高卒から“成り上がり”で五大リーグへ「あとはつかむだけ」 7年で得た自信…26歳が見据える未来

ル・アーヴルに移籍した水多海斗【写真:ZUMA Press/アフロ】
ル・アーヴルに移籍した水多海斗【写真:ZUMA Press/アフロ】

ル・アーヴルへ加入したMF水多海斗

 2026年ワールドカップ(W杯)では、日本代表が世界を相手に白熱した試合を見せ、多くの選手がその存在感を示した。その戦いを見つめながら、今夏フランス1部ル・アーヴルへ移籍を果たした26歳の水多海斗もまた、自分自身の未来を重ねていた。(取材・文=中野吉之伴/全3回の2回目)

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 高校卒業後にドイツへ渡り、7年間かけてたどり着いた五大リーグ。その先に見据えるのは、日本代表、そして2030年ワールドカップだ。

「W杯は自分たちの世代の選手も多く出場していましたし、知っている選手もたくさんいました。もちろん応援していましたし、できるだけ上まで勝ち進んでほしいという思いで見ていました」

 同世代の選手たちが世界の舞台で躍動する姿は、大きな刺激になる。そして海外でプレーを続ける中で、日本サッカーへの評価が年々高まっていることも実感しているという。

「日本代表について周囲から特別な話をされることはあまりありませんが、日本はいいチームだという評価はよく聞きます。フランスへ来てからは、まだフランス語がほとんど分からないので現地の反応までは分かりませんが、ドイツでは日本人選手がブンデスリーガ1部、2部で数多くプレーしていますし、その影響もあって、日本人選手への評価は年々高くなっていると感じていますね」

 ブンデスリーガをはじめヨーロッパ各国で日本人選手が結果を残し、そのイメージは確実にポジティブに変わってきた。水多自身も、その流れの中で評価を勝ち取り、リーグ・アンへの扉を開いた一人だ。

 だからこそ、日本代表への思いも以前とは少し変わってきたという。

「W杯出場は、ずっと夢というより目標として考えてきました。そして五大リーグまで来ることができた今は、『あとはここで活躍してチャンスをつかむだけ』というところまで来たと思っています。目標との距離は、これまでより確実に近づきました」

「夢」という言葉ではなく、「目標」を使った水多。その表現には、自分が歩んできたキャリアへの自信と、これから挑むべき課題が明確に見えているからこその実感が込められている。

「多くの人に認めてもらえるシーズンに」

 もちろん、五大リーグへ来たからといって代表入りが約束されるわけではない。そのことは水多自身が誰よりもよくわかっている。まず目の前の環境で自分の価値を証明しなければならない。

「まだリーグ戦は始まっていませんが、自分の立ち位置は以前より間違いなく良くなっていますし、見てもらえる機会も増えます。だからこそ、毎週少しでも多く試合に出場し、自分の良さを発揮して、もっと多くの人に認めてもらえるようなシーズンにしたいと思っています」

 そのためには、リーグ・アンという新しい環境への適応も欠かせない。実際にフランスでプレーを始めて感じたのは、ドイツとは少し異なるサッカー文化だった。水多にしても、フィジカル要素の強さではとてもハードなドイツ3部でエースとして活躍し、結果を出してきた実績がある。だが、フランスリーグのそれはまた別のレベルにあると感じている。

「フランスリーグについては、正直これまであまり見る機会はありませんでした。知っている範囲で言えば、戦術以上に個の能力やフィジカルが求められるリーグという印象を持っていました。実際に来てみても、その印象は変わっていません。これまでドイツで培ってきたフィジカルの強さは必ず生きると思います。ただ、リーグ・アンは本当に身体能力の高い選手が多く、チームにも黒人選手が数多くいます。技術だけではなく、球際の強さやスピード、身体の強さが非常に高いレベルにあると感じています。毎日練習していても、『そこまで足が届くのか』と驚く場面がありますし、身体を入れられると簡単にはボールを奪えません」

 だからといって、臆しているわけではない。むしろ、自分の武器を発揮できるという手応えも感じている。

「まだフランス1部のクラブとは対戦していませんが、フランス2部と対戦した感覚では、もちろんレベルは高いものの、自分の持ち味は十分に通用すると感じています。これからさらに強い相手との練習試合もあります。その中でどれだけやれるかが大事になってくると思っています」

 水多が武器として挙げるのは、技術の高さとその使い方。

「自分の強みとして出せる部分は、やはり技術。チーム全体としてはフィジカルに優れた選手が多い印象なので、その中で判断よく技術的な部分をしっかり見せることができれば、他の選手との違いを表現できると思っています」

 フィジカルで劣るから技術だけで勝負をするのではない。高いフィジカルを備えた選手たちの中で負けずに戦い、そこに自分ならではの技術や判断力を発揮する。それはこれまでに取り組んできたことと変わらない。

「まずはル・アーヴルでしっかり試合に出ること。それが今、一番大きな目標です。そして、その積み重ねが日本代表につながれば最高ですね。もちろん簡単ではありません。でも、ここまで来られたのも、『無理だ』と思わずに挑戦し続けてきたからです。だからこれからも、自分の可能性を信じてチャレンジし続けたいと思っています」

 五大リーグという新たな舞台で結果を残し、日本代表へ。水多海斗は今、その目標を現実へと変えるためのシーズンに挑もうとしている。

(中野吉之伴 / Kichinosuke Nakano)



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中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)取得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなクラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国で精力的に取材。著書に『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

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