北中米W杯は成功or失敗? 試合増加で収入増も…見過ごせない“戦力差”と“審判の質”

北中米ワールドカップは成功だったのか…【写真:ロイター】
北中米ワールドカップは成功だったのか…【写真:ロイター】

北中米W杯を数字の面から検証

 2026年北中米ワールドカップが終わった今、「ワールドカップ」という大会が成功だったのか検証しておこう。比較の対象は2022年カタールワールドカップとする。

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 まず総入場者数は2022年が340万4252人で、2026年は681万966人だった。これは総試合数が2022年は64試合、2026年は104試合と40試合増えていることも関係している。そこで1試合の平均観客数を比べてみると、2022年が5万3191人、2026年は6万5490人と123パーセントの伸びとなった。

 もちろんこれにはスタジアムの規模が関係してくる。2022年に使用された最大のスタジアムは黄金に輝くルサイルスタジアムで、収容人数は8万8966人。だが、その他の7つのスタジアムはアル・バイト・スタジアムが6万8895人だったのをのぞくと、すべて4万5000人前後だった。

 2026年はカナダのトロントとメキシコのグアダラハラが4万3036人と4万5664人だったのをのぞくと、すべて5万人以上。アル・バイト・スタジアムを超えるスタジアムが、カンザスシティ、ロサンゼルス、ダラス、ニューヨーク/ニュージャージー(以上アメリカ)とメキシコシティ(メキシコ)の5スタジアムもあった。

 また現時点では正確な数字が出ていないものの、2026年の総収入は150億ドル(約2兆4300億円)以上と推測されている。これは2022年の75億6791万ドル(約1兆2260億円・いずれも1ドル162円換算)のほぼ倍。経済的には大成功だったと言えるだろう。

 一方で、大会そのものの質はどうだったのか。

 出場が32か国から48か国に増え、グループリーグの試合は48試合から72試合に増えた。はたしてゲームの質が担保されたのだろうか。

 サッカーの試合で4点差がつくというのは一方的な勝負だといっていいだろう。2022年、グループリーグで4点差以上が付いた試合は2試合だった。2026年、4点差以上がついたのは8試合あった。

 試合数が1.5倍に増えた以上に、大差の付く試合が4倍も増えたのだ。3点差以上の試合で調べてみると、2022年の5試合に対して、2026年は18試合、3.6倍にも増えてしまっている。これはグループリーグ内で力の差があまりにありすぎたと言えるだろう。

 またグループリーグからは3位の8チームまで決勝トーナメントに進出することができた。その決勝トーナメントに進出した8チームのうち、ベスト32で勝ち残ったのはドイツにPK戦で勝ったパラグアイだけ。また、5チームは無得点で敗れている。

 たしかに出場国数が増えたことで、カーボベルデやキュラソーなどこれまで見たことのなかった国を見ることができた。特にカーボベルデが前回王者アルゼンチンと延長まで縺れ込む大接戦を演じたことがこの大会のトピックの一つだろう。

 だが、今回の大会は質が担保できたかというと、そうではなかった。また、出場国と試合数を増やしたことで、単独開催できる国は限られ、共催を前提とした大会になってしまった。

 さらに書いておかなければいけないのは、試合数が増えたことで審判の質まで担保できなかったのではないかということだ。そして今回の大会では不思議なことが起きた。

 これまでの大会ではグループリーグの間、判定の基準が厳しくなりすぎたり緩くなりすぎたりとブレるものの、決勝トーナメントに入ってからはかなり均質化されていた。

 ところが今回はグループリーグのほうが、まだ判定基準の振れ幅が小さかったように思える。決勝トーナメントでは厳しい判定をして選手を出場停止に追い込むのを避けているのではないかと思うくらい、ダーティーなプレーに対する判定が甘かった。

 明らかにプレーと関係なくぶつかったり、手を使ったり、あるいは挑発行為を繰り返したりと、サッカーとはいいがたいプレーを審判たちは流しすぎた。荒木友輔主審のほうがよほどしっかりとした判定をするのに、なぜこういったレフェリーが起用されたのか……と思って見てしまったのは、身内贔屓とばかりは言えないはずだ。

 どんなに儲かったとしても、大会の権威が崩れてしまってはワールドカップの興奮がなくなってしまう。今回は目新しくてよかったかもしれないが、しっかりと試合内容を検証して、どうすればもっと面白い大会になるのか考えていかなければならないだろう。それをしないうちに出場国数を64か国に増やすなどという話が出てくるのは、本末転倒だ。

(森雅史 / Masafumi Mori)



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森 雅史

もり・まさふみ/佐賀県出身。週刊専門誌を皮切りにサッカーを専門分野として数多くの雑誌・書籍に携わる。ロングスパンの丁寧な取材とインタビューを得意とし、取材対象も選手やチームスタッフにとどまらず幅広くカバー。2009年に本格的に独立し、11年には朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の平壌で開催された日本代表戦を取材した。「日本蹴球合同会社」の代表を務め、「みんなのごはん」「J論プレミアム」などで連載中。

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