難敵揃った“死の組”をシミュレーション イングランド戦がヒント…森保Jの武器がハマる試合

スウェーデンが欧州プレーオフを勝ち上がった
北中米W杯まで2か月半。イギリス遠征でスコットランド、イングランドに勝利し、大きな手応えを掴んだ日本代表だが、F組はオランダ、チュニジア、さらに欧州プレーオフを勝ち上がったスウェーデンが入り、12グループある今大会でも屈指のハイレベルな戦いが予想される。
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日本はイングランド戦で前半にカウンターから三笘薫(ブライトン)の得点で、効率よくリードを奪い、その後も相手にボールを握られながらも冷静に対応。そして良い形でボールを奪えば鋭いカウンターを繰り出して、イングランドのゴールを脅かした。終盤は2人の大型センターバックを投入したイングランドのパワープレーに多少、厳しい場面を作られたが、GK鈴木彩艶(パルマ)のセービングも含めて、90分間の集中を切らさなかったことが、聖地ウェンブリーでの劇的ではない勝利の要因だが、それには根拠がある。
中盤から攻撃の組み立てとゲームコントロールを担った鎌田大地(クリスタル・パレス)は「いい意味で、変に相手をリスペクトしたりは間違いなく無くなってきてるので。もっとこれを当たり前にしないといけないし、もっとフィフティ・フィフティに戦えるようにしていかないといけない」と語った。さらにポゼッションからの攻撃時間を増やしたり、守時間を減らせれば理想だが、カタールでのドイツ戦やスペイン戦、昨年10月のブラジル戦に見られた逆襲型の勝利も価値が高いが、イングランド戦のような勝ち方は決勝まで最大8試合を戦い抜く本大会を見据えても大きい。
グループリーグではまさしくオランダとの初戦が、イングランド戦に近いプランが求めらる試合になりそうだ。ロナルド・クーマン監督が率いるオランダは現在FIFAランキング7位。優勝候補ではあるが、イングランドやフランス、スペイン、前回王者アルゼンチンと言った本命グループの次に位置付けられる。ただし、ポゼッション能力は非常に高く、攻守のバランスも安定している。世界最高峰のセンターバックの一人にあげられるフィルジル・ファン・ダイク(リバプール)が構えており、欧州予選8試合4失点という守備の固さは納得だ。
そのオランダに対して、日本はカタール大会のドイツ戦やスペイン戦より、ベースの力が接近した戦いになると予想されるが、ポゼッションやシュート数で互角以上に持っていくことは難しい。見方を変えれば、そうした数字で上回ることに固執せず、イングランド戦のようにタイトな守備で危険なスペースを与えないようにしながら、2シャドーやウイングバックの推進力を生かした仕掛けとコンビネーションで仕留めたい。
オランダは3月の活動で注目国のノルウェーに2−1で逆転勝ちを飾ったが、失点は左のワイドからアンドレアス・シェルデルップの右足で巻くシュートが、ゴールの反対側に決まる形だった。やはり中央に構えるファン・ダイクとステファン・デ・フライ(インテル・ミラノ)を完全に破ることは難しいが、彼らから少し外れた両脇に三笘や伊東純也(ゲンク)、あるいは久保建英(レアル・ソシエダ)などが侵入できれば、大きな得点チャンスに繋がる可能性は高そうだ。1トップの上田綺世(フェイエノールト)は自身のゴールチャンスを虎視眈々と狙いながらも、ゴール前に周りのシュートコースを空ける形が重要になる。
一方で、やはり守備局面で最も警戒したいのがセットプレーだ。もちろんコビー・ガクポ(リバプール)やドニエル・マレン(ローマ)の繰り出す仕掛けは要注意だが、日本が3バックにウイングバック、ボランチを加えた守備を集中力高く維持できれば、そうそう崩されることはないだろう。しかし、オランダはノルウェー戦でもCKからトゥーン・コープマイネルスの左足キックにファン・ダイクがヘッドで合わせる形から同点ゴールを奪った。
イングランド戦の最大のテーマにセットプレーを挙げた谷口は「みんなで体を張りながら、しっかりゴールに鍵をかけるという仕事はできた」と手応えを口にしたが、オランダは特にセットプレーが強い国として認識している。W杯全体を見ても、固い試合になりがちな初戦はセットプレーの得点、失点が勝敗を分けることが多い。もちろん日本側がデザインされた形で見事にオランダのゴールをこじ開けられれば理想的だが、最低でも相手に得点させないということは大事になる。
