ドイツで感じた「日本人へのリスペクト」 欧州初挑戦の25歳、相性抜群の指揮官「僕からしたら完璧」

ダルムシュタットの秋山裕紀【写真:picture alliance/アフロ】
ダルムシュタットの秋山裕紀【写真:picture alliance/アフロ】

独2部ダルムシュタットで1年間フル稼働した秋山裕紀

「海外では、自分から入っていかないと受け入れてもらえない」

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 日本では、海外移籍についてそう語られることが多い。もちろん、それは間違いではない。異国の環境に飛び込む以上、自らコミュニケーションを取り、チームに溶け込んでいく姿勢は必要になる。ただ近年、ヨーロッパの現場を取材していると、少しずつ変化も感じる。

 以前よりも、クラブ側が新加入選手を受け入れる努力を積極的に行うケースが増えているのだ。アルビレックス新潟からドイツ2部ダルムシュタットへ移籍した25歳の秋山裕紀も、その変化を実感している一人だった。

 今季、秋山は移籍初年度ながら中盤の主力としてほぼ全試合でスタメン出場。ブンデス2部は強度が高く、外国人選手にとって順応が難しいリーグとして知られるが、その中で秋山は早い段階から存在感を発揮している。

 もちろん本人の適応力や努力は大きい。だが、それだけではない。そこには、クラブ側の受け入れ体制もある。「充実した毎日を送っている」と話す秋山に、「日本では『海外では自分から入っていかないと受け入れてもらえない』と言われますが、逆にクラブ側が受け入れる空気を作ってくれている感覚もこのクラブにはあるように感じますが、いかがですか?」と尋ねてみた。

 秋山は即座にうなずいた後、こう答えている。

「それはありますね。このクラブしか知らないので他は分からないですけど、監督やスタッフも含めて、家族のことも気にかけてくれますし、『何かあったらいつでも連絡してね』と言ってくれます」

 異国で生活する選手にとって、「家族まで気にかけてくれる」ことの意味は大きい。サッカーだけでなく、生活全体を含めて安心できる環境があるからこそ、ピッチに集中できる。秋山は、日本人選手へのリスペクトを感じているという。

「そういうところからも、日本人選手を大事にしてくれていると感じますし、すごくリスペクトしてくれているなと思います」

 なぜ、そうした空気が生まれているのか。

 その背景には、これまでヨーロッパでプレーしてきた多くの日本人選手や指導者たちの積み重ねがある。

「真面目に取り組む」
「チームのために走る」
「戦術を理解しようとする」
「プロフェッショナルである」

 そうした評価が、時間をかけて少しずつ浸透してきた。秋山自身も、現場でそれを強く感じている。

「すごく感じますね。人間性もプレースタイルも含めて、日本人に対してすごくリスペクトしてくれているなと、このクラブに来て感じています。話しかけてくれたり、プレーを褒めてくれたり、そういう一つひとつの行動ですね。例えばチームでも、日本語の挨拶を覚えて使ってくれたりとか。そういうところからも、日本のことを受け入れてくれているのかなと感じます。そういう行動の一つひとつから、リスペクトを感じますね」

 積極的に歩み寄ってくれるというチームメイトやスタッフたち。その中心にいるのがフロリアン・コーフェルト監督だ。秋山は監督について語り始めると、言葉に熱がこもった。

「僕からしたら、完璧だなと思いますね」

 なぜ、そこまで高く評価するのか。

 秋山は、将来自分も監督をやりたいと考えているからこそ、特にチームマネジメントの難しさを感じているという。プロサッカーチームには20~30人もの選手がいる。だが、先発で試合に出られるのは11人。ベンチ入りしても出られない選手が必ずいる。

「選手からしたら『なんで自分を使ってくれないんだ』と思うことは絶対にあるし、監督に対して不満を持つ選手もいると思うんです。全員に好かれるのは、ほぼ不可能だと思っています」

 その難しい仕事を、コーフェルト監督は高いレベルでこなしていると秋山は言う。

「出ている選手も出ていない選手も関係なく声をかけてくれますし、『全員が大事な選手で、価値がある』と常に伝えてくれています。チームマネジメントとサッカーの構築、両方の面でとても優れていて、すごく完成度の高い監督だと感じています」

 ただ命令するのではなく、一人一人を人間として尊重する。だからこそ、選手たちも監督を信頼する。

 コーフェルト監督は日本人選手への理解も深い。ブレーメン監督時代には、元日本代表FW大迫勇也とともに戦った経験がある。秋山は、監督からそんな大迫についての話をよく聞くという。

コーフェルト「ユウヤはとても優れた選手で、一緒に仕事をすることができてとてもよかった。とてもプロフェッショナルで、どんなトレーニングにも本気で取り組んでくれる。素晴らしい選手だったよ」

 これまでドイツで活躍した日本人選手たちが残してきたポジティブな印象は、いまも確かに現場に残っている。そして、その積み重ねが、次の日本人選手たちを助けている。

 もちろん、最後は実力がなければ生き残れない。だが、日本人だから不利という時代は、少なくともなくなりつつある。秋山がダルムシュタットで感じている居心地の良さは、単なる偶然ではない。日本人選手の価値を理解し、受け入れようとするクラブは確実に増えているのだ。

(中野吉之伴 / Kichinosuke Nakano)



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中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)取得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなクラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国で精力的に取材。著書に『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

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