21歳日本人が実感した「若くないな」 突きつけられた欧州との違い…境界線は「何センチ、何秒っていう世界」

今年1月に大宮からAZに移籍した市原吏音
オランダに渡って8か月、21歳の市原吏音が痛感し続けているのは「個」の絶対的な強さだ。日本で培ってきた組織的な守備の概念すら通用しない場面が少なくないという。広い範囲を一人でカバーする感覚、身体能力の差を埋めるためのポジショニングと予測、そして紙一重の駆け引き。CBとして向き合ってきた欧州の現実を、市原はどう受け止めているのか。日本代表に求められる基準への考えも含め、包み隠さず言葉にした。(取材・文=林遼平/全4回の2回目)
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「こっちに来たら本当に若くないなって。いろいろな人が口を揃えて言いますけど、本当にその通りだなと思いました」
日本にいた頃は自分を「ちょっと若い」と思っていたという市原は、オランダに渡ってその感覚を覆された。北中米ワールドカップで大きなインパクトを残したスペイン代表のラミン・ヤマルやパウ・クバルシ(ともに19歳)のように、世界のどこを見渡しても下の世代が次々と台頭してくる時代だ。それはエール・ディヴィジも例外ではない。うかうかしていられないという焦りと、早く上に行きたいという渇望が同居している。
オランダのエール・ディヴィジでの戦いに身を置くようになった中、市原がまず突きつけられたのは“個”の絶対的な強さだった。その一方で、日本の組織的な守備の質は世界のどこに出しても引けを取らないとも感じているという。
「やはり個で圧倒的なスピードだったり、強さだったり、高さだったりというのを各々が持っているなと。日本よりも個がしっかり強いイメージです。ただ、試合を見ていればわかるんですけど、日本は代表戦とかも、全体で守る、全体で攻めるというのがすごく上手い。そこの組織力はどこの国にも負けないといろいろな方が話していると思うんですけど、それは自分も感じています。チャレンジ&カバーの概念がこっちにはあまりないんです。でも、それは逆に言ったら個で負けないということ。11対11よりもまず1対1で負けないというのが強く押し出されているのが、こっちのリーグなのかなと思います」
個で劣るのかと問われれば、市原は即座に否定する。日本人選手がこの舞台で通用しないとは思っていない。ただ、明らかに異なる身体能力の差をどう埋めるかが一つの鍵になる。そこを乗り越えることができれば、その先にはこれまで日本サッカーが追い求めてきた景色が広がっているという確信がある。
「逆に日本人がその“個”で勝てるようになったら、個でも勝てるし、組織力でも勝てるなという。そうしたら、もうどこにも負けないなと思うんです。そこは自分もそうですし、日本が強くなっていく上で避けられない道なのかなと。そういった個の成長が必要だと思います」
その差を埋める具体的な方法論を、市原は自分なりに言語化している。
「まずはシンプルに強くなる、速くなるという自分の体の改善をしなければいけないと思います。あとは頭をしっかり使ったポジショニングだったり、予測というので埋めていく。そして、1対1と言いましたけど、やはり11人のスポーツなのでチームメイトとコミュニケーションを取って、1対1で無理なら2対1で勝っていくなど、方法はいろいろあるかなと思っています」
「より広い範囲を一人で守らなければいけなくなった感覚はあります」と言うように、守備範囲そのものの感覚もオランダで一変した。ピッチコンディションや戦術の整備という点では日本の方が優れている部分も多いと認めつつ、身体能力や理不尽さで押し切ってくるサッカーにいかに対応していくかが求められる。ビルドアップの局面でも、味方が簡単に受けに来てくれるとは限らない。
「よく『オレに出せ、オレに出せ』と言ってくる選手がいるんですけど、調子が悪そうな時はめっきり受けに来なかったりする。これが日本だとやはりチームのためにという気持ちがあるから、そのために走ったり受けたりという献身性が出てくるんですけど、こっちの選手は我が強いので、めちゃくちゃ受けに来る時と全く受けに来ない時があって、そこの感覚は違いとしてあります」
難しい局面をCBであっても自分で解決しなければいけない。そんな経験の1つ1つがプレーの幅を広げている。さらに市原の言葉が熱を帯びたのが、CBという仕事の繊細さについてだった。ポジショニング一つをとっても、離れ過ぎればスピードで置き去りにされ、近づき過ぎれば入れ替わられる。その境界線は、レベルが上がるほど紙一重になっていく。
「ポジショニング1つを取ったりしても、離れ過ぎたらスピードで行かれてしまうし、かといってくっつきすぎたらくるっと入れ替わってしまう。それは本当、何センチ、何秒っていう世界だと思うし、それこそW杯のブラジル戦の最後も、あとちょっとって選手の話も聞きましたけど、それをやっぱり守備の選手も攻撃の選手も突き詰めなければならない。(キリアン)エンバペや(アーリング・ブラウト)ハーランドみたいに理不尽に点を取ってくる選手もいますよね。そういう選手を抑えられるようにならないとW杯で優勝したりするチームにはなれないと思う。そこは本当、僕はまだまだそのレベルではないですけど、そこに1日でも早く行けるようにやっていかなければいけないなと思いました」
日本代表のCBに必要な基準についても、市原は自分なりの答えを持っている。
「海外でやっているというタフさと、やはりポジション柄もそうですけど、安定感、安心感が必要だと思います。一人で何でもできてしまうような、守れて、ボールもさばけて、ピンチの時に体を張れる。それが失点しないことにつながると思います。本当に失点に直結するポジションでもあるので」
理不尽な“個”の壁と向き合いながら、市原は自分自身のCB像を、日々アップデートし続けている。(第3回に続く)
(林 遼平 / Ryohei Hayashi)

林 遼平
はやし・りょうへい/1987年、埼玉県生まれ。東日本大震災を機に「あとで後悔するならやりたいことはやっておこう」と、憧れだったロンドンへ語学留学。2012年のロンドン五輪を現地で観戦したことで、よりスポーツの奥深さにハマることになった。帰国後、サッカー専門新聞『EL GOLAZO』の川崎フロンターレ、湘南ベルマーレ、東京ヴェルディ担当を歴任。現在はフリーランスとして『Number Web』や『GOAL』などに寄稿している。
























