万能レフティーの“新しい武器” 全国の舞台へ秘める野心「もっと観客を沸かせられる選手に」

桐蔭学園高3年・吉本翼「努力や工夫を重ねることができたから成長できた」
7月25日から福島県のJヴィレッジなどで開催されるインターハイ。全国の予選を勝ち抜いた51校が日本一を懸けて凌ぎを削る大会に向けて、注目選手をピックアップしていきたい。
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今回は神奈川県第二代表として出場する桐蔭学園高から。精度抜群の左足のキックと、鋭い縦突破からの右足クロスという2つの武器を持った右サイドアタッカー・吉本翼。左利きのドリブラーがここにきて注目度を高めてきている。
スピードとキレ、そして両足を自在に使ったボールタッチを生かしたドリブルが特徴だ。だが、それ以上に印象的だったのは、状況に応じて使い分けるキックフォームの巧みさだった。
左利きで右サイドを主戦場とするだけに、最大の武器がカットインであることは容易に想像がつく。実際のプレーでも、右サイドから巧みにボールを運びながらハーフスペースへ侵入し、シュートまで持ち込む。しかし、彼は狙うコースによってキックを使い分けている。
「ニアを狙う時は鋭いスイングでズドンと突き刺すイメージです。ファーを狙う時は柔らかく蹴るイメージで打つといいコースに飛んでいくので、そこを狙っています」
インターハイ予選3回戦の横浜隼人戦。右サイドでボールを受けると、対峙した相手を鋭いボディーフェイントと左足アウトサイドでかわしてカットイン。力みのないフォームから左足インフロントでボールを擦り上げると、美しいインカーブのコントロールショットがゴール左サイドネットへ吸い込まれた。これが決勝点となった。
「前半にも同じような形で左足を振って、GKに止められたんですけど感触はすごく良かったんです。だから『後半もあの感覚で打とう』と思ったら、いい形で決めることができました」
武器はシュートだけではない。相手はカットインを警戒して中のコースを切ってくるが、その裏を突くようにスピードを生かして縦へ突破し、右足でクロスを上げるプレーも身につけた。
「去年から試合に出させてもらっていましたが、左足一本では潰されることも増えてきました。だから縦突破からクロスを上げることを意識して、紅白戦でも試合でもどんどん仕掛けていました。右足のキックも練習して、スピードに乗ったままでもクロスを上げられるよう磨いてきたので、それが今では自分の強みの一つになったと思います」
工夫と努力の末に身につけた新たな武器。縦突破を相手に意識させることで、得意のカットインにも一層の威力が生まれた。
「正直、今季はカットインからゴールを決められていなかったので、自信になりましたし、ここから波に乗れると思います」
その言葉通り、続く準々決勝の相洋戦では1ゴール1アシストを記録。準決勝の市立橘戦では右サイドを突破して右足で送ったクロスが相手のオウンゴールを誘発し、これが決勝点となってチームを2年連続のインターハイ出場へ導いた。
「僕の強みは強気にプレーすることです。攻撃でも守備でも全力で取り組んで、チャンスがあれば縦にも中にもどんどん仕掛ける。それを一番大事にしています」
このマインドも高校で培われたものだ。横浜FCジュニアユース時代から攻撃力には定評があった一方、守備面を課題として指摘され続け、思うように出場機会を得られずユース昇格はかなわなかった。高校進学では憧れだった静岡学園高のセレクションに挑戦したが不合格。その後、桐蔭学園からセレクション参加の声が掛かった。
「仲の良かった(水本)優心たちも桐蔭に行くと聞いていたので、合格をいただいた時に『ここで頑張ろう』と決めました。実際に入ってみると、1年生の時は3年生のレベルが本当に高くて、紅白戦でも毎日が勉強でした。八代(修)監督からも守備のことはずっと言われていましたし、高校で巻き返したいという思いが強くなりました。昨年も3年生にうまい選手が多くて、その高いレベルの中で努力や工夫を重ねることができたから成長できたと思います」
昨年のインターハイ予選準決勝でもゴールを決め、チームの全国大会出場に貢献した。しかし決勝で退場処分を受け、本大会は出場停止に。チームも2回戦で姿を消し、不完全燃焼の夏となった。
「昨年は選手権も予選で負けて出られなくて、本当に悔しい1年でした。今年は絶対に自分がピッチに立ってチームを勝たせたい。そしてもっと観客を沸かせられる選手になりたいんです。『うわっ!』という声が上がるようなプレーをどんどん見せたいです」
野心は尽きない。昨年の悔しさを晴らすべく、桐蔭学園の万能型サイドアタッカーが、福島の舞台でその存在感を示そうとしている。
(安藤隆人 / Takahito Ando)
安藤隆人
あんどう・たかひと/岐阜県出身。大学卒業後、5年半の銀行員生活を経て、フリーサッカージャーナリストに。育成年代を大学1年から全国各地に足を伸ばして取材活動をスタートし、これまで本田圭佑、岡崎慎司、香川真司、南野拓実、中村敬斗など、往年の日本代表の中心メンバーを中学、高校時代から密着取材。著書は『走り続ける才能達 彼らと僕のサッカー人生』(実業之日本社)、早川史哉の半生を描いた『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、カタールW杯のドキュメンタリー『ドーハの歓喜』、新刊は『ともに歩き出す サッカーと家族と新しい日常』(ともに徳間書店)。講演家としても全国を回っている。元・名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクター(2022年〜2026年4月)、現・國學院大學体育連合会蹴球部コーチ。




















