W杯に臨むもうひとつの“日本代表” 2014年以来のピッチへ…時計の針を動かすレフェリング

北中米W杯を担当する審判員のリストが公示された
FIFAから2026年北中米ワールドカップを司る審判員のリストが公示された。主審52名、副審88名、VAR30名。前回2022年大会の主審36名、副審69名、VAR24名と比較し、主審は16名、副審は19名、VARは6名増員されている。出場チームが48に拡大し、総試合数が104に膨れ上がった帰結だ。
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大陸別の主審内訳は、アジア(AFC)が8名、ヨーロッパ(UEFA)が15名、南米(CONMEBOL)が12名、アフリカ(CAF)が7名、北中米カリブ海(CONCACAF)が9名、オセアニア(OFC)が1名。前回のアジア枠6名から2つの椅子を積み上げた。
これは単に大会規模が拡大したからということではないはずだ。2014年はAFCから選ばれた主審が4人、2018年は5人と着実にプレゼンスを上げている。
アジアの中で主審1名と副審2名の「セット」で選出されたのは、カタール、ヨルダン、オーストラリア、ウズベキスタンの4か国。日本は荒木友輔主審、三原純副審が選ばれたが、主審1名、副審1名の変則的な構成にとどまった。
実戦において、この構成は不利に働くことが懸念される。阿吽の呼吸を要する審判団において、同国人でのトリオを組めないことは、異国籍の副審と連携を強いられることを意味する。もっとも、2010年大会では西村雄一主審が相樂亨副審、鄭解相副審(韓国)と組んで4試合を担当していたことを考えると、あまり悲観的な要因ではないかもしれない。
ただし、日本は2014年ブラジル大会の開幕戦で西村雄一主審が笛を吹いて以来、ワールドカップで主審の割り当てがない。2018年大会では佐藤隆治主審、2022年は山下良美主審が選出されるも第4審判にとどまった。
時計の針を動かす期待を担うのが、荒木友輔主審だ。2017年の国際審判員登録から研鑽を積み、2026年シーズンもJリーグのピッチで厳しいジャッジを継続している。2022年のU-23アジアカップ、2023年のU-20ワールドカップ、2024年アジアカップ、2026年ワールドカップアジア予選、ACLEなど実績を積み上げてきた。
三原副審は荒木主審と同じく2017年に国際審判員に登録されており、2人は2023年のU-20ワールドカップもともにアルゼンチンに赴いている。特筆すべきは三原副審はプロフェッショナル・レフェリーではないということだ。職場の協力を得ながら審判活動を続け、世界最高峰の舞台に挑めることは、一層感慨深いものだろう。
2024年1月10日、アジアカップのときに荒木主審は静かに語っていた。
「日本人の良さ、几帳面さや勤勉さは世界から評価されている。一方で、それが逆にマイナスなイメージになっているケースもある。プラクティカルなトレーニングだけでなく、会議室でのミーティングでも積極的に発言し、風格や存在感を上げていきたい」
荒木主審のレフェリングには明確な数値的特徴がある。通常、警告(イエローカード)の理由は「ラフプレー(C2)」が多数を占める。しかし、荒木主審の場合は「反スポーツ的行為(C1)」による警告のほうが多いのだ。
この点を本人に直接聞いたが、本人は意識していないという。そして「ホールディングに厳しいからですかね?」ということだった。
ホールディングと言えば、2014年の開幕戦。西村主審がブラジルのフレッジを倒したクロアチアの選手のホールディングを取り、PKを宣告した場面を覚えている人も多いだろう。当時は大きな議論を呼んだ。だが現在のVAR時代においては、むしろその厳格さこそが国際基準となりつつある。
荒木主審が北中米のピッチに立つことがあれば、迷わずその笛を鳴らしてほしい。執拗なホールディングを断罪し、12年間止まっていた日本の、そして世界のレフェリングの時計を次へと進めることを願ってやまない。
(森雅史 / Masafumi Mori)

森 雅史
もり・まさふみ/佐賀県出身。週刊専門誌を皮切りにサッカーを専門分野として数多くの雑誌・書籍に携わる。ロングスパンの丁寧な取材とインタビューを得意とし、取材対象も選手やチームスタッフにとどまらず幅広くカバー。2009年に本格的に独立し、11年には朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の平壌で開催された日本代表戦を取材した。「日本蹴球合同会社」の代表を務め、「みんなのごはん」「J論プレミアム」などで連載中。





















