日本代表の新たな“黄金のカルテット” 伝説の4人と比較…カメラを通して見た高揚感

日本代表を支えた新旧黄金カルテット【写真:徳原隆元】
日本代表を支えた新旧黄金カルテット【写真:徳原隆元】

三笘薫、中村敬斗、伊東純也、堂安律…新たな黄金の4人と呼ぶに相応しい

“黄金のカルテット”。おそらく多くのオールドファンがこのキーワードを聞けば、1982年イタリア・ワールドカップ(W杯)を戦った、ブラジル代表を思い浮かべるのではないだろうか。この比類なきサッカーの美的表現を追求したセレソン(ブラジル代表の愛称)は、特に才能豊かな選手が中盤に揃い、圧倒的な技術を秘めた彼らは黄金の4人と称された。(文=徳原隆元)

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 その4人の中心的な存在だったのが、のちに日本サッカーの発展に大きく貢献することになるジーコだった。そして、ジーコが抱き続けていた華麗なテクニックを駆使した、個を核とする美しきサッカーへの探求は、現役生活に別れを告げても終わることはなかった。

 2022年10月16日、日本代表の監督に就任したジーコは初采配を揮う試合のピッチに、中田英寿、中村俊輔、小野伸二、稲本潤一の4人を送り出す。2002年6月に行われた日韓W杯では、ジーコの前任者であるフランス人のフィリップ・トルシエが攻守のバランスを考慮して導き出した現実路線によって実現させなかった、日出ずる国から出現した黄金の4人をブラジル人の指揮官は満を持して投入したのだった。

 日本の中盤を形成した4人は奇しくも20年のときを経て、栄光のブラジルサッカーの歴史にあって、傑作のひとつとして人々の記憶に刻まれている伝説の1982年のメンバーとプレースタイルが合致した。

 両チームでキャプテンを務めた中田とソクラテスは、精神的支柱としてチームを牽引する役目を担っていた。ゲームメイクを担当する中村とジーコはともにエースナンバー10を背負い、さらにフリーキックのスペシャリストとしての共通点も持ち合わせていた。

 ゲームの流れを巧みに読み展開力に優れた小野は、ブラジル的テクニックと欧州的体力を兼ね備えたオールラウンダーのパウロ・ロベルト・ファルカンと類似した。華やかな3人を後方から支えるファイター稲本は、ボランチのトニーニョ・セレーゾと重ね合わせることができた。チームが勝利するうえでの重要なファクターを、才能ある中盤の4人に託すスタイルの実現に躍進の期待が高まった。

 しかし、そんな期待とは裏腹にジーコを先導者とした日本は、2006年ドイツW杯ではグループリーグで敗退してしまう。中盤にスター選手を同時起用するスタイルも確固たる形を作れずに終わる。その冒険主義的なサッカーへの試みは失敗した。それでも、世界を相手に個人技術を武器に戦うジーコのドラスティックな挑戦は、日本がさらなるステージへと向かうには、どんなスタイルが最良なのかを考えさせる教訓となった。

 そして、ドイツW杯から20年の歳月が過ぎた現在。日本は北中米W杯に臨むメンバーを決定するための最終テストをスコットランドとイングランドで行った。日本はこのイギリス遠征でスコットランドに続き強豪イングランドも撃破する。

 歴史的な勝利を飾った日本だが、ゴール裏からカメラのファインダーを通して試合を見ていて、結果以上に心に響いたことがあった。それはジーコ監督時代の中田をはじめとした屈指のタレントたちが同時起用されたときと同じ高揚感を、イングランド戦に先発した中盤の4選手に覚えたからだ。その名うての選手は三笘薫、中村敬斗、伊東純也、堂安律の4人。強豪相手にも一歩も引かず自信に満ちた彼らのプレーは、新たな黄金の4人と呼ぶに相応しい活躍ぶりだった。

 この時代を超えた黄金の4人を比較してみると、ジーコが起用した中田たちはそれぞれがプレーに特徴を持ち役割も異なっていた。だが、現代サッカーで中盤を構成するシャドーとウイングバックの選手には一様にして、前線からの守備を実行できるタフさと、攻撃の際には相手守備網の陣形が整う前に、ゴールゲットまでの一連の流れを完結させるスピードあるプレーが必至の能力となっている。

 そのため選手それぞれの個性という部分では、ジーコ時代の4人のほうが光彩を放っていたが、新たな黄金の4人には戦術への対応力と、状況に応じて発揮するダイナミックな個人技を持ち合わせているのが特徴だ。

 攻撃面での戦術的な動きで言えばイングランド戦での4人は、配置された自らのサイドにおけるシャドーとウイングバックの位置を入れ替えるだけでなく、左右を横断するポジションチェンジを行い、敵のハードマークをチームワークで交わすクレーバーさを見せた。

 対して個人技術に注目すれば、イングランドのハードマークによって戦術的な動きが手詰まりとなってしまっても、ボールのベクトルを後ろ向きにするようなことはしなかった。1対1の場面では相手のプレッシャーに怯むことなく果敢に勝負を挑み、チャンスと見れば一気に相手の牙城を攻め落としにかかる攻撃はスリリングな香りに満ちていた。まさに現代サッカーに適応した黄金の4人だ。

 ただ、北中米W杯に向けての最終テストとなったこの2試合には、本来ならメンバー入りをしている選手が怪我のため招集を見送られている。イギリス遠征のメンバーに加わらなかった選手が戻ってくることになれば、イングランド戦でチームを牽引した攻撃的ミッドフィルダーの4人も決してレギュラーポジションは安泰ではない。W杯本大会では違う構成の黄金の4人になっているかもしれない。

 サムライブルーは昨年からブラジル、イングランドの強豪国に勝利し、かつてないほどW杯本大会での活躍が期待されている。世界最高峰の大会で成功のカギを握っているのは、歴代の日本代表を紐解いても屈指のタレントが揃う、中盤の黄金の4人であることは間違いない。

(徳原隆元 / Takamoto Tokuhara)



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徳原隆元

とくはら・たかもと/1970年東京生まれ。22歳の時からブラジルサッカーを取材。現在も日本国内、海外で“サッカーのある場面”を撮影している。好きな選手はミッシェル・プラティニとパウロ・ロベルト・ファルカン。1980年代の単純にサッカーの上手い選手が当たり前のようにピッチで輝けた時代のサッカーが今も好き。日本スポーツプレス協会、国際スポーツプレス協会会員。

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