周りからの厳しい目「たった1点か」 名将が”カミナリ”…転機となった監督交代「ブレが少なく」

3戦連発で好調を維持する名古屋FW木村勇大
名古屋グランパスの木村勇大が絶好調をキープしている。25日の清水エスパルス戦で、J1公式戦で2年ぶり2度目の3試合連続ゴールをマーク。通算6ゴールで得点王も視野にとらえる25歳のストライカーを覚醒へと導いた、今シーズンから指揮を執る68歳のミハイロ・ペトロヴィッチ監督との関係を追った。(取材・文=藤江直人)
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予感はほぼ的中する。これはカミナリを落とされる。名古屋グランパスの木村勇大がこんな思いを抱くと、決まって今シーズンに就任したミハイロ・ペトロヴィッチ監督の怒声が響きわたる。
「自分のよさを生かして、とにかく相手ゴールへ、というプレーを求められているので。逆に相手ゴールに向かわないプレーをしたらぶち切れられますからね。実際に練習からよく怒られています」
サンフレッチェ広島、浦和レッズ、北海道コンサドーレ札幌に続いて4つ目のJクラブを率いる今シーズンのJ1最年長指揮官、68歳のペトロヴィッチ監督へ。木村は苦笑しながらも感謝の思いを抱いている。
「それもあって、自分の優先順位のなかで余計にゴールへの意識づけが高くなっているので」
名古屋で迎える2シーズン目の戦い。このオフに就任した、ミシャの愛称で親しまれるペトロヴィッチ監督が掲げるスタイルのもとで、木村のサッカー観は大きく変貌を遂げている。
過去の3チームと同じく、指揮官は<3-4-2-1>を主戦システムにすえている。そのなかで昨シーズンまでは最前線でプレーしていた木村は、一列下がったシャドーの左を任されている。
「ワントップだとどうしても相手ゴールに背中を向けるプレーが多くなりますけど、自分のよさは前への推進力であり、ゴールに向かっていく迫力だと思っていたし、2列目だとそれらを出しやすい部分もある。クロスへの入り方にしても、2列目だからこそ相手ディフェンダーが捕まえ切れない、という部分も出てくるので」
走力や体力には自信がある。それでも生身の人間である以上は、無尽蔵というわけでもない。ペトロヴィッチ監督が課す日々の練習で、相手ゴール前へ理詰めで迫っていく形を追求していると木村が言う。
「チームとしてまずワントップの祐也くん(山岸)が狙い、そのなかで次に僕たちシャドーが空いて、僕たちが狙うなかで次に左右のウイングバックが空く、という形を普段の練習からやっているので」
清水エスパルスのホーム、IAIスタジアム日本平に乗り込んだ25日のJ1百年構想リーグ地域リーグラウンドWESTグループ第12節。前半45分に木村が決めた先制ゴールには、日々の練習が凝縮されていた。
右タッチライン際に張り出し、敵陣の中ほどまで攻めあがった3バックの右の原輝綺が滞空時間の長いクロスを供給する。ターゲットにすえられたニアサイドには山岸が走り込んできていた。
直前の42分にもまったく同じ場面が生まれていた。右サイドから原が放ったクロスに、ニアサイドへ飛び込んできた山岸が頭を合わせる。しかし、シュートはゴールの右へ外れてしまった。
「次の場面でも、相手が祐也くんにちょっと食いついてきた動きが見えていたので」
身長183cm・体重80kgのサイズを武器に、キックオフ前の時点で6ゴールをマーク。鹿島アントラ―ズの鈴木優磨と並ぶ日本人最多で、全体でも3位タイにつけていた山岸がどうしても警戒される。
案の定、清水の最終ライン、住吉ジェラニレショーンとパク・スンウクの2人が山岸につられる。木村は清水の右WB北爪健吾の前方へ回り込み、山岸の背後に生じたスペースへ走り込んでいった。
山岸を上回る185cm・84kgの屈強なボディを、投げ出すようなダイビングヘッドから生まれた一撃。当初はボランチ稲垣祥のゴールとアナウンスされた先制弾は、ハーフタイムに木村のゴールと訂正された。
