森保ジャパンが直面する「矛盾の解決」 限られた駒…絞り込んだ「129→89」の代償

森保一の招集メンバーに変化【写真:徳原隆元】
森保一の招集メンバーに変化【写真:徳原隆元】

招集総数は122人から89人へと減少した

 森保一監督が日本代表の新たなフェーズとしてワールドカップに挑もうとしている状況は、これまでの招集メンバーのデータから読み取ることができる。日本代表の2022年カタール大会に向けた軌跡と、2026年北中米大会へ向けた現在地を比較すると、チーム編成における明確な変化が浮かび上がってくる。最初に目を引くのは招集人数の変化だ。

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 第一期(2018〜2022年)の招集総数122人に対し、第二期(2023〜2026年3月)は89人に絞り込まれている。ポジション別の内訳を見ると、GKは11人で同数を維持。DFは40人から27人へ減少し、減少率は32.5パーセントに上る。MF/FWは71人から51人へと減少しており、減少率は28.1パーセントとなる。

 減少率の高さは、前回に比べて招集した選手の総量が少ない、つまり候補となる選手が絞り込まれていたことを意味する。また、このDFのテスト人数の少なさは、森保ジャパンの現在の戦術を浮き彫りにしている。

 テスト枠が減少した背景には、チーム戦術が3バック(3-4-2-1)へと傾倒し、ピッチ上の純粋なDFの枠が減った要素が確かに存在する。カタール大会を経験した冨安健洋、板倉滉、谷口彰悟といった最終ラインの主力選手たちが経験を深め、彼らを中心に守備の強固な基盤を形成する算段があったと推測される。さらに森保監督は3バックを得意としていることも関係しているだろう。

 ところが現在、その目論見は大きな壁にぶつかっている。最大の懸念事項であった主力DF陣の負傷離脱やコンディション不良が現実のものとなり、経験値を蓄積したはずの守備の屋台骨が揺らいでいる。

 試合の局面や対戦相手との噛み合わせによっては4バックへ回帰し、守備の安定を図りたい場面は出てくることが予想される。そうなった場合、システム変更に耐えうる純粋なDFの層の薄さが露呈してしまう。

 森保監督は有事を想定し、センターバックやサイドバックで起用できる選手をウイングバックとしてテストしてきた。相手がハイクロス攻撃を仕掛けてきたとき、ウイングバックが下がって5バックを形成して凌ぎきるための適任者探しだ。

 ここに選手登録の割り振りという落とし穴が生じる。右サイドのウイングバックで考えてみる。先発する堂安律が守備で奮闘した後、一気に流れを変えられる伊東純也が途中から出て点を取りに行くか、あるいは堂安のポジションに背の高い、ヘディングの得意な選手を入れて守り切るかという選択が考えられる。

 ところが左右の守備的なウイングバックとして、確固たる地位を確立したプレーヤーは少ない。そうなるとその守備的なウイングバック候補を厚めに入れざるを得ない。登録人数26人に対して、3人のセンターバックに左右のウイングバック2人ずつだとすると守備能力の高い選手が10人必要になる計算だ。

 限られた枠の中で純粋な守備要員を厚くすれば、削るのはMF/FWのうち、攻撃陣、特にスペシャリストやストライカーということになる。ところが終盤に5バックが必要となるという試合展開を望むのであれば、前線の圧力を維持するために攻撃陣を減らす選択は取りにくい。

 しかし、現状のスカッドでこの矛盾を解決する手段は限られている。最適解として求められているのは、前線で起用されながらも、有事にはウイングバックやサイドバックの位置まで下がって守備のタスクを高い強度でこなせる「ユーティリティ性を持ったMF/FW」の起用だ。

 攻撃のタレントが豊富に見える日本代表において、真に必要とされているのは、守備の穴を埋められる強度を持ったアタッカーなのだ。その象徴的な役割を担える南野拓実が負傷している状況は、チームにとって非常に苦しい事態と言える。

 森保監督の二つのサイクルは、「構築」から「成熟」へと移行している。数字上は122人から89人へと少数精鋭化が進み、チームとしての完成度が高まっているように見える。盤石に見える成熟の裏側には、守備陣の層の薄さというアキレス腱が存在する。限られたDFの持ち駒でいかに急場をしのぐか。守備能力を兼ね備えたMF/FWをいかに適材適所で配置し、チーム全体のバランスを保つか。

 残された期間で、この偏りのあるスカッド構成を逆手に取り、複数の選択肢を提示できる戦術の柔軟性を高めることが求められる。主力選手たちが最高の状態でピッチに立つ確率を高めつつ、不測の事態に備えた多様なシステムへの適応力を引き上げること。数字が示す歪みを直視し、それを戦術的最適解へと昇華させることが、森保ジャパンにとっての至上命題となる。

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森 雅史

もり・まさふみ/佐賀県出身。週刊専門誌を皮切りにサッカーを専門分野として数多くの雑誌・書籍に携わる。ロングスパンの丁寧な取材とインタビューを得意とし、取材対象も選手やチームスタッフにとどまらず幅広くカバー。2009年に本格的に独立し、11年には朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の平壌で開催された日本代表戦を取材した。「日本蹴球合同会社」の代表を務め、「みんなのごはん」「J論プレミアム」などで連載中。

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