地元の仲間と離れ一人宮城へ「運命だと思いました」 全国大会で“再会”…示した「ここに来て良かった」

聖和学園3年GK木崎潤真「感慨深かった」
7月25日から福島県で開催されているインターハイ。全国の予選を勝ち抜いた51校が一発勝負のトーナメントでしのぎを削っている。
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今回はこの大会で輝いた選手をピックアップしていきたい。1回戦の聖和学園(宮城)vs豊川(愛知)の一戦、聖和学園の守護神であるGK木崎潤真は並々ならぬ決意でピッチに立っていた。敵として向き合ったのは、中学時代からよく知る多くの仲間だった―。
「僕の実家から豊川高校までは10分もかからないぐらい。本当に地元の学校なんです。そこと全国大会で対戦できるのは感慨深かったですね」
愛知県豊川市出身の木崎は、地元の強豪クラブであるAS.ラランジャ豊川U-15でプレーしていた。多くの仲間が、当時はまだ全国大会出場経験のなかった豊川への進学を決めるなか、木崎は1人、愛知を離れて宮城の聖和学園に進学した。
「山梨学院高を選手権優勝に導いた長谷川大監督が就任して、これから豊川が強くなることは知っていました。僕も声をかけてもらいましたが、聖和学園で足元の技術やGKとして成長して、いつか地元に戻りたいと思って決めました」
1、2年時は思うように出番をつかめなかった。それでも、得意とするシュートストップとビルドアップ能力に磨きをかけ続け、3年になると正GKの座を勝ち取った。
迎えたインターハイ宮城県予選。聖和学園のために戦う一方で、木崎は故郷・愛知で戦う豊川の勝ち上がりも気にかけていた。
「次々と勝っていって、決勝進出した時は凄いなと思いました」
そして、聖和学園が準々決勝で宮城工業を1-0で下した後、1時間遅れでキックオフしていた豊川の結果を確認すると、東邦を2-0で下して全国初出場を決めたというニュースが飛び込んできた。
「かなり驚きましたし、『ついに来たか』と思いました。豊川の友達とはずっと連絡を取り合ってきましたし、『絶対に全国に出る』と言っていたので、本当に達成したんだと思いました」
仲間の快挙、そして地元の高校の快挙は、木崎をさらに奮い立たせた。「豊川と全国で戦いたい」。新たな目標とともに、「ここで僕が負けたら話にならない」という意地も芽生えた。
そこから木崎は大きな存在感を放った。準決勝で東北高を2-0で下すと、東北学院高との決勝では、なかなかゴールを奪えない展開のなかで安定したセービングを披露。3試合連続でクリーンシートを達成し、PK戦では相手のキックを2本ストップ。聖和学園を2大会連続6度目のインターハイへと導いた。
「豊川の仲間が奮い立たせてくれたからこそ、決勝ではPKを2本止めて、僕らも優勝することができた」
そう感謝の気持ちを口にした木崎に、さらに驚くべき出来事が待っていた。全国大会の組み合わせが発表されると、初戦の相手は豊川だった。
「運命だと思いました。宮城まで来てサッカーをやっている意味を含めて、絶対に勝たないといけない戦いだと思いましたし、本当に楽しみにしていました」
そして7月25日。センターラインを挟んだ向こう側には、かつて同じクラブでボールを追った仲間たちが立っていた。
木崎は彼らとの全国での再会を楽しむかのように、気迫に満ちたプレーを見せた。前半は2点のリードを背に、安定したハイボール処理を披露。しかし後半、かつてのチームメイトである豊川のプロ注目MF大下蒼生が投入されると、一気に流れを奪われ、後半17分には2-2の同点に追いつかれた。
「やっぱり蒼生はうまかったし、1点目は仲のいい(MF豊田)貫太に決められてしまった。悔しかったけど、全国で戦えていること自体が嬉しかったし、『これ以上は絶対にやらせない』という気持ちで戦い抜きました」
追いついた勢いのまま攻め込んでくる豊川に対し、木崎はDFラインとともに猛攻を食い止めた。それだけではない。ビルドアップでは、相手の前線からのプレスに対して巧みな足技と正確なパスで切り抜ける。劣勢のなかでも慌てずにボールをつなぎ、聖和学園が徐々に流れを取り戻すきっかけを作り出した。
すると後半28分、FW浅倉大雅がカウンターから鮮やかなミドルシュートを叩き込み、3-2。木崎を中心とした守備陣がこの1点のリードを最後まで守り抜き、聖和学園は初戦突破を手にした。
「本当に中学の仲間が逞しく見えましたし、最高の70分間でした」
この言葉に、木崎の思いのすべてが凝縮されていた。彼にとってこの試合は、単なる全国大会の1試合ではない。地元を離れ、遠く宮城の地で自らを磨く道を選んだ。その決断に、大きな意味を持たせるための70分間でもあった。
「ここに来て良かったと思いましたし、何よりサッカーって本当に楽しいですよね。全国の上位を目指していくだけでなく、大学でもサッカーを続けて、プロになりたいとより強く思えたので、ここで慢心せずに、引き続き自分の選択を正解にするためにも努力を重ねていきたいと思っています」
試合後、同じホテルに滞在していたかつての仲間たちが出てくるのを待ち、懐かしそうに久しぶりの交流を楽しんだ。試合前も、試合中も、そして試合後も――。すべてが木崎にとって意味のある1日だった。一生忘れることのない思い出を胸に刻み、木崎は再び、自らが信じて選んだ道を歩み始めた。
(安藤隆人 / Takahito Ando)
安藤隆人
あんどう・たかひと/岐阜県出身。大学卒業後、5年半の銀行員生活を経て、フリーサッカージャーナリストに。育成年代を大学1年から全国各地に足を伸ばして取材活動をスタートし、これまで本田圭佑、岡崎慎司、香川真司、南野拓実、中村敬斗など、往年の日本代表の中心メンバーを中学、高校時代から密着取材。著書は『走り続ける才能達 彼らと僕のサッカー人生』(実業之日本社)、早川史哉の半生を描いた『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、カタールW杯のドキュメンタリー『ドーハの歓喜』、新刊は『ともに歩き出す サッカーと家族と新しい日常』(ともに徳間書店)。講演家としても全国を回っている。元・名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクター(2022年〜2026年4月)、現・國學院大學体育連合会蹴球部コーチ。




















