鹿島の新助っ人、張り巡らせる「結界」 王者で放つ存在感…同僚も衝撃「何をやらせてもすごい」

清水から鹿島に活躍の場を移したマテウス・ブエノ
秋春制へと移行して8月7日に開幕した2026-27シーズンでJ1連覇を目指す王者・鹿島アントラーズの新戦力、MFマテウス・ブエノが大きな存在感を放っている。チームメイトのDF関川郁万は、今夏に清水エスパルスから完全移籍で加入したブラジル出身の28歳が漂わせる雰囲気を「ボールを突っつけそうで飛び込めない」と表現する。バリアや防御壁を意味する「結界」を、自身の周囲に張り巡らせるボランチのすごさを追った。(取材・文=藤江直人)
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ピッチ上で同じ時間を共有してみて、異次元でプレーしている選手だと初めてわかった。今夏に清水エスパルスから完全移籍で加入した新戦力、マテウス・ブエノの印象を問われたDF関川郁万は「上手いですね。本当に上手い」と同じ言葉を繰り返した上で、自身が知る技巧派ボランチの名前を挙げてこう続けた。
「(柴崎)岳くんや(ディエゴ・)ピトゥカとはまたちょっと違う上手さがある、という印象ですね」
28歳になったばかりのブエノは2025年1月に、母国ブラジルのグアラニから清水へ加入した。同年5月に左膝複合靱帯損傷で残りのシーズンを全休した関川は、清水と対戦する機会を得られなかった。秋春制への移行期となる今年前半に開催された百年構想リーグでは、鹿島と清水はEASTとWESTで別グループだった。
2025シーズンは「98」だった背番号を特別シーズンでは「10」に変えて、群を抜く存在感を放ったブエノの加入が発表されたのは6月19日。ワールドカップ北中米大会に日本中が熱狂していた真っ只中だった。
7月に入って新体制を始動させた鹿島は、福島県のJヴィレッジでキャンプに入った。練習を重ねる過程で新シーズンでもキャプテンを務める柴崎岳、2021シーズンから3年間にわたって中盤に君臨したディエゴ・ピトゥカ(現V・ファーレン長崎)をある意味で超えるボランチだとわかった。ブエノの何がどのようにすごいのか。
「この間合いなら突っつけるんじゃないかなと思うんですけど、飛び込めないというか、そういうボールの持ち方をしているというか。常に顔を上げているので、何か(懐に)飛び込みたくても飛び込めないんですよ」
関川の説明からは宗教的な概念から転じて、漫画やゲームで敵の侵入を防ぐバリアや、あるいは特定空間を封印する防御壁を意味する「結界」の二文字が思い浮かんでくる。関川はさらにこんな言葉を紡いでいる。
「常にここ(足元)にボールがあるのでパスも出せちゃうし、足を出したら運べちゃう。そういう上手さはすごく感じます。シンプルにパスが上手いし、味方を使うのも上手い。何をやらしてもすごいと思っています」
百年構想リーグを2位で終えた鹿島からは、新シーズンへ向けた移籍期間で横浜F・マリノスへ完全移籍したMF知念慶、水戸ホーリーホックへ期限付き移籍したMF舩橋佑と2人のボランチが新天地を求めた。
その分だけブエノにかかる期待は大きい。指揮を執る鬼木達監督の目にはどのように映っているのか。
「縦パスひとつを取ってもこのタイミングで来るのか、これくらいのロングレンジでも入ってくるのか、というのは少しずつわかり合えてきていると思う。鹿島としてやらなきゃいけない部分なども映像を見せるとか、いろいろな部分で提示しているので、そういった面ではお互いが慣れてきているかな、と」
清水の攻撃の形を大きく変えた中盤の底からの正確無比で、なおかつ意外性に富んだロングボールが、J1リーグ連覇を目指す王者の新たな武器となる。鹿島でも存在感を放つブエノへ、指揮官も大きな期待を寄せる。
「もっとできる部分もまだまだあるし、逆にテンポのところなどで刺激を受けていろいろな選手との間で共通認識が増えると、もっと彼のアイデアを引き出せるようにもなれる。いまは非常にいい状態だと思います」
ブエノ自身は元ブラジル代表の神様ジーコが礎を作った鹿島へ移籍し、MF土居聖真がモンテディオ山形へ移籍した2024年夏以降は空き番となっていた「8番」を背負う新シーズンへどのような思いを抱いているのか。
「このチームの練習は本当にきつい。練習における強度であるとか質の高さというところにまず驚かされたけど、もちろんそこに慣れてくれば、自分にとっても新しい強さに変わっていくと思っている」
笑顔でこう語るブエノは、これまでのキャリアでタイトルを獲得した経験がない。その意味でも国内外で21個ものタイトルを獲得してきた鹿島での挑戦に高鳴る胸の鼓動を、こんな言葉を介して表している。
「自分は前にボールを運び、味方に配球するプレーが大好きだし、こうした特長をできる限り生かしていきたい。攻撃面でも守備面でも修正するところは多いし、まだまだ成長できる部分はいっぱいあると思っている」
キャンプ中の対外試合などでは、ボールを奪われない「結界」を張り巡らせながら、状況によっては最終ラインに落ちてビルドアップを円滑化させる役割も担った。鹿島に生まれる新しい形に、関川も声を弾ませた。
「ボールを触るのが好きだと思うので、ある程度自由にさせてあげながら、という形は心がけていきたい」
キャンプ終盤に右腓骨を骨折したボランチの樋口雄太が、無念の戦線離脱を余儀なくされた。その存在感と期待がますます大きくなったブエノ。身長178cm・体重79kgの身体に仕込ませている魔法を次々と解き放っていく。
(藤江直人 / Naoto Fujie)

藤江直人
ふじえ・なおと/1964年、東京都渋谷区生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後に産経新聞社に入社。サンケイスポーツでJリーグ発足前後のサッカー、バルセロナ及びアトランタ両夏季五輪特派員、米ニューヨーク駐在員、角川書店と共同編集で出版されたスポーツ雑誌「Sports Yeah!」編集部勤務などを経て07年からフリーに転身。サッカーを中心に幅広くスポーツの取材を行っている。サッカーのワールドカップは22年のカタール大会を含めて4大会を取材した。






















