まさかのBチームに敗戦「取り返しのつかないことに」 逸材GKが味わった“屈辱的な試合”

帝京長岡の仲七璃【写真:安藤隆人】
帝京長岡の仲七璃【写真:安藤隆人】

帝京長岡のGK仲七璃

 4月の第一週から始まる高円宮杯プレミアリーグ、プリンスリーグ。開幕に向けて各チームは着々と準備を進めている。ここでは開幕に向けて気持ちを昂らせている選手たちを紹介していきたい。

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 今回は船橋招待U-18サッカー大会に出場した帝京長岡のGK仲七璃について。U-17日本高校選抜にも選ばれた183cmの守護神は、この大会で『屈辱的な試合』を経験した。

「勝ったとしても失点したり、最初良かったとしても最後に落ちてしまったりなど、今年のチームの悪いところの全てが煮詰まったようなゲームでした」

 船橋招待2日目の最終試合となった静岡学園との一戦。この試合ほぼフルメンバーで挑んだ帝京長岡に対し、静岡学園は午前中の試合でトップを出した影響によってBチームで臨んできた。

 絶対に勝たなければならないと、立ち上がりから帝京長岡は前線からのハイプレスを駆使して押し込むと、幸先よく2点を奪って試合を優位に進めた。

 しかし、前半のうちに1点を返されると、後半は状況が一変。静岡学園の個の技術と次々と選手が湧き出てくる攻撃にスイッチが入り、止められない状態に陥り、左CKを直接沈められるゴールを含め、一挙3失点を浴びて3-4の逆転負けを喫した。

「失点したら一気に空気が悪くなってしまう。マイナスな雰囲気が出た時に全てが相手より後手に回ってしまっているのが現状なんです。後半失点もワンテンポ速く寄せていたり、立ち位置の修正ができれば防げていた。左CKもいつもなら僕やDFが立ち位置の調整の声かけとか、何がなんでも弾くようにネジを巻いていたのですが、マイナスの雰囲気に飲まれてしまっていたことで、僕も含めそこに対しての声かけやケアができていなかった。そこで立て直して、もう1点奪って突き放せるような力強さがこのチームには足りないし、僕も力不足。これで目を覚まさないと、これから始まるリーグ戦でもっと痛い目に合うと思うので、ここで全員が奮起しないといけないと思っています」

 危機感がヒシヒシと伝わってきた。取材は試合が終わってから30分以上経ってから行われた。その理由は試合後にキャプテンのMF和食陽向と副キャプテンの仲を中心に選手だけでの話し合いが行われ、全員が自主的にダッシュを何本も繰り返したからだった。

「もうここで目を覚まさないと、本当に取り返しのつかないことになります。言い方は悪いかも知れませんが、相手がBチームだったにも関わらずこの負け方は屈辱的ですし、もう言い訳無用の僕らの弱さそのものだと思います。ここで変わらないといけない。変わるきっかけにしないといけないし、この試合は絶対に忘れてはいけないんです」

 仲には和食と共に1年生の時からトップチームで出場してきた経験と責任がある。一昨年はプレミアリーグWESTで8試合に出場し、昨年は同リーグで21試合に出場。ベスト8だったインターハイと選手権にも守護神として出場してきた。

 ずば抜けた身体能力を持ち、バネを生かしたハイボールの処理と、スピードを生かしたDFラインの背後の守備のうまさ、そして安定したセービングとGKとしての総合力が非常に高い。今年は絶対的な守護神として、もっと存在感を放っていかないといけないのに、この結果を招いたことは彼にとっても受け入れがたいが、目を背けてはいけない現実だった。

「高校選抜で感じたのは、一人一人のベースの部分はもちろん高いのですが、勝っている状況でも、負けている状況でもやることは絶対ブレないこと。その理由は『ゴールを決めたい』、『ゴールを守りたい』という原点ともいえる気持ちを選手個々が持っているからこそ、ブレない。それを学んできたはずなのに、僕はまだまだ『つもり』でした」

 試合後のミーティングでは「このままでいいのか?EASTはこんな甘くないぞ」、「分かっているか?今年はWESTじゃない、EASTなんだ。こんなの許してくれないぞ」という声が仲を始め、多くの選手から挙がっていた。

 帝京長岡は一昨年にプレミアリーグに初昇格をしてからWESTに所属をしていたが、今年は参加チームの地域分布バランスの関係で、初めてEASTに所属することになった。EASTには昨年プレミアファイナルを含む3冠を達成した鹿島アントラーズユース、圧倒的なパワーを持つ流通経済大柏高を始めとした関東勢や青森山田もいる。

「もちろんWESTもレベルが高いのですが、EASTは個人の能力が高い。一つ一つの際の部分が激しくて、個人としても組織としてもやるべきことがしっかりしている。WESTでは勢いで勝ち切れるという試合も結構あったのですけど、EASTは勢いだけではどうにもならないような相手がいっぱいいる。だからこそ、チームとして逆境を跳ね返す力が絶対に必要なんです。全員が意識を高めないといけないし、僕は最後の砦だからこそ、フィールドの選手が飲まれてしまった時に、僕まで飲まれてしまったら今日のようになる。人一倍責任感と自覚を持ってやっていかなければいけないと思っています」

 4月5日のプレミアEAST開幕戦の横浜FCユース戦に向けて。絶対的な守護神は威風堂々とゴールマウスの前に立つべく、この屈辱的な試合を大事な『原点』に変えていく。

(安藤隆人 / Takahito Ando)



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安藤隆人

あんどう・たかひと/岐阜県出身。大学卒業後、5年半の銀行員生活を経て、フリーサッカージャーナリストに。育成年代を大学1年から全国各地に足を伸ばして取材活動をスタートし、これまで本田圭佑、岡崎慎司、香川真司、南野拓実、中村敬斗など、往年の日本代表の中心メンバーを中学、高校時代から密着取材。著書は『走り続ける才能達 彼らと僕のサッカー人生』(実業之日本社)、早川史哉の半生を描いた『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、カタールW杯のドキュメンタリー『ドーハの歓喜』(共に徳間書店)、など15作を数える。名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクターも兼任。

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