育成クラブに定着した”新たな色” ブレない方向性…従来の長所と共存へ「J1で生き残る唯一の道」

昇格して3シーズン目の東京ヴェルディ
J1に昇格して3シーズン目の東京ヴェルディが、今年昇格してきたジェフユナイテッド千葉に経験値の違いを見せつけた。4月18日に行われたJ1百年構想リーグ第11節で、東京Vが後半奪った1点を守り切って1-0で勝利を収めた。
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スコアは1-0でポゼッションも千葉が53%で上回ったが、シュート数は東京Vの15本(うち枠内3本)に対し千葉は3(0)本。東京Vはペナルティエリア内から計10本のシュートを試みたが、千葉は前半呉屋大翔が狙ってブロックされた1度のみ。千葉の小林慶行監督も「完敗に近いゲーム。個々の差の積み重ねが非常に大きくなり、なんとなく終わってしまった」と振り返った。
東京VはJ1に昇格し、そこで結果を出そうと模索し続けることで新たなクラブの色が定着しつつ他ある。以前から育成力には定評があり、個人昇格していく選手の数は際立っていた。チームは長くJ2で低迷する反面、東京Vでのプロ初期の経験値を基盤にステップアップしていく選手が相次ぎ、中島翔哉、藤田譲瑠チマ、山本理仁らが欧州へと羽ばたいていった。前身の読売クラブ時代からプロ化へと先導した歴史を刻んできたので、独特の技術をベースに個性を育んできていた。
ただし今でも東京Vの育成力は継続されている。だがそれはプロとして戦い抜くための総合力を養う方向へと上書きされ、チーム全体に共有され外部から獲得した選手たちにもしっかりと浸透している。
千葉戦では、染野唯月、新井悠太、宮原和也と主力3人が出場停止だった。だが今年2試合目の出場だった寺沼星文が決勝ゴールを挙げ、2試合目の出場だった熊取谷一星、故障から復帰してこれが3試合目だった林尚輝らも戦力ダウンを感じさせないパフォーマンスで勝利に貢献した。この日東京Vのスタメンに生え抜きは、森田晃樹と深澤大輝の2人しかいなかった。しかし山形から獲得した吉田泰授、秋田から加入の井上竜太、さらに水戸から来た寺沼と、それぞれJ2出身の選手たちがしっかりと東京Vらしいパフォーマンスで順応している。それは守備の局面で身体を投げ出す厳しさを保ちながら、ボールを持った時には状況を見極め最適を追求する、いわば従来の長所との共存だ。もちろん個々に優劣はあるが、全員の方向性にはぶれがない。
そんな東京Vを指揮する城福浩監督は言う。
「トレーニングから高いインテンシティーで臨み、ゲームに絡めない選手たちもしっかりと練習試合を組む。今いる選手たちが成長して高いレベルでのポジション争いをする。それこそがJ1で生き残る唯一の道なんです」
かつての読売クラブは「やんちゃ」がトレードマークだった。当時のレフェリーは「読売の試合をコントロール出来れば一人前」と言われたそうで、笛も味方につけるための駆け引きもあって取り囲んで抗議するのも日常茶飯事だった。だが最近の東京Vからは、そんな傾向は消えている。むしろ身を挺してボールに立ち向かうので、接触して暫く起き上がれないシーンが頻出しているが、選手たちはおとなしく、どちらかと言えば抗議は指揮官が独占的に引き受けている印象だ。
出場停止選手が重なったことを城福監督は「むしろ出場枠を広げるチャンス」と捉えたという。また浦和に快勝した次の試合でも、成功体験を継続させて自信を深めることより、初スタメン3人を抜擢して層を厚くすることを優先した。
良い意味で東京Vには余剰戦力がない。全員がいつ訪れるかわからないチャンスを信じて真摯に全力を尽くす。おそらくそれが伝わるから、ファンの大幅な新規開拓にも成功したのだと思う。
(加部 究 / Kiwamu Kabe)

加部 究
かべ・きわむ/1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。













