W杯決勝は“クライフ”vs“牧草”? 対照的な両チーム…理性的なスペインと情熱的なアルゼンチン

北中米W杯の決勝でヤマルとメッシが対戦する【写真:ロイター&徳原隆元】
北中米W杯の決勝でヤマルとメッシが対戦する【写真:ロイター&徳原隆元】

見所はヤマル対メッシ

 日本時間20日に行われる北中米ワールドカップ決勝はスペインvsアルゼンチンとなった。欧州王者と南米王者、FIFAランキングトップランカー同士、ラミン・ヤマルとリオネル・メッシの新旧スター対決と見どころしかないが、チームのあり方が対照的なのも興味深い。

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 スペインは洗練されたパスワークのチームだ。準決勝で対戦したフランスに比べると個が突出した選手は少ない。フランスは圧倒的なスピードを持つ選手が数人いたが、スペインで対抗できるタレントはヤマルだけ。しかし、サッカーは11人対11人のゲームであって1対1の集積ではない。攻守の1対1ではフランスが優位だったかもしれないが、スペインは人と人との関係性を作る上手さで優位だった。

 優れた個といっても、競争が速い、球際に強い、ドリブルで突破できるなど、1対1の能力だけではなく、関係性を作る上手さもまた個の能力である。

 スペインは育成年代から「スペインのサッカー」をするために技術、戦術が刷り込まれていて、代表選手ともなれば自動的に最適解を出せるレベル。どうプレーすべきかの正解があって、それをスムーズに実現する能力がベースとしてある。

 どうプレーすべきか、つまりプレースタイルについてはオランダからの輸入だった。ヨハン・クライフ監督がバルセロナに持ち込んだ戦術が元になっていて、その源流はクライフがプレーしたアヤックスにある。それが年月を経てスペインのスタイルとして定着した。

 11人が連動するパスワークは緻密な技術、ポジショニングが土台だが、プレーの仕方に効果があると信じる力、それが自分たちにとって正しいサッカーだと確信していることが大きい。論理的で理性的なサッカーである。

 アルゼンチンはパッションのチームだ。もちろんアルゼンチンにも戦術はあるし、合理性もある。ただ、それよりもチームの原動力になっているのが情熱だと思う。
南米では「ブラジルは砂浜のサッカー、アルゼンチンは牧草のサッカー」という言い方があるそうで、ビーチのブラジルは浮き球の扱いが上手くバランス感覚に優れる。牧草でボールが止まるアルゼンチンは競り合いに強い。言われてみればそんな感じではあり、アルゼンチンはスタジアムの芝生も深めである。

 デュエルの強さ、駆け引きの上手さがあり、キレのあるドリブルも特徴。クリエイティブは「10番」を中心に即興的に連動していく。主役、脇役それぞれのキャラが濃く、各自の役どころを情熱的に表現する。

 準決勝までの組み合わせに恵まれたわりには接戦続きだったのもアルゼンチンらしかった。洗練されたパスワークによるボール支配によって淡々とゲームを制圧していくスペインに対して、アルゼンチンは力闘型。力一杯闘って、苦戦を制していくドラマ性がいわばお約束になっている。気持ちが前面に出ていてファンも感情を乗せやすい。

 どちらも素晴らしいチームだが味わいが全く違う。冷静と情熱、どちらが頂点に立つのだろうか。

(西部謙司 / Kenji Nishibe)



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西部謙司

にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。

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