高校で無名→大学で新人賞獲得も…”落とし穴” 連鎖した悪夢「また離脱しなきゃいけないのか」

清水に内定した國學院大学3年生のMF辻友翔
関東大学サッカーリーグ3部からJ1リーグへ。J1の清水エスパルスが7月3日、國學院大学3年生のMF辻友翔が2028年1月から加入することを発表した。國學院大学体育連合会蹴球部にとってこれが初のJリーガー輩出。決してエリート街道を歩んできたわけではない辻が、どうやってプロへの扉をこじ開けたのか。國學院大時代に訪れた突然のコンバート。そこで見舞われたアクシデントについて振り返った。(取材・文=安藤隆人/全4回の3回目)
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國學院大に入学し、大学デビューを目前に控えた辻に突然告げられたサイドハーフへのコンバート。驚きもあったが、すぐに自身の可能性を見出して行った。
「サイドハーフの経験がなかったので、最初は難しさを感じました。でも、サイドハーフをやり始めてから周りから『足速いよね』と言われるようになった。正直、僕はスピードで突破するタイプではないと思っていたので、『これは新たな武器になる』と思い始めてからサイドハーフに魅力を感じるようになりました」
弛まぬ努力の結果、予測のスピードが速く、そこから相手に寄せていく一歩や動き出しが速い選手になった。その磨き上げたアジリティーがサイドにおいて突破面でも効力を発揮するようになっていく。
さらに大学に入って最大の武器として身につけたのが、「プレスバックのスピード」だった。攻撃から守備に切り替わった瞬間に誰よりも速くボールアプローチする。ボールに対する強度も守備のスキルも高いがゆえにボールを即時奪回することができ、ボランチよりも高い位置で奪えるため、カウンターの起点になり、そのままゴール前までなだれ込んでいける。
いつしか辻はサイドハーフとして「攻守において違いを生み出せる選手」に変貌を遂げていった。突破ができて、守れて、カウンターの起点にもなれて、かつフィニッシュにも関われるサイドハーフ。辻は関東3部において6ゴール1アシストの活躍で2部昇格の原動力となり、リーグの新人賞に輝いた。
「ボランチの時からプレスバックにはかなりこだわっていたんです。小学生の時からボランチをやらせてもらって、特段スピードがあるわけでもなく、フィジカルに秀でているわけではなかったので、自分のところでいかにプレスをハメ込んでいけるか、どうボールを奪えるかをずっと考えてプレーしていました。中学、高校に上がるにつれ、理想のボランチ像としてはスペインのペドリのようにボールを散らせる選手ではあったのですが、守備ができるボランチになった方が現実的に上に行けると思ったので、より意識をするようになりました。高校生になってから実際に予測がうまくハマるようになって、『これは武器になる』と思って磨いてきました。それが大学に入ってからサイドハーフでうまく活用できるようになったことも大きかったと思います」
高校時代まで無名だった選手が関東3部で強烈なインパクトを残して新人賞を獲得する。この活躍で辻はようやくJクラブのスカウトの目に留まるようになった。
2年生になって背番号10を託されると、コツコツと積み上げてきた武器を関東2部でも発揮。6月のアミノバイタルカップ(総理大臣杯関東予選)で辻も國學院大も一気に台風の目になった。
ラウンド32で早稲田大に3-2の逆転勝利を演じ、辻も同点弾をマーク。ラウンド16で筑波大に0-1で敗れたが、最後まで大学サッカー界の雄を苦しめた。初の総理大臣杯出場がかかった9・10位決定戦で駒澤大と死闘を演じるも、0-0からのPK戦での敗戦、辻自身にとっても悲願の全国大会初出場は叶わなかったが、2年生10番の名はさらに轟いた。
「前期最終戦が終わった直後に白須監督経由で、J2のクラブから興味を持ってもらっているという話を聞きました。そこで『本当にプロになれる可能性があるのかも』と思いました」
未来が一気に切り開かれていったかに見えた。だが、ここで落とし穴が待っていた。
アミノバイタルカップ後に右太もも裏の肉離れを起こし、そこからは怪我に苦しむ日々を余儀なくされた。リハビリを経て9月に復帰を果たすも、復帰1週間後に同じ箇所を肉離れ。離脱したことで、いつしかその話は立ち消えとなってしまった。
「アミノで活躍ができた手応えはありましたし、『ついにチャンスがきた』と思っていたのにまた遠ざかってしまったようで悔しかったです」
知らず知らずのうちに復帰に対する焦燥感が生まれ、それが再発につながるという悪循環に陥ってしまっていた。昨年10月30日の関東2部・第19節の産業能率大戦で途中出場で実に約5か月ぶりにリーグ復帰を果たし、翌第20節の神奈川大戦でスタメン出場を飾るが、その試合で今度は逆足の左腿の肉離れをしてしまった。
「また離脱しなきゃいけないのか…」
絶望感に襲われていた試合後、予想外の人物から声をかけられ、辻の目は再び輝きを取り戻した――。
(安藤隆人 / Takahito Ando)
安藤隆人
あんどう・たかひと/岐阜県出身。大学卒業後、5年半の銀行員生活を経て、フリーサッカージャーナリストに。育成年代を大学1年から全国各地に足を伸ばして取材活動をスタートし、これまで本田圭佑、岡崎慎司、香川真司、南野拓実、中村敬斗など、往年の日本代表の中心メンバーを中学、高校時代から密着取材。著書は『走り続ける才能達 彼らと僕のサッカー人生』(実業之日本社)、早川史哉の半生を描いた『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、カタールW杯のドキュメンタリー『ドーハの歓喜』、新刊は『ともに歩き出す サッカーと家族と新しい日常』(ともに徳間書店)。講演家としても全国を回っている。元・名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクター(2022年〜2026年4月)、現・國學院大學体育連合会蹴球部コーチ。





















