林陵平が解き明かす「森保監督の劇薬」 超攻撃的の裏に潜むリスク「機能不全になる」

林陵平が日本代表の3-1-4-2システムを解説【写真:FOOTBALL ZONE編集部】
林陵平が日本代表の3-1-4-2システムを解説【写真:FOOTBALL ZONE編集部】

【専門家の目|林陵平】スコットランド戦の3-1-4-2システムを解説

 北中米ワールドカップ(W杯)を目前に控え、森保ジャパンがテストした新たな選択肢。3月に行われたイギリス遠征のスコットランド戦、こう着状態を打開すべくメンバーを入れ替えて後半から登場したのが、超攻撃的な布陣「3-1-4-2」。現役時代から「戦術マニア」として知られ、現在は解説者として独自の視点を展開する元Jリーガーの林陵平氏が、この新システムが持つ「光と影」、そしてピッチ上で起きていた守備の混乱をロジックで解き明かした。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部)

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 イギリス遠征は「収穫しかなかった」と振り返る林氏。特に注目したのは、スコットランド戦の後半に見せたシステム変更だ。この一戦、前半はFW後藤啓介やMF鈴木唯人、MF佐野航大らフレッシュな顔ぶれだったが、11人に設定された交代枠を存分に使って、ハーフタイムにMF三笘薫ら3人を投入。後半17分からはFW上田綺世、MF伊東純也、MF堂安律、MF中村敬斗の4人を入れて、攻撃陣を一新した。さらに後半33分からはMF鎌田大地とFW塩貝健人が途中出場。鎌田をアンカーに配置し、塩貝を上田との2トップにした「3-1-4-2」攻撃型布陣に挑戦した。林氏は冷静にその意図を分析した。

「森保監督がやるのは、同点の時などに2トップにして、前線のボックス内に人数を多くかけるイメージ。ただ、理解しておいてほしいのは、3-1-4-2は元々、使うとしたら守備的な形でもあるんです。構造的に90分間で見ると、真ん中をしっかり固めて2トップで起点を作ってカウンター、という戦い方のシステム。ただ、スコットランド戦のように敵陣に入った時、いつもの3-4-2-1だと前線は3枚ですが、3-1-4-2だと4枚(2トップ+2人のインサイドハーフ)がボックス内へ侵入できる。伊東純也選手のゴールシーンも、2トップが相手センターバックを押し下げたことでマイナスが空き、5〜6人がボックス内に入っていました。まさに『人数をかけて点を取る』ための形ですね」

 一方で、この“劇薬”には小さくないリスクも潜んでいる。林氏が警鐘を鳴らすのは、ビルドアップの局面だ。

「負けている時や、どうしても勝たなきゃいけない時のオプションだと思います。なぜなら、ビルドアップを考えた時に3バック+1ボランチ(アンカー)になる。スコットランド戦は鎌田選手がスーパーなプレーで展開していましたが、相手にここを消されたら一気に機能不全になります。そうなると外回しのパスばかりになり、結局ロングボールを蹴らされる。そこで競り負けたらボールを回収できず、ずっと攻められる展開が続く。安易に『前に人数がいるから攻撃的』とは言えないシステムなんです」

 さらに、試合後にFW上田綺世らが口にしていた「守備がはまらなくなった」という違和感。林氏はこの現象を構造的な視点から“ロジック”で解説した。

「なぜ守備がはまらなくなったのか。3-4-2-1の時は、1トップがどこを見て、シャドーがどこに出て……というタスクがはっきり決まっています。それが3-1-4-2になると、2トップの一角となった上田選手からすれば『俺はボランチを捕まえるのか、センターバックに行くのか』とタスクが変わってしまう。サイドでも、ウイングバックが出るのかインサイドハーフが捕まえに行くのか、一人でも一瞬迷えばハイプレスはかかりません。これが理由です」

 リスクを承知でこの布陣を試し、結果的にゴールを奪った森保監督の采配を「勝負師」だと大絶賛。ただW杯本番での運用には念入りな準備が必要だと締めくくった。

「本番でやるなら、守備の整理は必須。そうしないと後手になって押し込まれ、攻撃に出られなくなる。アンカーも、攻撃力を考えれば鎌田選手ですが、本来の役割ではないので佐野海舟選手も適任。中村敬斗選手がシャドーに入ってバランスが良くなったように、システムによって全員のタスクが変わることを理解しないといけない。今の日本のベストは、イングランド戦のような戦い方だと思いますが、この新システムは本当に1点が欲しい時の『切り札』としての役割になるはずです」

 新たな武器になるか。林氏が説くのは構造上のメリットとデメリット。W杯ではこの飛び道具を出す必要がないような“完勝”の展開を狙いたい。

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