インハイ”影のMVP”「黒子役こそ自分が輝く役割」 初の頂点へ…夢は選手と異なる道「挑戦してみたい」

近大附属MF金光哲平「チームの勝利につながった時こそ、楽しさを感じられる瞬間」
7月25日から福島県で開催されているインターハイ。全国の予選を勝ち抜いた51校が一発勝負のトーナメントでしのぎを削っている。今回はこの大会で輝いた選手をピックアップしていきたい。インターハイ初の決勝の舞台までたどり着いた大阪・近大附属。1回戦の国見戦から、3回戦ではプレミアリーグEASTに所属する前々回王者の昌平を撃破。準々決勝の日章学園戦まで、すべて2-1の1点差で勝ち上がってきた。準決勝では隣県・兵庫代表の滝川第二を相手に、0-0からのPK戦の末に勝利をもぎ取った。
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これまでの5試合すべてにスタメンフル出場しているボランチのMF金光(かねみつ)哲平は、快進撃を続けるチームにおいて、頭脳的かつ献身的なプレーで文字通り『影のMVP』として渋い光を放っている。
「僕の特徴は予測能力と守備の強度だと思っていますし、スタッフからもそう言われているので、黒子的な役割をすることは僕の義務であり、楽しいプレーでもあるんです」
この言葉通り、決して目立たないが、非常に効果的なプレーでチームにリズムとプレーの連続性をもたらしている。ボランチの位置で的確なポジションを取り、セカンドボールの回収やインターセプト、プレスバックを繰り出し、奪ったボールを素早くフリーの味方につなぐ。時にはワンタッチプレーで攻撃のリズムを作り出す。全体のバランスや勢いを殺さないプレーに、どれだけ周りが助けられてきたことか。
特に金光の存在感の大きさを感じるのは、ダブルボランチを組む相棒の特長に合わせてプレーを変えられることだ。今大会、チームは金光とMF岡本陽樹のコンビでスタートし、試合途中でインサイドハーフのMF山本翔大に代えてMF川西啓斗を投入すると、川西と岡本がボランチとインサイドハーフでポジションチェンジを繰り返し、攻撃のリズムを変えることが『必殺リレー』になっている。
岡本と組む時は運動量と攻撃センスのある岡本を前に出し、金光がアンカー的な役割をこなす。川西が投入されると、バランスを取りながらも、川西が守備に回った時は積極的に前へ飛び出して攻撃に絡んでいく。
「岡本はスピードもアジリティーもあるので、どんどん前に飛び込ませていった方が力を発揮できる。川西は中学校からずっと一緒にやってきて、どういうところにいてほしいかをお互いよく分かっているので、カバーしながらも、自分が出て行ってもちゃんと彼がカバーしてくれる信頼感があるので、プレーを使い分けています」
しっかりとした口調でプレー判断について語る金光は、自身のサッカー観、人生観も話してくれた。
「黒子役こそ自分が輝く役割であり、それがチームの勝利につながった時こそ、サッカーの楽しさを感じられる瞬間なんです」
この考え方は、ピッチ外でも大切な信念になっている。夢はサッカー選手ではなく、トレーナーになることだという。
「中学時代に通った接骨院の雰囲気が凄く良くて、そこで『将来は接骨院などで働くのもいいな』と思っていたんです。高校に入ってから鎖骨骨折や靭帯損傷などの怪我が多くなってプレーができない時期もあったのですが、そういう時にチームのトレーナーの方に身体の面だけでなく、精神的にも支えてもらったんです。常に親身になって話しかけてくれたり、サッカー以外の話も聞いてくれたりした。そこで『トレーナーに挑戦してみたい』と思うようになりました」
ピッチ内外で黒子役に徹することで自分の持ち味を発揮する。選手をやりながらトレーナーの動きを見て学び、選手目線に立って考える一方で、俯瞰して物事を見る。その視点がプレーにもフル活用されているからこそ、金光はより渋い光を放つことができている。
「ボランチの魅力は前の選手が輝けるように支える重要なポジションであるということ。トレーナーも選手を輝かせることができる職業。チームトレーナーである吉野順貴さんは本当に選手と自然な感じで会話をしてくれるし、チームがしんどい時などに、より選手に近い存在として接してくれて、僕らを前向きにしてくれる。僕もそういう存在になっていきたいと思っています」
まずは全国優勝という千載一遇のチャンスを、いつも通りの黒子的なプレーで掴み取り、日本一のボランチとして残りの高校サッカーに全力を尽くす。活躍次第では強豪大学からオファーが届く可能性もあり、サッカー選手を続けるという選択肢も生まれるかもしれない。
いずれにせよ、尊敬する吉野トレーナーと笑顔で高校サッカーをやり抜き、その先に生まれた夢に向かって走り出すために。金光は真夏の福島のラストゲームで、チームのために躍動を見せる。
(安藤隆人 / Takahito Ando)
安藤隆人
あんどう・たかひと/岐阜県出身。大学卒業後、5年半の銀行員生活を経て、フリーサッカージャーナリストに。育成年代を大学1年から全国各地に足を伸ばして取材活動をスタートし、これまで本田圭佑、岡崎慎司、香川真司、南野拓実、中村敬斗など、往年の日本代表の中心メンバーを中学、高校時代から密着取材。著書は『走り続ける才能達 彼らと僕のサッカー人生』(実業之日本社)、早川史哉の半生を描いた『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、カタールW杯のドキュメンタリー『ドーハの歓喜』、新刊は『ともに歩き出す サッカーと家族と新しい日常』(ともに徳間書店)。講演家としても全国を回っている。元・名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクター(2022年〜2026年4月)、現・國學院大學体育連合会蹴球部コーチ。




