「以前も試合に出ていないガミくん(野上結貴)のゴールになっていました。最近は間違えられがちで」
場内アナウンスの訂正に思わず苦笑した木村は、決して簡単なゴールではなかったと胸を張った。
「目の前で祐也くんがブラインドになって、急にボールが出てきた形でしたけど、そういうボールが来るイメージもずっと描きながらニアへ入っていきました。何となく惰性で入っていったら実際に来たときにおそらく反応できないし、変なところに当たると思うけど、来ないときでも準備し続けているからこそのゴールかと」
木村にとって、プロになって2度目のJ1の公式戦3試合連続ゴールとなった。最初は東京ヴェルディに所属していた2024年5月。最終的に10ゴールを決めた2年前を、木村は意外な言葉を介して振り返る。
「その前年、1年目がうまくいかなくて、ヴェルディでどのくらいやれるか、というなかで、ちょっと言い方があれですけど、自分のなかではビギナーズラック的なところがあった。勢いでいけちゃった感じです」
木村は大阪桐蔭高校から関西学院大学をへて、2023シーズンに京都サンガF.C.へ加入した。しかし、JFA・Jリーグ特別指定選手だった2022シーズンを含めて、J1リーグで無得点と壁にはね返され続けた。
ルーキーイヤーの8月にはツエーゲン金沢へ育成型期限付き移籍。しかし、J2リーグでも1ゴールに終わったオフにJ1へ昇格するヴェルディへ期限付き移籍し、プロ2シーズン目で潜在能力を開花させた。
しかし、ヴェルディへ完全移籍した昨シーズンに再び壁にぶつかり、苦しみ抜いたと木村は言う。
「昨シーズンはそのままでいけなくなってものすごく苦しんで、考え抜いて名古屋に移籍して、それでもうまくいかなかった。そこで今年に監督が変わって、ポジションも変わる転機が訪れたなかで、アジャストするために自分なりにキャンプからずっと考えながらやってきた。2年前とはまた違った感覚ですね」
昨シーズン後半の名古屋では1ゴールだった木村は6ゴールで山岸と並び、7ゴールで得点ランキング首位のエリソン(川崎フロンターレ)とデニス・ヒュメット(ガンバ大阪)に次ぐ3位タイにつけている。
「昨シーズンはポストに当たるとか、VARで取り消されるとか、入りそうで入らない場面が多かったけど、取り組み自体は間違っていなかった。世間の目としては『夏場に加入したけどたった1点か』だったかもしれないけど、自分のなかでは前向きにとらえていた。メンタルのブレがかなり少なくなってきたと思っています」
たくましくなったメンタル面に、ペトロヴィッチ監督の就任とシャドーへの転向が触媒となってゴール量産につながった。その証がリーグで3位タイ、日本人選手では最多となる26本の総シュート数となる。
分母となるシュート数が多ければ、必然的に分子となるゴール数も増える。新指揮官の「相手ゴール前へ」という要求を自分なりに考えながら満たし、理詰めでプレーしているからこそシュート数も増える。
2024シーズンと比べて、必然に導かれたゴール量産なのか。こう問われた木村は笑顔でうなずいた。
「自分のなかですごく整理されているゴールが多くなりましたね」
25歳にして急成長中の木村は、新たなテーマとしてまだ達成していない1試合複数ゴールを掲げる。それを成就したとき、2位に浮上した名古屋のさらなる上位進出と自身の得点王獲得が見えてくる。

藤江直人
ふじえ・なおと/1964年、東京都渋谷区生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後に産経新聞社に入社。サンケイスポーツでJリーグ発足前後のサッカー、バルセロナ及びアトランタ両夏季五輪特派員、米ニューヨーク駐在員、角川書店と共同編集で出版されたスポーツ雑誌「Sports Yeah!」編集部勤務などを経て07年からフリーに転身。サッカーを中心に幅広くスポーツの取材を行っている。サッカーのワールドカップは22年のカタール大会を含めて4大会を取材した。





















