残り15分…味方から喝も「俺はゴールに執着するから」 名門同士の一戦で決めた「1本中の1本」

「驚くほど冷静で、力みなく足を振り抜けました」
7月25日から福島県で開催されているインターハイ。全国の予選を勝ち抜いた51校が一発勝負のトーナメントでしのぎを削っている。今回はこの大会で輝いた選手をピックアップしていきたい。2回戦の鹿島学園vs新潟明訓の一戦。1-1で迎えた後半33分、試合を決めたのは鹿島学園の絶対的エースストライカーFW内海心太郎の『1本中の1本』の渾身の一撃だった。
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ゴールネットが揺らされた瞬間、思わず身震いがした。1-1のスコアで、戦況もまさに一進一退。緊迫かつ白熱した展開の中で、内海は完全にゾーンに入っていた。
ゴールシーンは突然やってきた。新潟明訓のDFが自陣でボールを運ぼうとした瞬間、トラップが大きくなったところで、足を伸ばしてボールを引っ掛けたのは鹿島学園のボランチ・高橋晃葵。DFラインの後方にボールがこぼれると、そこには走り込んでいたのは内海だった。
右アウトサイドで右前方に大きめにコントロールすると、そのまま右足を一閃。強烈なシュートに対し、飛び出してきた新潟明訓GK佐藤壮太は手に当てたものの、魂のこもったボールは勢いを失うことなくゴールへ飛んでいき、左ポストを叩いてそのまま吸い込まれていった。
まさに電光石火の一撃。このゴールに身震いしたのは、あのこぼれ球に誰よりも素早く反応し、わずかツータッチで決め切ったことへの衝撃だった。これは偶発的に起こったものではない。内海の研ぎ澄まされた準備と集中力が生み出したものだったからだ。
「ずっと狙っていました。0-1で後半の半分が過ぎた時に、自分に『1本中の1本だ』と言い聞かせていたんです」
時計の針は20分を回り、残り時間は15分。静かに集中力を研ぎ澄ませていた内海に対し、CB群馬快太が大きな声を放った。
「おい!お前も声を出せよ!キャプテンだろ!?」
群馬の気持ちは十分理解できた。何がなんでも追いつきたい場面で、前線のキャプテンが静かなまま。DFリーダーの群馬にとって、勢いをつけるためにもチームを鼓舞したいという気持ちは当然だった。
だが、内海は群馬の気持ちを受け止めながらも、ゾーンに入っていた。セットプレーで群馬が前線に上がってきた時、すぐに駆け寄ってこう伝えたという。
「快太、悪い。俺はいま『1本中の1本』を決めるために集中しているから、代わりにお前が声を出して周りを鼓舞してくれ。俺はゴールに執着するから」
その鋭い目つきに群馬はすぐに理解を示し、周りの仲間とともにいつも以上に声を出して、エースが覚醒する瞬間を信じた。すると後半24分、ロングスローから投入されたばかりのMF稗田葵允が同点ゴールを叩き込み、試合は激しい攻防にもつれ込んだ。
そして、あの一瞬がやってきた――。
「目の前にボールがこぼれてきた瞬間、自然と身体が動いたんです。DF、GKの位置、ボールの行き先も手に取るように分かって、フィニッシュの時もDFの位置が遠かった上に、GKが飛び出してきていたので、切り返してからのシュート、キックフェイントからのシュート、ループシュートなども考えに浮かんだ。でも、そのまま打とうと。驚くほど冷静で、力みなく足を振り抜けました」
ゾーンに入り、周りがスローモーションのように見えていたからこそ、いくつもの選択肢が浮かび、その中から最善の方法を自然と選択した。ボールがネットを揺らした瞬間、内海は解き放たれたかのように叫びながら、応援してくれていた部員たちの前へ全力疾走していった。
「プリンスリーグ関東1部でなかなか勝てなくて、僕も怪我でフルタイムできない状態で本当に苦しかった。だからこそ、インターハイでは万全になった分、結果でチームに貢献していきたい、勝利につながるプレーをしたいと強く思っていたので、終盤に『1本中の1本』に集中できたんだと思います」
これで2試合連続ゴール。1回戦の畝傍高戦では貴重な先制弾、2回戦では値千金の決勝弾。まさにエースストライカーにふさわしい躍動を見せている。
「本当にうまくこぼれてきてくれてよかったです」
そう言って、最後に笑った。だが、何度も言うが、あれは偶然ではない。仲間と自分を信じ、万全の準備をしていたからこそ、自らの力で引き寄せた瞬間だった。
そして、そのゴールに筆者自身も引き寄せられた。内海は今年に入って何度も取材をしており、この試合では別の選手を取材しようと決めていた。だが、あのゴールを見せつけられたら、取材せずにはいられなかった。
「ここからです。僕はストライカーであり、キャプテンであることに変わりはないので、勝利のためにやり続けるだけです」
選手として、人間として――。
成長のギアをもう1つ上げた絶対的エースストライカーの目は、光り輝いていた。
安藤隆人
あんどう・たかひと/岐阜県出身。大学卒業後、5年半の銀行員生活を経て、フリーサッカージャーナリストに。育成年代を大学1年から全国各地に足を伸ばして取材活動をスタートし、これまで本田圭佑、岡崎慎司、香川真司、南野拓実、中村敬斗など、往年の日本代表の中心メンバーを中学、高校時代から密着取材。著書は『走り続ける才能達 彼らと僕のサッカー人生』(実業之日本社)、早川史哉の半生を描いた『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、カタールW杯のドキュメンタリー『ドーハの歓喜』、新刊は『ともに歩き出す サッカーと家族と新しい日常』(ともに徳間書店)。講演家としても全国を回っている。元・名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクター(2022年〜2026年4月)、現・國學院大學体育連合会蹴球部コーチ。




















