J1からオファーも「戻るなら神戸」 移籍決断で批判覚悟…目にした光景に「涙が止まりませんでした」

仙台を離れる際に行われた送別会について郷家友太が語った
今季、4年ぶりにヴィッセル神戸に戻ってきたプロ9年目のMF郷家友太。自力で掴み取った往復切符を自信に変えて、“リスタート”と位置付けて臨んでいる今、郷家は何を想い、何を感じながらプレーしているのか。インタビューで神戸への想い、仙台への想いを包み隠さず言葉に紡いでくれた――。(取材・文=安藤隆人/全4回の3回目)
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「J1のクラブからオファーが届いている」――。
代理人から聞いたそのクラブは神戸ではなかった。
「J2で3年間をやって、自分の年齢的にもJ1でやりたいという気持ちがありました。でも、正直残るか、行くか、かなり悩みました」
結論を出せないまま、仙台からの回答期限が近づいていた。そのタイミングでもう1つのJ1クラブからオファーが届いた。神戸からだった。
「悩んでいた理由は、仙台を昇格させたいという思いと、『J1に戻るならヴィッセル』という思いがあったからなんです。他のJ1クラブでプレーする姿が想像できなくて……。ヴィッセルから完全移籍でのオファーが来たと聞いたときは、もう一気に覚悟が固まりました」
昨年の12月25日。クリスマスの日に郷家の神戸への完全移籍が発表された。このニュースは多くの仙台サポーターに衝撃を与え、同時に神戸サポーターにとっても驚きの知らせだった。
「正直、ベガルタサポーターの皆さんの厳しい声は覚悟していました」
だが、蓋を開けてみると、そういう一部の声が聞こえる一方で、「頑張ってこいよ」「仙台に戻ってきてくれてありがとう」という温かい声をたくさんかけられた。
さらにはサポーターの中心部の有志が呼びかけて、クラブ公式とは別の盛大な送別会を開いてくれた。仙台市内の飲食店を貸し切って行われた送別会には、200人近いサポーターたちが集まり、郷家に対して力強いエールを送ってくれたという。
「ベガルタをJ1昇格させないまま出ていく選手として、かなり申し訳なさもあったんですけど、みんなと面と向かって会えて、本当に素晴らしい空間でした。当時、みんなが笑顔だったり、涙だったり、いろいろな愛情を僕に向けてくれた。
その会で小さい子がずっと泣きながら僕を抱きしめてくれたんです。ずっと抱きしめてくれて、本当に別れを悲しんでくれているのが心から伝わって……。最後は全員が僕のチャントを大合唱しながら横跳ねしてくれて、もう涙が止まりませんでした。あの光景は一生忘れません」
全員から「胸張って行ってこい」と背中を押してもらった。主催をしてくれたサポーターの中心部の有志たちからも、「ベガルタがJ1に上がって対戦するときはブーイングするけど、それはもちろん愛のあるブーイングだからね」と言葉をかけられた。
本気で仙台に来て、全身全霊でプレーをしてきて本当に良かった。覚悟の決断が紡いだ地元での3年間は、郷家にとってとてつもなく大きな財産となり、サポーターにとっても記憶に刻まれた時間となった。そして、仙台に行ったときのような不退転の覚悟を持って、神戸の地に再び降り立った。
2度目の神戸かもしれない。だが、郷家にとっては新たなチャレンジの始まりであり、絶対に掴み取らないといけないものがある場所にたどり着いたに過ぎない。本当の勝負はここからだと自覚している。
神戸での背番号は5。当初は14番をつける予定だったが、クラブから「山口蛍のように長く神戸でやってほしい」というメッセージとともに5番を託された。
大きな期待を背中に感じながら、キャンプから目の色を変えてサッカーに打ち込んだ。昨年までのサンフレッチェ広島の試合を見てミヒャエル・スキッベ新監督のサッカーを予習し、チームに何を求めているのか、自分に何が求められているのかを考え、練習でその意図を読み取って自分の力をアジャストすることに努めた。
さらにFW大迫勇也、武藤嘉紀、DF酒井高徳、同い年のFW佐々木大樹と前回在籍時でチームメイトだった選手たちが、さらに経験を重ねてとてつもないパワーを発揮していることも大きな刺激となり、郷家の闘争心により火をつけていった。
迎えたJ1百年構想リーグ。開幕戦で4-1-2-3の右インサイドハーフとしてスタメン出場を果たした。
「最初の何試合かは走り出すタイミングだったり、周りと連携しながらの動き出しだったりのタイミングが掴めなくて苦戦したのですが、徐々にアジャストできるようになって、質の高いランニングも増えてきた」と口にするように、実戦を重ねるごとに持ち前のハードワークと、バイタルエリアやポケットへ侵入していくスプリント、コンビネーションで切り崩していく流動的なプレーが効力を発揮し始めた。ACLEを含め、スタメンの座をガッチリと掴み取り、躍動を見せている。
着実に前に進む郷家にとって、「神戸に戻ってきたんだなと思わせてくれる」という試合前と勝利後の「神戸讃歌」を聞くことで自分をさらに奮起させてくれるという。
(安藤隆人 / Takahito Ando)
安藤隆人
あんどう・たかひと/岐阜県出身。大学卒業後、5年半の銀行員生活を経て、フリーサッカージャーナリストに。育成年代を大学1年から全国各地に足を伸ばして取材活動をスタートし、これまで本田圭佑、岡崎慎司、香川真司、南野拓実、中村敬斗など、往年の日本代表の中心メンバーを中学、高校時代から密着取材。著書は『走り続ける才能達 彼らと僕のサッカー人生』(実業之日本社)、早川史哉の半生を描いた『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、カタールW杯のドキュメンタリー『ドーハの歓喜』(共に徳間書店)、など15作を数える。名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクターも兼任。



















