唯人(フライブルク)のようにシーズンスタートからフル稼働していて、計算できるパフォーマンスを見せている面々もいる一方、伊藤洋輝(バイエルン)や久保建英(レアル・ソシエダ)、塩貝健人(ヴォルフスブルク)のように先発落ちを強いられている選手、堂安律(フランクフルト)のように移籍問題に揺れた直後でここから調子を上げなければ選手などがいる。その状態チェックは森保監督にとって1つの大きな仕事になりそうだ。
今、特に気掛かりなのが久保。2026年W杯初戦・オランダ戦で負傷してから復帰まで長期間かかり、今季開幕を迎えたが、チームではやや評価が低い様子。本人もここからじっくり上げていこうと考えているのだろうが、2030年W杯に向けて絶対的主軸にならなければいけない人材だけに、ここでの停滞は回避しなければいけない。
森保監督の下で挑んだ大舞台は2022年W杯カタール大会、2026年北中米大会にしても、2024年アジアカップ(カタール)にしても、日本を勝たせる救世主になり切れていなかった。だからこそ、2027年アジアカップでは「久保のチーム」と言われるくらいの存在感を示す必要がある。今回の4戦でその大きな一歩を踏み出せるか否か。そこは注視する必要がありそうだ。
今シリーズの2つ目のポイントとして挙げられるのが、W杯落選組の可能性の見極めだ。この枠には小久保玲央ブライアン(シントトロイデン)、安藤智哉(ザンクトパウリ)や相馬勇紀(町田)、田中聡(シャルケ)、佐野航大(PSV)、熊坂光希(柏)、佐藤龍之介(バレンシア)の7人が該当する。
特に2026年W杯前最後の活動だった3月シリーズに呼ばれていた佐野、佐藤、辞退した安藤の3人は今後の常連組に近い存在と言っていいだろう。
この中で特に輝きを増しているのが佐野航大。今夏、NECナイメヘンからPSVにステップアップし、8月30日のユトレヒト戦以降、リーグ戦全試合に先発。9月13日のスパルタ戦では豪快なミドルシュートも決めている。10日のUEFAチャンピオンズリーグ・シャフタール・ドネツク戦でもフル出場。最高峰基準の中で躍動している。
主戦場はボランチだが、代表ではシャドーやインサイドハーフ、トップ下もこなせるマルチ型で使い勝手もいい。森保監督が今、一番使いたい選手の1人なのは間違いない。兄・海舟とともにボランチの軸を担っていく可能性もあるだけに、その動向が気になる。
佐藤もグングン伸びている若手の1人。今夏、赴いたバレンシアではまだゴールこそないが、海外初挑戦ながら異国の環境に迅速に適応。ポテンシャルの高さを示しつつある。ただ、今季はバレンシア自体が絶不調。9月13日にカルロス・コルベラン監督が解任され、セカンドチームのオスカル・サンチェス監督が暫定的に指揮を執っているが、今後の体制次第では扱いも変わる可能性がある。
ただ、今回の代表活動で鮮烈なパフォーマンスを見せれば、新体制移行後も評価が急激に落ちることはないはず。今、何をすべきかを賢くアグレッシブな彼はよく分かっているだろう。「次のW杯では主力として活躍する」という強い野心を抱いている20歳の若武者のブレイクが待たれるところだ。
そして、最後のチェックポイントが初招集4人の動向。JFLから代表まで上り詰めたことで話題になっている谷村海那(横浜)、右サイドを主戦場としながらもマルチな守備力を誇る中野就斗(広島)、満を持して代表に抜擢された松木玖生(サウサンプトン)、ロサンゼルス五輪世代のドリブラー・齋藤俊輔(ウェルテルロー)を森保監督がどのように起用するかは注目すべき点に他ならない。
まず谷村だが、小川航基(町田)に代わって呼ばれたということで、上田と後藤との競争になりそうだ。もちろん上田がエースというのは誰もが認めるところ。谷村がそれに続く存在になれるかどうかというのは1つの見どころだ。
森保監督は「Jリーグで結果を出している」と選出理由を説明したが、それだけで世界の相手と互角に戦えるということにはならない。谷村が難しければ、再び小川が復帰するのか、後藤やU-21日本代表のウワディケ・ウチェブライアン世雄(オールボー)のような下の世代の人材が台頭することになるのだろうが、谷村にとって千載一遇のチャンスなのは事実。この機会を逃す手はない。
松木と齋藤というフレッシュな2人もどこまでやれるかが大いに気になる。特に松木は青森山田高からFC東京入りした頃は「2026年W杯の有力候補」と見られていたが、ここまで来るのに長い時間を要することになった。それでも、もともとタフさとアグレッシブさ、強靭なメンタリティを備えた人材で、リーダー候補でもあるため、指揮官の期待値も高そうだ。
一方、個の打開力に秀でたサイドアタッカー・齋藤も伊東や三笘薫(ブライトン)のようなプレーヤーになれそうな資質を持っている。彼ら2人がイキイキとしたプレーを見せてくれれば、さらなる競争が生まれ、チームも活性化するはずだ。
森保監督が目指す「路線継続」と「若返り」がこの15日間でどこまで進むのか。3つの注目点を踏まえながら、展開を見極めていきたいものである。
(元川悦子 / Etsuko Motokawa)

元川悦子
もとかわ・えつこ/1967年、長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに転身。サッカーの取材を始める。日本代表は97年から本格的に追い始め、練習は非公開でも通って選手のコメントを取り、アウェー戦もほぼ現地取材。ワールドカップは94年アメリカ大会から8回連続で現地へ赴いた。近年はほかのスポーツや経済界などで活躍する人物のドキュメンタリー取材も手掛ける。著書に「僕らがサッカーボーイズだった頃1~4」(カンゼン)など。
























