強豪助っ人の“異彩な飛び道具” 7試合6Gに関与…エースも太鼓判「使わない手はない」

神戸のジエゴ【写真:柳瀬心祐】
神戸のジエゴ【写真:柳瀬心祐】

DFジエゴがブラジル時代から「使っていた」武器

 J1リーグ戦で破竹の4連勝をマークし、首位のFC町田ゼルビアに勝ち点1ポイント差の2位に肉迫しているヴィッセル神戸で、新たな“飛び道具”が脅威と化している。百年構想リーグ前に柏レイソルから加入したジエゴが左右の両サイドから投じるロングスローが、PK獲得を含めて7試合で6ゴールに関与。神戸の総得点11の、実に半分以上に関わっている、ブラジル出身30歳左サイドバックの現在地を追った。(取材・文=藤江直人)

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 この男の“強肩”を抜きにして、ヴィッセル神戸の勝利は成り立たないと言っていい。7試合で挙げた11ゴールの半分以上、実に6ゴールにロングスローで関与しているジエゴが対戦相手の脅威になっている。

 各チームがロングスロワーを擁しているなかで、それでもジエゴの低く、そしてスピードを伴った弾道は異彩を放つ。飛距離も併せ持つジエゴに味方はポジションを取りやすく、対照的に対戦相手は対処しづらい。

 柏レイソルから今年1月に完全移籍で加入。優勝したJ1百年構想リーグを経て存在感を増し、秋春制の下で開幕した今シーズンは左サイドバックとしてJ1リーグ戦の7試合すべてで先発を果たしてきた。

「どのような形であれ、チームの勝利に貢献できている状況をとてもうれしく思っている」

 ちょっぴり謙遜しながら現状を振り返ったジエゴは、さらに自身のロングスローにこう言及した。

「自分のスローインがチームの武器の1つに、強みの1つになってきているのもうれしい。素晴らしい選手たちがそろっている強いチームに、新しい武器を加えられた。自分としてはそのようにとらえている」

 ホームのノエビアスタジアム神戸に昨シーズンの覇者で、百年構想リーグでは東西の王者として頂点をかけて戦った鹿島アントラーズを迎えた11日のJ1リーグ第7節。際立ったのはジエゴのロングスローだった。

 両チームともに無得点で迎えた後半4分。ジエゴが左サイドから、この試合で数えて4本目のロングスローを放つ。ボールはニアへ飛び込んだDF山川哲史の頭にわずかに合わず、後方にいた鈴木優磨に当たった。

「しっかりと助走を取って、ヘディングで後ろにそらしたかった。そこで空振ってしまったけど、後ろにいた相手選手に当たって自分の前に転がってきたので、ここはとにかく足を振り抜こうと思いました」

 こう語った山川が右足で放った強烈なシュートを、鹿島の守護神・早川友基がセーブしたかに映った直後。VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)が介入し、OFR(オン・フィールド・レビュー)の末に鹿島のDF小川諒也のハンドが確認され、大迫勇也がしっかりと決めて先制した。

 同点とされた直後の同32分には、左サイドから6本目のロングスローをジエゴが投げ入れる。味方のマテウス・トゥーレルを狙ったボールは、マークしていた鹿島のDF植田直通に一度は弾き返された。

 しかし、神戸の攻撃はまだ終わらない。ボールを拾った酒井高徳からパスを受けたジエゴは、トゥーレルとのワンツーで左サイドをえぐり、利き足の左足から放ったクロスで山川の勝ち越しゴールをアシストした。

 攻め残っていた山川の姿が「見えていた」と振り返ったジエゴは、さらにこんな言葉を紡いでいる。

「あの場面も僕のスローインからだったけど、同じように攻め残りしていたトゥーレルがいいポジションを取って待っていた。選択肢が広がったなかでいいコンビネーションが生まれ、ペナルティーエリア内でも味方の選手たちのポジション取りがよかったので、スムーズな流れのなかからいいプレーが生まれたと思っている」

 母国ブラジルでモリーニョス、ウニオン・サンジョアン、メトロポリターノ、ジョインヴィレでプレーしていたころから、ロングスローに関しては「もう(試合で)使っていた」とジエゴは屈託なく笑う。

