ハーフに生まれ「プラスに捉えた」 鈴木彩艶が11歳で自覚した宿命…どこでも貫く”母の教え”

インタビューに応じたパルマの日本代表GK鈴木彩艶
インタビューに応じたパルマの日本代表GK鈴木彩艶

DAZN「Mission26」のインタビューで語った

 イタリア・セリエAのパルマで守護神として君臨する日本代表GK鈴木彩艶。北中米ワールドカップ(W杯)を目前とし、圧倒的なポテンシャルを支える“人間性”について語った。ガーナ人の父と日本人の母を持ち、アメリカ生まれ埼玉育ちの「ハーフ」。DAZN「Mission26」のインタビュー取材による連載最終回では、常に冷静沈着でストイックな鈴木が守り続ける母の教えや自身の流儀を語った。(取材=DAZN、構成=FOOTBALL ZONE編集部・小杉舞/全3回の3回目)

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「僕、ハーフですごく目立つんですよね」

 根を深く張り、決して揺らぐことのない意思。鈴木を突き動かす根源には、幼い頃から彼が向き合ってきた「宿命」と、それを「誇り」へと変えた魂の軌跡があった。191センチの巨躯に宿る、圧倒的な存在感。日本代表のゴールマウスに立つ鈴木にとって避けては通れない事実がある。ガーナ人の父と日本人の母の間に生まれた、ハーフとしてのアイデンティティー。多文化が混ざり合った血筋は、幼少期に注目されるという環境を突きつけた。

「それは(ハーフで目立つのは)いい意味でも悪い意味でも目立つということです。でも、僕はそれをプラスに捉えていました。目立つなら、いいことをして、良い方向に目立てばいい。そうすれば、自分という人間をより強く認識してもらえる。サッカーをやっていることが大きかったのかもしれないけど、ハーフという強みを生かしてきた人生だなというのは、自分でも強く感じています」

 鈴木自身、他人の視線に怯えるのではなく、視線を自らの力へと変えた。その考えを自らに作り出した転機は小学5年生。2013年に開校した浦和レッズジュニアへの入団だった。まだ11歳。だが、背負う重みを自覚していた。

「浦和レッズという大きなクラブに入って、看板を背負ってプレーする。普段の生活から、自分がどう見られているかという気持ちが芽生えたというのをとてもよく覚えています。ピッチ外、移動中も周りの選手にいろんなことを注意していた覚えがあります。ハーフだということもプラスに捉えて、小さい時から意識していましたね」

 目立つからこそ、周囲の手本になる。その哲学の種を蒔いたのは、見守り続けた母だった。

「母の存在は大きいですね。『自分のことは自分でやれ』と、自立することを促されて育ちました。小さい時から上の学年に混じっても物おじすることはなかったですし、それが今にも生きています。サッカーについては母は何も知らないですけど(笑)、仲はとても良いです」

 母が教えたのは、一人の人間としての強さ。その教えは、今や異国イタリアのロッカールームでも、鈴木を特別な存在へと押し上げる。試合後、歓喜や落胆が渦巻き、ゴミが散乱する室内。日の丸を背負う23歳は、一人静かに、そして当たり前のように腰を落として拾い上げる。

「こっちのロッカールームだと、日本と違ってみんなゴミを散乱させる。それを拾ったりしている姿を見て周りのスタッフや選手が『あ、やっているな』と一緒にやってくれたりして、周りに伝わっていく感じがあります。ゴミとか思わず拾っちゃうんですよ。自分がやるべきことをどんな時でもやる。それを曲げない、ブレない。自分に自信を持って生きている。『自分を持っているね』と言われるのは、褒め言葉だと思っています」

 単なるマナーの話ではない。自らの矜持を守り、周囲に流されず、正義を貫く。それこそが鈴木が自分に課した誇り。そんな鈴木が今、プライドを懸けてピッチに立つのが日本代表の舞台だ。いよいよ幕を開ける、4年に1度のW杯。

「もう個のパワーはあるので、それをいかに1つの試合で融合してできるかというところが鍵になると思います。それは攻撃だけでなく守備も含めて。世界の素晴らしいクラブ、レベルの高いところでやっている選手がいるので、その力をいかにひとつにまとめるか。それこそが日本の強みだと思います。みんなお互いを理解してプレーできる強みがある。そこを大一番に高い状態で持っていけるか」

 4年前、カタールW杯メンバーに選出されなかった時は「猛烈に悔しかった」という。守護神として臨む北中米大会。鈴木が強調したのは組織と個。歯車を噛み合わせるための“一体感”に強いこだわりを見せた。

「一体感はどう作るか? 親善試合1つとっても結果がついてこないと雰囲気は良くならない。代表に集まる前の(クラブでの)結果も大事で、良い状態で集まって練習を積んでも、試合で結果が出ないと本当の雰囲気は良くならない。W杯までの数試合、とにかく『数字』にこだわるのが、チームの一体感を出すためにも大事かなと思います」

 3月の英国遠征ではスコットランドとイングランドにともに1-0で連勝。それぞれがクラブに戻って研鑽を積み、5月15日のW杯メンバー発表を経て同31日の親善試合アイスランド戦に向かう。世界へ——。大舞台を前にしても根底にあるのはやはり日本人としての誇りだった。

「W杯はどこが優勝するのもあり得ると思っています。日本人として、お互いを理解できる、尊重できる、感情をコントロールできる。これは僕らの強み。W杯という大一番にその強みをぶつけることが、結果を出すための大事なポイントになると思います」

 ハーフとして生まれ、浦和で育ち、イタリアで磨かれ、日本を背負う。隙がないのではない。隙を見せないほど自らの理想に誠実。イタリアの空を突き刺すような志は、日の丸を背負う守護神へと続く道を、どこまでも真っ直ぐに照らし出している。

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