広島→鹿島へ…志願のセレクション参加「プロになるため」 正確無比な左足は「キックを変えて」

鹿島ユースで活躍する岩土そら【写真:安藤隆人】
鹿島ユースで活躍する岩土そら【写真:安藤隆人】

鹿島ユース2年DF岩土そら「内田さんや安西さんを参考に」

 4月4日に開幕をした高円宮杯プレミアリーグと全国7地域のプリンスリーグ。ここではリーグ戦で躍動を見せた選手を紹介していきたい。

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 今回はプレミアEAST第2節・帝京長岡対鹿島アントラーズユースから。開幕戦を落とした鹿島ユースだったが、この試合では攻撃陣が爆発して4-2の快勝を飾った。左サイドから何度も正確無比のクロスと鋭い縦突破を仕掛けてチャンスを量産した2年生左サイドバック・岩土そらは、圧巻の3アシストをマークした。

 岩土にボールが渡ればチャンスの匂いがする。大貫琉偉と福岡勇和のダブルボランチを軸に、前線の吉田湊海と髙木瑛人の機動力と推進力を武器に圧倒的な攻撃を組み立てる鹿島ユースにおいて、警戒して中央ばかり固めていると痛い目にあう。

 素早い縦パスで相手を中央に集めてから、一気に両サイドへ。右はカットインを得意とする林勘太が待ち、左は世代トップクラスの精度を誇る左足を持つ岩土が待つ。岩土はただクロスを上げるのではなく、「ボールを受ける位置、相手の状況を見て、仕掛けとキックを変えている」と口にしたように、状況に応じて自在にクロスアプローチや球種を変えてくるからこそ、相手にとっては厄介極まりない。

 帝京長岡戦、前半14分に左サイドでクロスを上げると見せかけてドライブで中に入って行くと、ファールをもらって絶好の位置でFKを獲得。0-1で迎えた27分には左サイドに抜け出した大貫の落としを、後方から勢いよく飛び込んでダイレクトで左足クロス。ニアに落とすように上げられたライナーのクロスを、吉田が胸トラップで収めて、右足で豪快にゴールに突き刺した。

 35分には左ポケットに抜け出した吉田の足元に向けて、DFラインの裏へふわりとしたクロスを送り込み、吉田のターンから髙木が決定的なシーンを迎えるが、これは帝京長岡GK仲七璃のビッグセーブにあった。

 直後の40分、左サイドでボールを受けたFW滝澤周生に対して、オーバーラップを仕掛けてボールを受けると、「それまではワンタッチで上げていたのですが、相手もそれを警戒していたし、ポケットが空いていたので、そのままドリブルで抉っていこうと思いました」と、ドリブルでそのままペナルティーエリア内に侵入し、ゴールキックエリア手前でDFとGKを引きつけてからマイナスの折り返し。これを受けた髙木が冷静にゴールに蹴り込んだ。

 勢いはこれで止まらない。2-1で迎えた後半4分、右CKを得ると、ニアサイドに飛び込んだFW石渡智也にピンポイントで合わせて3アシスト目。これが決勝弾となり、4-2の勝利に大きく貢献した。

「ウチのチームは中央が強いので、信頼してクロスを上げることができています」

 もちろんそれはあるが、前述した通り、岩土のポジショニング、アプローチ、タイミングと判断、キックの精度と、クロスまでの一連の流れが非常にスムーズで練りこまれたプランがあると見ていて感じる。それを伝えると、少し照れ臭そうにしながらこう答えてくれた。

「キックが元々得意なので、球種は人より多く持っていると思います。僕はスピードにあまり自信がない分、立ち位置の取り方は大事にしていて、相手より先手を取ったり、予測してポジションを取ったり、いかにいい状態で左足のキックを出せるかを考えています。その上で背後に蹴るんだったらこういうボールだな、ここはニアに速いボールだな、ファーに落とすボールだなと状況に応じてキックの強弱やコースを決めて、相手が嫌がるボールを出すことを意識しています」

 この言葉から分かる通り、認知力と空間把握能力に長けている。自分が持っている球種と空間に通す感覚を手札にして、その状況に重ねて最良の選択肢を切る。もちろん成功ばかりではなく、失敗もあるが、それをやろうとしているのがプレーで伝わるから、見ていてワクワクする。

 岩土は広島県出身。地元のシーガル広島でプレーしていたが、プロになるために志願して遠く離れた鹿島ジュニアユースのセレクションに参加。合格を果たし、ユース昇格も成し遂げてた。昨年は1年生ながらプレミアEASTに19試合出場。日本クラブユース選手権(U-18)でもレギュラーとして出場し、ベガルタ仙台ユースとの決勝では2つのゴールの起点となった。そしてヴィッセル神戸U-18とのプレミアファイナルにも延長戦までフル出場し、3冠達成の立役者の1人となった。

「内田篤人さんや安西幸輝さんを参考にさせてもらっています。2人ともオーバーラップはもちろん、ビルドアップもうまい。サイドバックは相手の守備にハマりやすいので、立ち位置だったり、ファーストタッチの置き方だったり、そういう細かいところは見ています」

 まだまだ伸びる。左サイドバックとしてはもちろん、ボランチ、トップ下としても大きな可能性を秘めているだけに、ここからの成長は非常に楽しみである。

「去年から出させてもらってる分、僕もチームを引っ張る存在にならないといけないと思っています。今年も1試合、1試合を大事に戦って、勝利して優勝をしたいです」

 チャンスの匂いがする男の躍進はまだまだ始まったばかりだ。

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安藤隆人

あんどう・たかひと/岐阜県出身。大学卒業後、5年半の銀行員生活を経て、フリーサッカージャーナリストに。育成年代を大学1年から全国各地に足を伸ばして取材活動をスタートし、これまで本田圭佑、岡崎慎司、香川真司、南野拓実、中村敬斗など、往年の日本代表の中心メンバーを中学、高校時代から密着取材。著書は『走り続ける才能達 彼らと僕のサッカー人生』(実業之日本社)、早川史哉の半生を描いた『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、カタールW杯のドキュメンタリー『ドーハの歓喜』、新刊は『ともに歩き出す サッカーと家族と新しい日常』(ともに徳間書店)。講演家としても全国を回っている。

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