 実は子供の頃から自身の身体に宿る“強肩”に気づき、遠くへ投げるたびに快感を覚えてきた。

「遺伝も含めて、人間はそれぞれ生まれつきの特徴をもって生まれてくるものだからね」

 両親への感謝の思いも忘れないジエゴは21歳だった2017シーズンに来日。松本山雅を皮切りに水戸ホーリーホック、徳島ヴォルティス、サガン鳥栖、柏、そして神戸と日本でプレーし続けてまもなく31歳になる。

 その間における自身と、武器の1つに据えるロングスローとの向き合い方をこう振り返る。

「監督の要求にもよるし、あとは中でもらう選手の要求も違う。もうちょっと遅いボールがいいとか、フワッとしたボールがいいといった感じで選手それぞれに好みがあるので、それに合わせて使い分けています」

 そのなかで神戸を率いるドイツ出身のミヒャエル・スキッベ監督は、サンフレッチェ広島を指揮していた昨シーズンのYBCルヴァンカップ(現ヤマザキビスケット・ルヴァンカップ)決勝で、中野就斗をスロワーに据えてロングスローを9度も駆使。そのうちの2つを前半の2ゴールに結びつけて最終的に3-1で大会を制覇した。

 神戸監督として百年構想リーグを制した過程で、時間の経過とともにチームにフィットし、存在感を増してきたジエゴを重用。さらにオフの間に低く、速い弾道に磨きをかけたジエゴが完全に武器として定着した。

「練習の成果ですね。僕たちはそのために練習しているので、試合でもそれを実践できている。加えて右手が左手よりも力があるから、ナチュラルに回転する。たまに回転しながら飛んでいくのはそのためだと思う」

 言われてみればジエゴの低弾道スローには回転がかかった状態で、軌道がやや左にそれていくケースも多い。それも含めて、エースの大迫は「相手も処理しづらいと思う」とジエゴへ頼もしげな視線を送る。

「単純にあれだけ飛ばせるロングスロワーがいて、(ペナルティーエリアの)中には競り合いに強い選手がいっぱいいるなかで使わない手はないですよね。あれで相手を押し込めますし、相手も簡単に外に出しちゃダメ、みたいな感じになっている。そこはいい意味でプレッシャーをかけられているのかなと思うので」

 こう語った大迫自身もアビスパ福岡との開幕戦で、左サイドからジエゴが放ったロングスローをトゥーレルがそらしたところへ以心伝心で飛び込み、ワンタッチで先制ゴールをゲット。神戸を勝利に導いている。

 鹿島をリーグ戦3連敗に沈め、神戸を4連勝に導いた山川も「相手にすれば嫌でしょうね」とこう続いた。

「スキッベ監督の下でセットプレーにかなり力を入れてきたなかで、割合で言えば間違いなく一番の得点源になっている。そこの強みをどんどん出しつつ、もっと押し込んでからクロスも得点につなげる、といった攻撃をもっと突き詰められたら、さらにロングスローのチャンスも増えてくる。そうすればもっと勝率も上がってくる」

 一方で気になる件もある。昨シーズンの広島で中野は左肩を痛め、一時的にロングスローを封印している。以前からマッサージやストレッチを含めて、両肩のケアを怠らなかったにもかかわらず痛めてしまった。

 神戸で必要不可欠になったジエゴの両肩はどうなのか。何らかのケアをしているのか。

「今のところはまだ必要としてない。(両肩は)大丈夫です、はい」

 鹿島戦後に笑顔とともに返ってきた言葉から自信と充実感だけでなく、頑丈な身体に生んでくれた両親への感謝の思いも伝わってくる。リーグ戦で首位に立つFC町田ゼルビアに勝ち点1ポイント差の2位と肉迫し、優勝した2024シーズン以来のタイトルを目指す神戸の勝利のために、ジエゴは両足だけでなく両腕も振り続ける。

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藤江直人

ふじえ・なおと/1964年、東京都渋谷区生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後に産経新聞社に入社。サンケイスポーツでJリーグ発足前後のサッカー、バルセロナ及びアトランタ両夏季五輪特派員、米ニューヨーク駐在員、角川書店と共同編集で出版されたスポーツ雑誌「Sports Yeah!」編集部勤務などを経て07年からフリーに転身。サッカーを中心に幅広くスポーツの取材を行っている。サッカーのワールドカップは22年のカタール大会を含めて4大会を取材した。

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