日本代表には「近づきすぎない」 ”三者三様”の距離感…海外挑戦を支える仕事の核心

神原健太氏が見るザンクトパウリ日本人3選手
ザンクトパウリには今季、日本人選手が3人いる。日本代表MF藤田譲瑠チマ、そして冬に加入した安藤智哉と原大智だ。それぞれがまったく異なる経路でたどり着き、それぞれのやり方でチームへの馴染み方を模索している。ザンクトパウリのキットマネージャー兼プレイヤーケアマネージャーを務める神原健太氏は、その3人の傍らで、少し離れたところからその過程を見続けてきた。「三者三様なんで」と彼は言う。言葉が軽くならないのは、それを自身の目で見てきたからだろう。(取材・文=林遼平/全3回の2回目)
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今夏に加入した藤田との関わりで、神原が特に意識したことがあった。それは“距離感”だ。
「彼は英語で自らコミュニケーションを取れるとわかっていたので、不必要に僕の方からベタベタしないようにというのは心がけていました。僕がベタベタくっついてることによって、他の選手とのコミュニケーションを妨げてもよくない。彼は自分でしっかり入っていけるタイプだったので問題なかった。だから、チーム内で距離感を近づけすぎないようにしようかなと少しだけ考えてました」
ベルギーで2シーズン過ごし、英語を流暢に話す藤田にとって、ピッチ上のサポートはほとんど必要なかったという。神原が担ったのは、ハンブルクで生活していくための基盤づくり程度。アレクサンダー・プレッシン監督がミーティングも指示もほぼ英語で行うザンクトパウリの環境は、彼にとって大きな障壁にならなかった。
藤田は自らチームの輪に入っていった。日本人スタッフと必要以上に固まることもなく、他の外国人選手たちとも自然に関係を築いていった。その姿を神原は少し離れたところから見ていた。
「もともとシント=トロイデンには日本人選手がいっぱいいたじゃないですか。だから、ザンクトパウリに来た時に、外国人選手の中でもまれてみたいという思いがあったみたいなことを言っていました」
今では藤田も「先輩」だ。今冬に安藤と原が加入した際には、「最初の2週間、3週間はずっと藤田家でご飯食べたりしてましたよ」と神原は明かす。ピッチ上では他の外国人選手と話している姿が目立つが、ピッチ外ではちゃんと面倒見がいい。藤田のキャラクターがわかるエピソードだ。
一方で、冬に加入した安藤は、藤田とは対照的な状況から始まった。
「僕が手を出す範囲は明らかに安藤くんの方が幅広い」と笑う神原だが、表情はあたたかい。ミーティングや監督との会話には通訳として入り、安藤がサッカーに集中できる環境を整えることが、神原の仕事の大きな部分を占めるようになった。
最初は引っ込み思案に見えた。言葉が通じない場所で、他のセンターバックの選手からピッチ上でコミュニケーションを取ればいいんだ」という声が出るほど、距離感があった時期もあったという。
転機はライプツィヒ戦だった。初めてのスタメン出場で結果を残した後、チームメイトの見方が変わった。
「今ではみんな安藤くんのところに寄ってきて、めっちゃいじっている。デンジャーというあだ名がついてからは、みんな『デンジャー、デンジャー』って。今ではみんな安藤くんのことが大好きなんです」
シュツットガルト戦での活躍後には、怪我で出場できなかった選手が試合後に一目散に安藤のもとへ向かい、神原に「『今日はめちゃくちゃ良かった』と言ってくれ」と声をかけたという。神原はその場面を目に焼き付けている。言葉が多少通じなくても、プレーで示すことができれば、チームの中での居場所は自然と変わっていく。最近は安藤自身も変わってきたという。
「今は結構、積極的に自分から他の選手に英語で話そうとしたりしてます。時々とんでもない英語のメッセージを送ったりしてますけど(笑)」
通訳が必要な場面はまだ多いが、「言語の勉強もすごく頑張っている」という安藤は自分なりのやり方でチームに溶け込もうとしているようだ。
また、今冬の移籍市場、最も遅いタイミングで加入した原大智に関しては、まだ時間が必要だと神原は見ている。
「彼は英語を理解できますけど、もともと物静かなタイプなのか、あまりガツガツ行くようなタイプじゃないのかなという印象があります。タイチくんに関しては、まだ来て月日が経ってないですし、これからかなという感じがしています」
英語は理解できるが、話すのはまだ得意ではない。チームメイトとよく話す場面もまだ多くはない。だが神原は、藤田や安藤が経験したように、一つの結果が状況を大きく変えることを知っている。その時が来るまで、サポートをし続けていくのみだ。
ザンクトパウリという地で出会った新たな日本人選手たち。そのサポート役を担う神原だからこそ、3人との関係にはそれぞれ異なる感触を持っている。
「ジョエル君はもう半分お父さん感覚で見てるんですよ。安藤くんとはどちらかというと兄弟という感じな関係な気がします。タイチくんはまだそんなに日が浅いからまだわからないけど、暖かく見守ってます。本当に三者三様ですごく見ていて面白いなと思います。もちろん今後も必要なことがあれば手助けはしますけど、本当にチーム内でのことは基本的に遠めで見ています。みんな仲良くやってますし、そこは僕がいちいち介入していくことでもないのかなという風に思っています」
スタッフとして一線を引きながらも、人として関わり続ける。近付きすぎず、しかし離れすぎない——。その距離感をどう保つかが、この仕事の核心でもある。神原はその難しさと、この仕事を続けていく上での自分なりの哲学を、静かに、しかしはっきりと持っている。
(林 遼平 / Ryohei Hayashi)

林 遼平
はやし・りょうへい/1987年、埼玉県生まれ。東日本大震災を機に「あとで後悔するならやりたいことはやっておこう」と、憧れだったロンドンへ語学留学。2012年のロンドン五輪を現地で観戦したことで、よりスポーツの奥深さにハマることになった。帰国後、サッカー専門新聞『EL GOLAZO』の川崎フロンターレ、湘南ベルマーレ、東京ヴェルディ担当を歴任。現在はフリーランスとして『Number Web』や『GOAL』などに寄稿している。













