チーム崩壊「今更遅いやろ」 大久保嘉人が明かすW杯の内紛…直前の惨状「信じられなかった」

2014年ブラジルW杯の練習中に目撃した衝撃シーン
「史上最強」と謳われ、大きな期待を背負って臨んだ2014年ブラジルW杯で、日本代表は1勝も挙げられずにグループリーグ敗退という屈辱を味わった。「FOOTBALL ZONE」で今回の北中米ワールドカップ(W杯)の特別解説を務める大久保嘉人氏。そのメンバーの一員として、サプライズ選出でチームに合流したものの、チーム内で衝撃の光景を目の当たりにする。W杯直前の“内紛”と愕然としたチームの空気に迫った。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部/全4回の3回目)
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「ザッケローニに直接電話してくれ」という協会からの異例の打診をキッパリと断り、自らの結果だけで勝負を続けていた大久保氏。そして迎えた2014年ブラジルW杯のメンバー発表で、ついに待望のサプライズ選出を果たし、日本中が熱狂に包まれた。しかし、本番直前でチームに合流することになった当の本人の胸中は、決して手放しで喜べるようなものではなかった。
「どういうサッカーをするんだろうっていう不安がありましたね。イタリア人監督だから、めちゃくちゃロボットみたいなガチガチのサッカーをするのかなって。だから、合宿が始まってからはとにかく戦術を早く覚えなきゃいけないと感じていました」
川崎フロンターレの同僚の中村憲剛のような阿吽の呼吸でパスを出してくれる選手が代表にいるわけでもなく、ザッケローニ監督のやり方も手探り状態だった。「とりあえずゴール前にいれるように」というアバウトな指示の中で準備を進めたが、蓋を開けてみれば、ブラジルに行ってからの初戦(コートジボワール戦)は途中出場、第2戦(ギリシャ戦)、第3戦(コロンビア戦)は先発出場と、ほぼ全試合で主力としてピッチに立つことになった。
「結局スタメンで使うんやったら、もうちょっと親善試合に呼べよ! って、心底思いましたね(笑)。急に入って完璧にフィットするなんて難しいですから」
さらにブラジルでの戦いは、気候やコンディション作りの面でも過酷さを極めた。大久保氏は当時の現地の環境を「一時期、めっちゃ寒かったんですよ。でも試合の時はめちゃくちゃ暑い。なんでここ(がキャンプ地)なんだろうってみんな思ってたし、移動もめちゃくちゃ遠くて本当に疲れましたね」と振り返る。
過酷な環境下で、ピッチ上の選手たちからは明らかに動きの鈍さが伺えた。だが、Jリーグで絶好調のままブラジルへ乗り込んだ大久保氏自身は、全く別の感覚を抱いていたという。
「俺は日本で凄い調子が良かったんで、めちゃくちゃ体は軽くてキレてたんですよ。でも、やっぱり海外組だったりする人たちは、ちょっと体が重いのかなっていうのはピッチに入っても感じましたね。なんかちょっと違ったなって」
コンディションの差以上に大久保氏が強烈な違和感を覚えていたのが、チームの“空気感”だった。2010年の南アフリカW杯では、大会前の絶望的な状況から選手同士がミーティングで激しく意見をぶつけ合い、最終的に「やるしかない」と強固な一体感を生み出した。しかし、ブラジルでは全く逆の現象が起きていた。
「当時は『史上最強』って言われて、みんな勢いに乗っていた。でも、1つの方向を向いていたかというと……ちょっと南アフリカの時とは違うな、と。1人1人が思っていることがバラバラで、同じ方向を向いていなかったですね」
その“チームのバラバラ感”が決定的に露呈したのが、絶対に負けられない第2戦のギリシャ戦を控えた練習中のことだった。選手たちがザッケローニ監督の戦術に対して口々に不満や自分たちの意見をぶつけ出し、ピッチ上が不穏な空気に包まれた。そして、怒った指揮官が練習を強制的に中断させてしまうという前代未聞の事件が起きたのだ。長らく代表から離れ、本番直前で合流した大久保氏にとって、それは到底信じられない光景だった。
「練習が終わった後、俺は怒りながら他の選手に言ったんです。『お前ら、4年間何してたの? 今更そんな話するの遅いやろ! やりたいサッカーがあるなら、親善試合や練習でザックとすり合わせるのが普通だろ!』って」
大久保氏自身は直前に入ったばかりの立場であり、戦術に対して意見を言える立場にないと考えていた。だからこそ、4年間という長い時間をかけて熟成してきたはずの彼らが、いざW杯の本番直前になって戦術面でバラバラになる事実が許せなかったのだ。
結局、チームは本来の力を発揮できず、1勝も挙げられないままグループリーグ敗退という屈辱を味わった。「もっと自分たちが早く団結していれば」という思い。南アフリカ大会の奇跡を知る大久保氏にとって、内紛とも呼べるブラジルでの結末はあまりにも残酷なものだった。
(FOOTBALL ZONE編集部)

















