セレクションで不合格、ユースに上がれず「後悔させたい」 反骨心で静岡へ…日本一まであと2勝「証明を」

静岡学園高の林奏汰【写真:安藤隆人】
静岡学園高の林奏汰【写真:安藤隆人】

静岡学園3年DF林奏汰「パスカットが得意」

 7月25日から福島県で開催されているインターハイ。全国の予選を勝ち抜いた51校が一発勝負のトーナメントでしのぎを削っている。今回はこの大会で輝いた選手をピックアップしていきたい。

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 5大会ぶりのベスト4進出を果たした静岡学園。CB、ボランチとしてチームの守備の中核を担う181cmのDF林奏汰は、今大会で一気に評価を高めている選手の1人だろう。

 ボランチではセカンドボールを回収し、ボールを受けてからのターン、周囲へのリズミカルな配球、さらにはワンツーなどからアタッキングサードへ飛び込んでいく。CBではラインコントロールをしながらビルドアップの起点となり、時には自らドライブしてボランチを追い越していくプレーを何度も見せる。

 どちらのポジションでも前への推進力と技術、インテリジェンスを発揮し、攻撃にダイナミズムを生み出していく選手だ。初戦から3回戦まではCBとして、準々決勝の旭川実業戦ではボランチとしてプレー。主軸3人を負傷で欠くチームにとって、間違いなく林の存在はベスト4進出の大きな要因の1つとなっている。

「予測をしてパスカットしたり、受けてから剥がしたりするのが得意なので、どのポジションでもそれを出せるようにイメージしています」

 淡々と自分の役割を口にするが、ここに至るまでには2度の挫折を味わい、その悔しさを胸に自らの意思で静岡学園へやってきた背景がある。

 愛知県名古屋市出身の林は、小学生時代にシルフィードFCでプレーしながら、地元の名古屋グランパスのアカデミーに憧れを抱いていた。

 小学6年生の時に名古屋U-15のセレクションを受けるも不合格。それでもグランパスの環境でプレーしたかった林は、グランパススクールで活動する中学生年代の登録チームだったグランパスみよしFC(2026年から正式にアカデミー化され、名古屋グランパスU-15瑞穂に移行)へ進んだ。

「中学3年間でもっと力を磨いて、絶対にみよしからユースに上がってやろうと強く思っていました。ユースに入るためにはどうするかを考えながらプレーしていました」

 サイズがあり、CBとボランチの両方をこなせる選手として頭角を現していく。中学3年生になるとU-18の練習にも数回参加したが、そこで突きつけられたのは、自分が思い描いていた以上に高い基準だった。

「一つ一つの足元の技術、状況判断能力とか、現実を見せつけられて悔しかった。でも練習参加から帰ってきたら、『どうやったらあの基準に達することができるか』を考えて、日々の練習や自主トレも一生懸命やりました」

 しかし、2度目のチャレンジも実らなかった。U-18への昇格の道が絶たれると、現実を受け止めようとする冷静さと、込み上げてくる悔しさが同居した。

次の対戦相手は前回準優勝の大津高校

 だが、林はここで折れなかった。むしろ、その悔しさが反骨心に火をつけた。

「絶対に上げなかったことを後悔させたい。そう思いました。進路も県外のいろいろな高校からお話をいただいていたのですが、僕は(名古屋U-18)と同じプレミアWESTの高校に行きたかった」

 その条件の中で浮上したのが静岡学園だった。ここなら同じステージで戦える。何より、自らの武器である足元の技術や攻撃センスをさらに磨くことができる。守備面でも、テクニックとパスに秀でたアタッカーたちを日常的に相手にすることで対応力を高められると考えた。
すぐにコーチに頼み込んで静岡学園への練習参加を取り付けると、そこでアピールに成功し、オファーをつかんだ。

 だが、高校に入ってからもすべてが思い描いた通りに進んだわけではない。昨年までは思うように出番をつかめず、プレミアWESTでは3試合、計87分の出場にとどまった。念願だった名古屋U-18との対戦も、前期はベンチ外。後期はベンチ入りを果たしたものの、ピッチに立つ機会は訪れなかった。

 そして今年、静岡学園がプリンスリーグ東海に降格したことで、公式戦のピッチで名古屋U-18と対峙するという願いは叶わなくなった。

「同じステージで戦えなかったのは本当に悔しいです。でも、これはどうすることもできないので、僕らがやるべきことは1年でプレミアに戻すことと、トーナメントで日本一になること。日本一になることで自分の選択や成長を証明したいんです」

 反骨心を持ち続けてきたからこそ、悔しい経験はさらなる成長の糧になる。今、インターハイでベスト4までたどり着き、頂点まであと2勝のところまで来た。

 次なる相手は、プレミアWESTに所属する前回準優勝の大津。かつて「プレミアWESTで戦いたい」と願って静岡学園を選んだ林にとって、この相手を倒すこともまた、彼の言う『証明』の1つになる。

 ただ、林が見ているのは過去ではない。まずは目の前の相手に集中し、勝利のために自分の役割を全うする。
胸の奥に抱き続けてきた反骨心を、冷静な判断と技術、そしてインテリジェンスへと変えて――。林奏汰は、あと2つとなった頂点への戦いに挑む。

(安藤隆人 / Takahito Ando)

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安藤隆人

あんどう・たかひと/岐阜県出身。大学卒業後、5年半の銀行員生活を経て、フリーサッカージャーナリストに。育成年代を大学1年から全国各地に足を伸ばして取材活動をスタートし、これまで本田圭佑、岡崎慎司、香川真司、南野拓実、中村敬斗など、往年の日本代表の中心メンバーを中学、高校時代から密着取材。著書は『走り続ける才能達 彼らと僕のサッカー人生』(実業之日本社)、早川史哉の半生を描いた『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、カタールW杯のドキュメンタリー『ドーハの歓喜』、新刊は『ともに歩き出す サッカーと家族と新しい日常』(ともに徳間書店)。講演家としても全国を回っている。元・名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクター(2022年〜2026年4月)、現・國學院大學体育連合会蹴球部コーチ。

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