191cmルーキー、壁に挑む日々「ぶち当たってる」 トップ昇格も…苦悩の3か月と現在地

FC東京のFW尾谷ディヴァインチネドゥ「通用する部分も出てきたかもしれないけど」
今シーズン、FC東京U-18から昇格したルーキー、FW尾谷ディヴァインチネドゥが稀有なポテンシャルを少しずつ解き放っている。身長191cm・体重86kgのサイズを武器にする18歳の規格外ストライカーは、試合終了間際に惜しい一撃を放った5日のFC町田ゼルビア戦を含めた百年構想リーグだけでなくFC東京の日々のトレーニングでも悪戦苦闘しながら、味わうすべてを成長への糧に変えている。(取材・文=藤江直人)
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幼いころから憧れてきたFC東京のトップチームに昇格し、Jリーガーになって3カ月。身長191cm・体重86kgの巨躯を誇る18歳のホープ、尾谷ディヴァインチネドゥは「壁にぶち当たっている」と打ち明ける。
前半戦の第9節までを終えて折り返したJ1百年構想リーグに対する壁だけではない。実際、尾谷は百年構想リーグですべて後半途中からの出場で計3試合、トータルのプレータイムもまだ47分間にとどまっている。
ナイジェリア人の父と日本人の母の間に生まれ、西東京市で育ったストライカーの悩みの種は、実は日々のトレーニングが行われる東京都小平市のFC東京小平グラウンドにある。尾谷はこう続けている。
「プロになって3か月がたちましたけど、U-18時代とは相手にするセンターバックのレベルがまったく違う。U-18のときにできていたプレーが、トップチームに昇格してからはまったくできなくなった。実際、トレーニングではほとんどボールを奪われている。少しは通用する部分も出てきたかもしれないけど、自分が目指しているところにいくためには、そうしたセンターバックの選手たちに勝たなければいけないと思っています」
FC東京U-18時代から、自身の特徴やストロングポイントとして「フィジカルの強さを生かしたボールキープ」をあげてきた。しかし、百年構想リーグの9試合で総失点7と、鹿島アントラーズの6に次いで少ない、東京の堅守を支えるCB陣には太刀打ちできない。尾谷はさらにこんな言葉もつけ加えた。
「トップチームの選手たち、特にセンターバック陣はリーグ全体でも本当にレベル高い選手ばかりだし、そういう選手に勝てれば『試合の方が楽だ』という気持ちになれると思うので、練習からもっと頑張っていきたい」
もがき苦しむ日々で、189cm・84kgのサイズを駆使した強さと足元のうまさ、駆け引きの巧みさを兼ね備えたデンマーク出身のDFアレクサンダー・ショルツは大きな壁と化すとともに尾谷の師匠にもなった。
「ショルツは練習から、英語でずっとアドバイスしてくれる。立ち位置や体の向きといった細かいところまでいろいろと教えてくれて、それらを練習に生かし続けてきたなかで、ちょっとはよくなったのかな、と」
公式戦のピッチに立ってプレーする時間は、あるときには激しいプレーを介して尾谷を鍛え、またあるときには身振り手振りで成長を導いてくれたFC東京の先輩選手たちへ恩を返していく舞台にもなる。
たとえば、5日の地域リーグラウンドEASTグループ第9節。ホームの味の素スタジアムにFC町田ゼルビアを迎えた一戦で、尾谷は0-0で迎えた後半18分から遠藤渓太に代わって途中出場。プロになって3戦目でそれまでの最長だった11分間を大きく更新する、27分間のプレータイムを与えられた。
そして均衡が破られないまま迎えた同44分に、敵味方に関係なくスタジアムがどよめく場面が訪れた。
右サイドバックの室屋成が送った縦パスが相手に当たり、コースを変えて弾んだ敵陣の右タッチライン際。ボールを拾った尾谷がファーストタッチで、間合いを詰めてきた町田のMF前寛之の股間をまず抜いた。
そのまま進む軌道を内側へ変えて、大きなストライドを駆使した豪快なドリブルでどんどんゴール正面へと迫っていく。ピンチを察知したDF岡村大八が、右側から必死に仕掛けてきたスライディングタックルも間に合わない。ペナルティーエリアのわずかに外から、背番号55は利き足とは逆の左足を思い切り振り抜いた。
ポストの左側をわずかにかすめた強烈な一撃は、出場3試合目で初めて放ったシュートでもあった。
「(佐藤)龍之介やテルくん(仲川輝人)が走ってくれたおかげで、コースが空いたのも見えていたので」
左足を迷わずに一閃するまでの過程で周囲に助けられたからこそ、尾谷は唇をかみしめた。
「自分の特徴である推進力だけでなく、右利きですけど左足でも蹴れる、という武器はこのJ1という舞台でも通用すると思っていたんですけど。途中出場したなかで、ああいった数少ないチャンス決め切れる選手になっていかないと、自分が目指しているところにはいけないと改めて思いました」
後半終了間際のアディショナルタイム5分には、町田のMF林幸多郎が十八番とするロングスローをゴール中央で尾谷が頭で弾き返し、その流れでMFナ・サンホが逆サイドから放ったクロスも再び頭でクリアした。
チームを、そして自身を鼓舞するように雄叫びをあげた尾谷は、実はこんな言葉を残している。
「プロの選手たちはセットプレーの練習でもみんな大声を出している。そこで自分が黙ってやっていると浮いちゃうような雰囲気も出ていたので、あの場面では自分が一番大きな声を出して、もう一段階、意識を上げよう、と。自分は途中交代だったので、周りに声をかけるところもそうでしたし、やはり身長もあるのでああいうボールを弾き返さないと試合に出ている意味がない。そこも自分の強みなので磨いていけたらと思っています」
尾谷の2度目のクリアとともに0-0で終わった一戦は、PK戦の末に2-4で先蹴りのFC東京が苦杯をなめた。1番手のショルツ、3番手の高宇洋のPKが町田のGK谷晃生にセーブされ、町田が4人連続で決めて勝利の雄叫びをあげた展開で、8番手でスタンバイしていた尾谷に出番は回ってこなかった。
「監督からは『背後と守備』という指示を受けていました。守備では相手に保持される時間が多かったので、もっと自分が相手の最終ラインにプレスをかければ、もうちょっとチームとして楽になったと思う」
反省点をあげた尾谷が何度も口にした「自分が目指す場所」とは、FC東京のエースストライカーであり、来年のFIFA・U-20ワールドカップ、そして2年後のロサンゼルス五輪、さらに海外で躍動する自身の姿となる。
2種登録選手として出場したサンフレッチェ広島とのYBCルヴァンカップのプレーオフで、豪快なヘディング弾を決めて日本サッカー界を驚かせてからまもなく2年。幼いころは元スウェーデン代表のズラタン・イブラヒモビッチに影響を受け、いまではノルウェー代表のFWアーリング・ハーランドに憧れだと公言する尾谷は、毎日のように味わうすべての刺激を成長への糧に変えながら規格外のストライカーたちの背中を追っていく。

藤江直人
ふじえ・なおと/1964年、東京都渋谷区生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後に産経新聞社に入社。サンケイスポーツでJリーグ発足前後のサッカー、バルセロナ及びアトランタ両夏季五輪特派員、米ニューヨーク駐在員、角川書店と共同編集で出版されたスポーツ雑誌「Sports Yeah!」編集部勤務などを経て07年からフリーに転身。サッカーを中心に幅広くスポーツの取材を行っている。サッカーのワールドカップは22年のカタール大会を含めて4大会を取材した。












