15年ぶり決勝の174cm守護神「きつい時にこそ僕は楽しさを」 夢は「分析官」…チャレンジに「ワクワク」

静岡学園の田邉匠真【写真:安藤隆人】
静岡学園の田邉匠真【写真:安藤隆人】

静岡学園GK田邉匠真「僕は小さいからこそ、大きいGKと違う武器で勝負しないといけない」

 7月25日から福島県で開催されているインターハイ。全国の予選を勝ち抜いた51校が一発勝負のトーナメントでしのぎを削っている。今回はこの大会で輝いた選手をピックアップしていきたい。インターハイ準決勝、プレミアリーグWESTに所属する前回準優勝・大津高の前に威風堂々と立ちはだかったのは、静岡学園の守護神・田邉匠真だった。

【PR】DAZNを半額で視聴可能な学生向け「ABEMA de DAZN 学割プラン」が新登場!

「僕の中で一番大事にしているのは、チームが前から行くスタイルなので、僕もアグレッシブにゴールを守ること。裏のスペースをカバーしたり、シュートストップもコースを限定して前に出てセーブしたり、相手との距離を詰めて守ることを意識しています」

 この試合、静岡学園は積極的に守備をはめ込もうとするが、相手のボール回しにうまくプレスがかからず、逆に前に出た背後を突かれてしまった。その中で田邉は高い集中力を持って背後への飛び出しをケアし、かつボックス内では素早い前へのステップで驚異的なセーブを何度も披露した。

 前半10分、左サイドを破ったMF坂口凌空の折り返しを受けたMF山本翼に対し、「味方DFがシュートブロックに行くのが見えて、キックフェイントをしそうだと思ったので、飛び込むコースを変えた」と口にしたように、この予測が的中。キックフェイントからシュートを打つ瞬間に前に出てコースを切った。完全に読み切った形でシュートをブロックすると、こぼれたボールからも一切目を離さなかった。

「相手の11番(FW松岡凛)の前に溢れていったのを見て、周りに味方が誰も行かなかったので、自分で行かないとそのまま打たれてしまうと思って、迷わず飛び込みました」

 瞬時に前に出て、松岡のシュートも身体を投げ出してブロック。2度の決定機をシャットアウトした。同16分にも松岡の反転シュートがDFに当たって山本の前にこぼれるが、これにも鋭い予測と出足で前に出て、山本のシュートをスーパーセーブ。

 後半に入ってもビッグセーブは止まらない。後半31分に松岡の左足の折り返しに、MF薮田尚大がフリーでシュートを放つが、これも前に出てブロック。相手の決定機を何度も防いでゴールを1度も割らせなかった。

 田邉の奮闘にエースストライカーの坂本健悟がGKの頭上から打ち下ろすヘディング弾で応え、チームは実に15年ぶり2度目のインターハイ決勝に駒を進めた。

「前に出て距離を詰めるだけでなく、止めたらすぐ起きる。僕は小さいからこそ、大きいGKと違う武器で勝負しないといけないと思っています。もちろん前に出過ぎると上を狙われてしまうので、相手の目線や体勢を元にした予測や距離感を詰めるタイミング、出力はずっと練習をしてきました」

 174センチとGKとしては大柄ではない分、俊敏性とパワーで勝負してきた。静岡県出身の田邉は高部JFCでGKを始め、小学5年生の時にテレビで見た第98回全国高校サッカー選手権大会決勝の静岡学園vs青森山田の一戦で、劇的な逆転勝利で優勝を飾った静岡学園に憧れ、中等部から入ることを決めた。

 静岡学園中で守護神として全国中学校サッカー大会に出場するなど活躍をして進学。「高校からはサイズがあって、もっと質の高いGKが入ってくるので、競争が厳しくなるのは覚悟の上でした。むしろ逆にどれくらい自分が刺激を受けて成長できるかワクワクしました」と、昨年までトップのベンチにも入れなかったが、折れることなくハイレベルなポジション争いの中で自分の武器を必死に磨いた。

 特に田邉が注力したのは下半身の強化だった。一瞬の出力からの鋭い前への飛び出し、シュートに対してきっちりと弾き切るパワー。チームが練習を行う谷田グラウンドには長くて急な階段があり、その階段を両手に5キロの重りを持って、両足ジャンプで何度も登った。

 こうした日々の積み重ねが今大会で成果となって発揮されている。絶対的な守護神としてチームのピンチを何度も救い、3回戦の鹿島学園戦ではPKストップで勝利に導き、前述した通り準決勝では勝利の立役者となった。

「きつい時にこそ僕は楽しさを感じるんです(笑)。レギュラー争いもそうだし、今日の苦しい試合も物凄く楽しかったです」

 田邉の将来の夢はサッカーの分析官になること。中学3年生の時から興味を持ち始め、大学ではサッカーを本格的に学んで、具体的な道に進もうとしている。

「選手権までは静岡学園のGKとして集中して最後までやり抜きたいです。その先も楽しみだし、チャレンジすることにワクワクしています」

 好奇心旺盛、チャレンジ精神旺盛。ミスを恐れることなく突き進む守護神は、明日の近畿大学附属高との決勝戦でも積極的なプレーでチームを活気づける。

(安藤隆人 / Takahito Ando)

page 1/1

安藤隆人

あんどう・たかひと/岐阜県出身。大学卒業後、5年半の銀行員生活を経て、フリーサッカージャーナリストに。育成年代を大学1年から全国各地に足を伸ばして取材活動をスタートし、これまで本田圭佑、岡崎慎司、香川真司、南野拓実、中村敬斗など、往年の日本代表の中心メンバーを中学、高校時代から密着取材。著書は『走り続ける才能達 彼らと僕のサッカー人生』(実業之日本社)、早川史哉の半生を描いた『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、カタールW杯のドキュメンタリー『ドーハの歓喜』、新刊は『ともに歩き出す サッカーと家族と新しい日常』(ともに徳間書店)。講演家としても全国を回っている。元・名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクター(2022年〜2026年4月)、現・國學院大學体育連合会蹴球部コーチ。

今、あなたにオススメ

トレンド

ランキング