サッカー市場を変える“アプリ”「距離が近づく」 ボタンひとつで移籍交渉…欧州とJをつなぐ架け橋

「Transfer Room」の国際サミットが日本で初開催された
移籍電子化プラットフォームの「トランスファールーム(Transfer Room)」が主催する国際サミット「TransferRoom LIVE:APAC 2026」が5月7日、8日に日本で初開催された。様々なクラブの強化担当者やエージェント会社が一同に介するこの国際サミットは、島国の日本のクラブにとって遠く離れた海外との“コネクションをつくり出す”またとない機会になっている。
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トランスファールームは専用のアプリを通じ、求める選手の特徴や情報を入力して検索することで条件に合致する選手を見つけることができ、クラブと直接やり取りや交渉が可能となる。選手の基本情報から年俸、試合の記録などのデータを網羅しているのはもちろん、将来的にその選手の市場価値がどれほど上昇するのかといった予測もAIによって可能となった。まるでシミュレーションゲームのようでもあるが、こうしたことはすでに現実の世界で行われているのだ。
世界800以上のクラブ、そのうちJリーグでも14クラブが利用している。スウェーデンのマルメから浦和レッズに加入したFWイサーク・キーセ・テリンやブラジルのバイーアからセレッソ大阪に加入したFWラファエル・ハットンといった選手の移籍は、このトランスファールームを通じて実現したもの。逆に日本から海外へ旅立ったDF毎熊晟矢(C大阪→AZ)のようなケースもある。
オンライン上で、代理人を通さなくてもクラブ間でのやりとりが可能になったことがこのプラットフォームの画期的なところ。では、今回日本で初開催となった「TransferRoom LIVE」の目的はどこにあるのだろうか。
会場となったホテルには世界21か国から56クラブ、19のエージェント会社が集結し、制限時間15分間の「1:1ミーティング」が繰り返し行われていた。
参加者同士が自動でマッチングされ、振り分けられた先のテーブルへ移動してミーティングを行うという仕組み。談笑から始まるグループもあれば、初めからPCの画面に表示した資料を見ながら真剣に話し合うグループなど、雰囲気は各テーブルで様々。制限時間になるとブザーが鳴り、ほとんど間を置かずに次の15分のミーティングがスタートしていく。
トランスファールームの代表取締役、フレデリック・ブロホルト氏はこうした機会を「トランスファールームのオフライン版」と捉え、「フットボールの世界においても人間関係が最も大切なものだと考えています。人と人とがつながり、関係性を構築すること、必要な情報やデータを共有することで、移籍に関する話を進めることができるようになります」と対面でのやり取りの重要性について語っている。とりわけ、日本をはじめとして、欧州や南米など大きなマーケットと物理的な距離が離れているアジアのクラブにとっては、これまで抱えていた問題を解消する場になると考えているという。
「我々は2017年にスタートしましたが、当時からサッカークラブには2つの懸念がありました。一つは、クラブがどのような選手を獲得可能なのか、どのくらいの移籍金で交渉できるのか、もしくはどういったエージェンシーが関わっているかという情報を持っていなかった。そしてもう一つは、クラブやエージェンシーの意思決定者(decision maker)と直接話しをするのが難しかったという点。トランスファールームを通じて、正しい意思決定者と話をすることが可能になりました」
つまり、この「TransferRoom LIVE」は選手獲得に携わるクラブの意思決定者同士が密につながれる機能を果たしているのだ。

FC東京・小原GM「利用価値はすごく高い」
参加したクラブ側の“意思決定者”たちも、これが非常に価値のある機会だと実感していたようだ。FC東京のゼネラルマネージャー、小原光城氏は「フットボールのマーケットの中心がヨーロッパにある中でどのように市場の動向を追いかけるのか、あるいはクラブをどのように運営し、大きくしていくのかという上でJリーグの立ち位置を知ることは必要不可欠です」とクラブが抱える課題を挙げた。「その中でのコネクション作り、ネットワーク作りは我々がすごく重要だと捉えている部分。だからこそ、あらためてこの機会がとても貴重なものだと感じました」と語った。
では、ミーティングでは実際にどのような話し合いが行われていたのだろうか。その内容について小原氏は「本当にクラブによってバラバラです。もちろん選手個々の話をする時もあれば、クラブがどういう方向性を目指しているのか、お互いのリーグのこと、シーズン移行の影響など話題は様々でした」と明かした。
「この場でパッと何かが決まることはほとんどありません。大切なのはどのようにコミュニケーションを取り、次につなげていくか。活用の仕方はクラブそれぞれだと思いますが、やはり利用価値はすごく高いですし、Jリーグと世界の距離が近づくのに大きく寄与していることは間違いないと思います」(小原氏)
選手の移籍だけでなく、戦略的パートナーシップの締結やクラブ訪問での情報交換など、今後の発展の可能性は無限にある。それらのきっかけとなる、広い意味での関係強化こそが大きな目的となっていた。
トランスファールームは対面でのやりとりが難しくなったコロナ禍に急速に拡大した背景はあるとはいえ、やはり直に顔を合わせて話ができるオフラインでこそ生まれるつながりや絆に勝るものはない。一朝一夕で何かが大きく変わるわけではないが、この新たな移籍プラットフォームが日本サッカーの未来に変化をもたらすポテンシャルを秘めていることは間違いないだろう。
(石川 遼 / Ryo Ishikawa)


















