前後半に注射、痛み止め6錠…苦悩の1年「ハゲたりも」 30歳の若さで決断した現役引退

インタビューに応じた深井一希【写真:工藤慶大】
インタビューに応じた深井一希【写真:工藤慶大】

深井一希「痛みに麻痺しすぎて、自分の限界がどこかわからないくらいまで」

 北海道コンサドーレ札幌のMF深井一希は、昨シーズン限りで13年間のプロ生活に終止符を打った。今年からは札幌U-18のコーチに就任し、指導者としての第一歩を踏み出した“不屈の漢”。度重なる膝の大怪我との戦いだったキャリアをインタビューで振り返る。第1回は、苦しかった最後の1年について。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・工藤慶大/全5回の1回目)

【PR】ABEMA de DAZN、2/6開幕『明治安田Jリーグ百年構想リーグ』全試合生配信!毎節厳選6試合は無料!

   ◇   ◇   ◇

「いやあ、しんどかったですね」

 2024シーズンを終えた深井の膝は、すでに限界を超えていた。「もうサッカーできる状態ではなかった」と本人が言うほどだったが、2025年は札幌にとっても変化の1年でもあった。岩政大樹監督や新スタッフが就任し、彼らから「なんとかやらせてあげたいという強い思いをすごく感じました」と振り返る。

「そこで新しい治療だったりというのをしたわけではないですけど、そういった人たちの期待に応えたいというような、そういう気持ちが少し膝の状態を良くしたのかわからないですけど。良くなってキャンプの途中からできるようになって、藤枝、大宮戦に一回出られて、そこからまた痛みが強くなりました」

 昨年4月20日に行われたホームでの藤枝MYFC戦、後半37分から197日ぶりに出場。岩政監督が試合後、フラッシュインタビューで涙を堪えたのが印象的な一戦だった。さらに4月25日には、アウェーでのRB大宮アルディージャ戦に後半14分から出場したが、試合後には「負けたのは自分のせい」との言葉を残した。

「0-0で途中から出て、そこから負けたら自分の責任だと、どんな試合でも思っています。そういった気持ちをやっぱり一人一人が持ってやらないと、勝てる試合も勝てない。そういったところはまだ、このチームには足りていないのではないかなと思いました」

 選手として出場できる時間も、もう長くはない。そう感じながら、深井はピッチでは背中で示し続けた。しかし、この試合から再び長期離脱。「どちらかと言うと、最後は自分のためにという感じで戦いましたけど。本当にしんどかったですね」。激しい痛みで日々のトレーニングすらままならなくなっていた。

「なんて言うでんすかね。骨をトンカチみたいなものでひたすら叩かれているような痛みが、走るたびにあったりしました。あとはその限界を超えたら、もう本当に膝が動かなくなるというか、もう足が動かなくなるような感覚があって、それは本当に厳しかったですね」

 2024シーズン終盤から始まった痛みは、これまで何度も大怪我を乗り越えてきた深井にとっても、初めての経験だった。「今まではやることをやれば、しっかり復帰して戻れました。ただ、今回の痛みは何をやっても良くならなかったですし、原因がわからなかったのが一番しんどかったですね」と打ち明ける。

 そのなかで、9月に現役引退を決断。「もう耐えられなかったですね。だから、練習できない状態が長く続いて。プラスして、どうやったら良くなるかもわからないしというので、もう相当に悩んで、ハゲたりもしました」。メンタル的にも限界を迎えており、30歳という年齢でピッチを去る決断を下したのだ。

「(痛み止めの注射を)前半に打って、ハーフタイムに打って、とか。普通じゃないと思うんですけど。痛み止めを6錠も飲んだりとかしてやっていましたからね。もうその痛みに麻痺しすぎて、自分の限界がどこかわからないくらいまで行っちゃっていました」

 11月29日にホームで行われる愛媛FC戦で引退セレモニーが行われることも決まったが、当日のピッチに立つのは厳しい状況に思えた。しかし、最後の力を振り絞ってピッチに復帰すると、11月2日にはアウェーでのジェフユナイテッド千葉戦で後半32分から出場。奇跡的にホーム最終戦の先発出場に漕ぎつけた。

 そして迎えた引退試合、約3年ぶりにスタメンに名を連ねると、キャプテンマークを巻いて後半13分までプレー。両チームの選手たちが花道を作り、“不屈の漢”を労った。苦しんだ痛みからついに解放され、清々しい表情でセカンドキャリアを踏み出した深井。唯一無二の経験を、次の世代へとつないでいく。

page1 page2

今、あなたにオススメ

トレンド

ランキング