後輩に奪われ「実力不足を感じました」 先発→ベンチ降格…基礎から見つめ直す現在地「一度崩して」

駒澤大4年GK亀井一起「100%を出して取り組まないと」
4月に開幕した大学サッカーリーグ戦。プロ内定選手、これからプロを目指す選手、そして大学という新たなステージに移行した選手たちが全国各地で激闘を繰り広げる。ここでは大学サッカーのステージで躍動する選手たちをピックアップしていく。今回は関東大学サッカーリーグ1部第10節・駒澤大vs桐蔭横浜大の一戦から。3-2の逆転勝利を収めた駒澤大。この試合でゴールマウスを守った4年生GK亀井一起は、台頭してきた1年生GKにライバル心を持ちながらプレーしていた。
【PR】ABEMA de DAZN 学割キャンペーン、最初の3ヶ月・月額980円で国内外の世界最高峰サッカーコンテンツが視聴可能に!
185cmのサイズと屈強なフィジカルに加え、強烈なキックを武器に持つ亀井は、1年時から関東大学サッカーリーグ2部でベンチ入りを果たし、2年生まではセカンドGKとしてプレー。昨年は1学年上のGK永田陸(高知ユナイテッド)と激しいレギュラー争いを繰り広げた。
最高学年を迎えた今年、昇格した関東1部で開幕戦から守護神としてスタメン出場を果たしたが、チームはまさかの3連敗。そこからも勝利はつかめず、第6節に早稲田大に0-3で敗れると、第7節の東海大戦ではベンチに回り、1年生GK鈴木魁にポジションを奪われる形になった。鈴木は東海大戦、続く東洋大戦をクリーンシートで抑えて2連勝に大きく貢献した。
「自分が出た試合はずっと勝てなくて、1年生の鈴木が出たら連勝をして、本当に悔しかったし、改めて自分の実力不足を感じました」
目標はプロ。だが、その前に目の前の競争に勝たないと未来は切り開けない。焦りや不安もあったが、それ以上に亀井の中で大きな成長を掴むモチベーションを生み出した。
「昨年からパーソナルジムに通っていたのですが、その回数を増やすようにしました。ただ身体を鍛えるのではなく、GKとしての自分をもう一度見つめ直そうと。構え方、ステップ、キャッチの仕方など、自分の固定観念を一度崩してきちんと土台として作り直そうと意識するようになりました」
長い期間GKをやっていると知らず知らずのうちに染みついてしまう癖がある。月日を重ねれば重ねるほど、それは強くなる。いい意味で言えば積み重ねだが、時にはその癖が直らずに成長を止めてしまうリスクもある。
亀井は一度Jリーグクラブの練習に参加した際に、「セービングやキャッチングなどの面での基礎が全然足りていない」と痛感したことで、基礎をもう一度積み重ねることに意識を向けるようになった。
「正面キャッチのフォームや手の出し方、力の入れ方、構えのスタンス、そしてプレジャンプの部分など、細かい部分を抽出して取り組むようになりました。特にプレジャンプの部分で僕はどうしても大きくなってしまうので、うまく力を逃さないでセービングに行けるかどうかを試行錯誤しながらやっています」
今季、守護神として試合に出続けられたことで基礎固めの手応えは掴めていた。結果が伴わず、1年生にポジションを奪われてしまったが、自分が取り組んでいることをより信じることで、モチベーションはむしろ大きく高まっていった。
「やっぱり今まで長い間をかけて染みついてしまっていることを変えるのはとても難しい。今も悩むところは多いですが、それは覚悟の上で取り組むようになりましたし、今ここで基礎を鍛え直すことは将来を考えたら決してマイナスじゃない。裏を返せば基礎をもう一度徹底してやれば成長できる伸びしろだとも思っています」
焦りや不安を向上心に変えて、より自分とストイックに向き合うようになった。そして、前節の法政大学戦。鈴木が負傷したことで、再び亀井に出番がやってきた。結果は連勝を止める2-3の敗戦。だが、覚悟を決めている亀井は再び自分を鼓舞し直し、日常のトレーニングに真剣に向き合った。
迎えた桐蔭横浜大戦。前半に2失点を喫するが、「何がなんでも勝ちたかった」と後半は気迫のプレー。得意のロングキックでFW太田修次郎の同点ゴールの起点となり、出場した試合では今季初勝利で勝ち点3を手にした。
「2失点は反省しかありませんが、ずっと欲しかった勝利をようやく手にすることができた。次またチャンスがあったら無失点で抑えて、自信をもっとつけていきたいです。コツコツと信じたことをやり続ける。卒業するときには今よりもっと成長した状態で次のステージに行けるように、今を一生懸命やるだけです」
覚悟の裏には亡き恩師との『心の約束』があった。大分県出身の亀井は高校進学時に親元を離れて長崎総合科学大学附属高に進学し、小嶺忠敏監督の教えを受けてきた。だが、レギュラーとして臨んだ高校2年時の全国高校サッカー選手権大会の際に恩師の訃報を知った。
「本当にショックでした。高校卒業して長崎を離れる時に、南島原にある小嶺先生のお墓参りに行きました。墓前で手を合わせたときに『次は内定したプロクラブのユニフォームを持って挨拶に来ます』と心の中で宣言をしたんです。覚悟がそこで決まりましたし、それが僕の大事な目標の一つになっています。だからこそ、どんな状況でも自分がやるべきことの100%を出して取り組まないといけないんです」
胸を張って長崎に報告に行けるように。亀井は闘争心と向上心を燃やして覚悟のピッチに立ち続ける。
(安藤隆人 / Takahito Ando)
安藤隆人
あんどう・たかひと/岐阜県出身。大学卒業後、5年半の銀行員生活を経て、フリーサッカージャーナリストに。育成年代を大学1年から全国各地に足を伸ばして取材活動をスタートし、これまで本田圭佑、岡崎慎司、香川真司、南野拓実、中村敬斗など、往年の日本代表の中心メンバーを中学、高校時代から密着取材。著書は『走り続ける才能達 彼らと僕のサッカー人生』(実業之日本社)、早川史哉の半生を描いた『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、カタールW杯のドキュメンタリー『ドーハの歓喜』、新刊は『ともに歩き出す サッカーと家族と新しい日常』(ともに徳間書店)。講演家としても全国を回っている。元・名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクター(2022年〜2026年4月)、現・國學院大學体育連合会蹴球部コーチ。