スコットランド戦が生きるチュニジア戦
オランダ戦で結果にもよるが、2戦目のチュニジアというのは意識高く臨んでいるつもりでも、どこかに隙が生じやすい。森保監督のプランにもよるが、初戦から大なり小なりスタメンを入れ替える必要も考えられる中で、前回コスタリカ戦の二の舞だけは避けたいところだ。その意味で、スコットランド戦で後藤啓介(シント=トロイデン)、佐野航大(NECナイメヘン)、鈴木唯人(フライブルク)らA代表では比較的フレッシュな選手がスタメンを張り、後半に決勝点を奪った伊東や鎌田、三笘、上田などが攻撃のギアを上げて仕留めた経験が生きてくる。無論、そうした試合でも前半にリードを奪えればいいが、どちらにしても本大会の中で最も選手層が問われる試合になるだろう。
AFCON(アフリカ・ネーションズ・カップ)の敗退後、チュニジアの命運を託された元フランス代表MFのサブリ・ラムーシ監督は戦略的なリーダーとして知られる。2014年のブラジルW杯ではコートジボワールを率いて、後半にエースのディディエ・ドログバを投入す策がはまり、日本に逆転勝利している。FIFAランクは44位とF組で最も低いが、良い意味で”弱者の戦い”ができることはフランスに1−0で勝利した前回のカタール大会で証明済み。そこにラムーシ監督のプランがどう注入されるか。
3月の代表活動ではアメリカ大陸遠征を行い、カリブ海のハイチに1−0で勝利。立ち上がりにMFイスマエル・ガルビ(アウクスブルク)のアシストから左ウイングのセバスティアン・トゥネクティ(セルティック)が決めてリードを奪い、優位に試合を押し切った。開催国のカナダとはスコアレスドローだったが、カナダの鋭いサイドアタックからスピードのあるFW陣に手堅く対応するディフェンスはAFCONであまり見られなかった。日本もそう簡単に最初のゴールを決められないことは想定して準備したい。会場はメキシコのモンテレイで、遅い時間帯のキックオフと暑さも影響しそうだが、事前キャンプで現地の気候を経験しておけることは大きい。
3戦目のスウェーデンは欧州予選で低迷したが、その前に行われたネーションズ・リーグの成績で拾われて、プレーオフに回った。しかし、昨年10月からイングランド人のグレアム・ポッター監督が率いるチームは準決勝でウクライナ、決勝でポーランドと難敵を破って2大会ぶりに、本大会切符を勝ち取った。長年チームの攻撃を引っ張ったズラタン・イブラヒモビッチのようなカリスマはいないが、明晰な指揮官のもとタレント力を発揮している。
ウクライナ戦でハットトリックを達成したビクトル・ギョケレシュ(アーセナル)はポーランド戦でも劇的な決勝点を叩き出して、新エースとしての存在を高めた。その一方で点取り屋として非凡な才能を持つアレクサンダー・イサク(リバプール)は怪我で3月シリーズを欠場しており、彼が最終メンバーにどう組み込まれるかは日本としても気になるところだ。ただし、サイドの仕掛け人であるアンソニー・エランガ(ニューカッスル)、万能型アタッカーのベンジャミン・ニグレン(セルティック)など、アタッカーの質量はオランダに引けを取らない。オランダ戦よりは日本もボールを持つ側になれる流れも想定される中で、一発の怖さというのはオランダ戦以上に注意が必要かもしれない。
下馬評ではオランダが本命、日本は逆転可能な対抗という位置付けるになるが、相手を対策する側に回りやすいチュニジア、個のポテンシャルは侮れないスウェーデンと特徴的なチームが揃っており、どこが勝ち抜けてもおかしくはない。オランダと日本が初戦で当たることも、このグループの読みにくさを増長している。今回は3
位の上位も決勝トーナメントに進めるが、初戦の結果が大きく影響することに変わりはない。
(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)

河治良幸
かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。
















