昨年2軍→強豪校10番「俺しかいないと」 J争奪戦の同僚を押しのけ…自信しかない理由

流通経済大柏の平野万緑【写真:安藤隆人】
流通経済大柏の平野万緑【写真:安藤隆人】

流通経済大柏の平野万緑「まずやるべきことはやり切った。次はプレミアで」

 4月4日に開幕した高円宮杯プレミアリーグと全国7地域のプリンスリーグ。ここではリーグ戦で躍動を見せた選手を紹介していきたい。今回はプレミアEAST第2節・流通経済大柏vs横浜FCユースから。開幕戦で前橋育英を相手に2発と好スタートを切った流通経済大柏の10番・MF平野万緑は、2ゴールに絡む活躍を見せて、2-0の勝利の立役者となった。平野にとって強豪校の10番を背負う意味をどう感じているのか。

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 10番を手渡されたのはプレミアEAST開幕戦の2週間前だった。榎本雅大監督から受け取ったとき、平野の表情は自信に満ちていたという。

「俺しかいないと思っていました。自分に責任を課すではないですが、今年はプロになるんだったら、10番という責任を背負ってやらないといけないという自覚があったし、純粋に『今年は俺がやってやる』という気持ちでした」

 心から欲していた背番号だった。もちろん技術レベルはチームのなかでもトップクラスで、前を向くプレー、ドリブル、パス、ワンタッチプレー、3人目の動きなど多彩な動きで攻撃のリズムを作ることができる選手で、10番にふさわしいのは間違いない。

 だが、平野は昨年までセカンドチームが主戦場だった選手だ。10番候補には昨年の主軸ですでにJ1、J2の複数クラブの争奪戦を繰り広げているMF古川蒼真もいた。それでも平野になったのは、昨年の1年間の入念な土台づくりが大きく影響をしていた。

「昨年のチームは本当に選手層が分厚くて、どこに出るにしてもライバルがいて、プレミアの壁を超えられなかった」

 プレミアEASTの出場は2試合でわずか22分にとどまった。ベスト4に入ったインターハイも2回戦の四日市中央工業戦でスタメン出場してハーフタイムに交代を告げられた35分間以外は出番が来なかった。同じ成績だった選手権も3回戦の大分鶴崎戦でスタメン出場し、1アシストをマークするが、このときもハーフタイムで交代。それ以降は出番が訪れなかった。

 しかし、その一方でセカンドチームが戦ったプリンスリーグ関東2部では絶対的な主軸として1年間プレーし続けた。負傷で欠場した2試合以外は全てのリーグ戦に出場をし、トップ下、サイドハーフなどをメインに攻撃の中枢として君臨。チームは2位でフィニッシュし、見事にプリンス関東1部昇格を手にした。

 セカンドでこれだけの結果を残せたのは、苦しみながらもきちんと自分と向き合ってマインドセットができたからだった。

「全国で結果を残せなかったのは悔しかったのですが、それはシンプルに僕の実力不足で、戦術理解度やプレー強度が他の選手と比べて足りなかったのは入学時から感じていました。これはすぐに改善されるわけではないので、流経柏の3年間をかけてしっかりと磨き上げようと思っていました。

 なので、普段の練習からとにかく球際で戦う、一瞬のスピードを攻守において出すことを強く意識しました。できないことに目を背けずに、闘うべきときは闘って、『小さくてもできるよ』というのを示したいと思ってやっていました。

 だからこそ昨年はセカンドでもプリンス関東2部を通じて力をつけていくしかない、ここで主力として1年間をやり切って、来年のために力をつけようと明確な意思を持ってプレーすることができた1年だったと思います。なので、昨年は『我慢の1年』というより、めちゃくちゃいい経験を積むことができた1年だったと思っています」

 トップで思うように出番を掴めないことに焦るのではなく、しっかりと足元を見つめて、プリンス関東2部という自分に与えられた場所で、常に全力でチームのために、自分の成長のためにプレーする。

 この積み重ねの先に、トップチームでの躍動があることを信じていたからこそ、セカンドチームで大輪を咲かせることができた。

「1部昇格に貢献できたという成功体験も僕にとって大きなプラスで、自分の心のなかで『まずやるべきことはやり切った。次はプレミアでやってやるぞ』という気持ちにさせてもらいました」

 だからこそ、10番を渡されても自信しかなかった。プレミアEASTで開幕スタメンを飾ると、第2節の横浜FCユース戦では開始早々の3分に、中央右寄りの位置で落ちながらパスを引き出すと、鮮やかなファーストタッチで前を向いて急加速でドリブルを開始。

 この時点で相手の2枚を振り切ると、「どこに運んで、どうすれば一番有効的で、相手が嫌がるのかを考えていました」と、周りの状況を把握しながらバイタルエリアまで持ち込んだ。

 そして、「シュートを打とうと思ったけど、警戒されていたので、左の古川が空くなと」判断した平野は、シュートを打つと見せかけて左ポケットに飛び込んできた古川へ絶妙なスルーパス。これを受けた古川のシュートは相手GKのファインセーブに合うが、こぼれ球をFW福田明史が押し込んで、先制点が生まれた。

 さらに同45分には福田の右突破からのマイナスの折り返しを中央で蹴り込んで、待望のプレミア初ゴールをマーク。前述した通り、勝利の立役者となった。

「(一昨年の10番の)柚木創(流通経済大)さんからは『頑張れよ』と声をかけてもらって、(昨年の10番の)安藤晃希(水戸ホーリーホック)くんからも『気負うなよ』と言われています。もちろん、僕はそのつもりなので、10番はエースということをしっかりと証明するために、得点やアシストにこだわってやっていきたいです」

 プレミア優勝候補の新10番はコツコツと積み重ねた流通経済大柏らしい強度をベースに、技術で魅せる――。

(安藤隆人 / Takahito Ando)



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安藤隆人

あんどう・たかひと/岐阜県出身。大学卒業後、5年半の銀行員生活を経て、フリーサッカージャーナリストに。育成年代を大学1年から全国各地に足を伸ばして取材活動をスタートし、これまで本田圭佑、岡崎慎司、香川真司、南野拓実、中村敬斗など、往年の日本代表の中心メンバーを中学、高校時代から密着取材。著書は『走り続ける才能達 彼らと僕のサッカー人生』(実業之日本社)、早川史哉の半生を描いた『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、カタールW杯のドキュメンタリー『ドーハの歓喜』、新刊は『ともに歩き出す サッカーと家族と新しい日常』(ともに徳間書店)。講演家としても全国を回っている。

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