名勝負が刻まれてきた聖地「楽しみたい」 31年前の記憶…9万人の前で問われる“真価”

森保監督は選手として31年前にウェンブリーを経験した
収容人数9万人。そびえ立つ象徴的なアーチの下に広がるのは、フットボールの神が宿るとされる「聖地」ウェンブリーだ。1966年W杯決勝の伝説から、近年のチャンピオンズリーグ決勝まで。芝の一本一本に歴史が染み付いたこの場所は、単なるスタジアムではない。数々の名勝負が刻まれてきた場所であり、フットボールを愛する者なら誰もが一度は立ちたいと夢見る場所である。そんな夢舞台に、今回、日本代表が乗り込むことになる。
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日本代表がウェンブリーでスリーライオンズ(イングランド代表の愛称)と対峙するのは、1995年のアンブロ・カップ以来、実に31年ぶりのこと。ピッチに立つ選手たちの中にその時の記憶を持つ者はいないが、ただ一人だけ例外がいる。森保一監督だ。当時、日本代表の選手としてベンチに名を連ねていた指揮官は、30年の時を経て、今度は監督としてこの聖地に戻ってくることになった。選手としては出場機会こそなかったが、あの空気を知っている。だからこそ、その経験を踏まえて自身の思いを口にした。
「明日、選手たちには思い切ってウェンブリーでプレーできることを、厳しさ含め楽しんでほしい。私は95年の戦いの時にはベンチにいて、試合を見ていたサブの選手でしたけど、このピッチで試合ができる。明日、監督として勝利を目指しながらウェンブリーで戦えることを楽しみたい」
今回の一戦は、一般販売直後にチケットがソールドアウト。9万人を飲み込むスタンドには、5000〜6000人の日本人サポーターが結集する見込みだ。それでも9万人近い観衆の大多数はイングランドファンであり、日本にとっては圧倒的なアウェイの洗礼を受けることになる。スコットランド戦のハムデン・パークも大きな歓声に包まれていたが、ウェンブリーはそれを大きく上回る規模と言っていい。フットボールの母国が誇る聖地の熱狂は、選手たちのメンタルにも少なからず影響を与えるだろう。
その雰囲気を誰よりも肌で知っているのが鎌田大地だ。クリスタル・パレスでウェンブリーでの戦いを経験している。昨季のFA杯決勝でマンチェスター・シティに勝利するなど、ウェンブリーではこれまで3戦3勝。鎌田は「クラブでの試合の方が雰囲気はいい。代表はまた違った雰囲気になると思う」と語りつつも、「いつも通りプレーできると思う」と落ち着いた様子を見せた。ウェンブリーを知る男の言葉は、チームにとって心強い道標になるはずだ。
一方、守護神の鈴木彩艶も大観衆の中での戦い方を明確にイメージしている。
「声が通らないのはよくあること。雰囲気や相手の勢いに飲まれないことが大事」
スコットランド戦の後半に失点しなかったことを引き合いに出しながら「自分たちのやり方で相手に勢いをつけさせないことが重要」と続けた。アウェイの洗礼を正面から受け止めながら、いかに自分たちのリズムを保つか。守護神の言葉には、チームとして共有すべき覚悟が込められていた。
スコットランド戦で1-0の勝利を収め、波に乗る日本代表。イングランドはデクラン・ライスやブカヨ・サカら主力が離脱しているとはいえ、ハリー・ケインを擁する強豪であることに変わりはない。ブラジルやドイツ、スペインを破ってきた日本が、大アウェイのウェンブリーでも結果を示すことができれば、W杯本番に向けたいいイメージを積み上げることができるはずだ。
31年前、森保監督がベンチから見つめたウェンブリー。その聖地で今度は自らが采配を振るう。9万人の大観衆を前に、日本代表は何を示すことができるか。フットボールの聖地が、その答えを待っている。
(林 遼平 / Ryohei Hayashi)

林 遼平
はやし・りょうへい/1987年、埼玉県生まれ。東日本大震災を機に「あとで後悔するならやりたいことはやっておこう」と、憧れだったロンドンへ語学留学。2012年のロンドン五輪を現地で観戦したことで、よりスポーツの奥深さにハマることになった。帰国後、サッカー専門新聞『EL GOLAZO』の川崎フロンターレ、湘南ベルマーレ、東京ヴェルディ担当を歴任。現在はフリーランスとして『Number Web』や『GOAL』などに寄稿している。


















