日本代表も驚く「すごい選手」 失意の夜を救った”助け船”…ブンデスで成長を遂げる21歳

長田澪はザンクトパウリ戦で失点につながるミスを犯した
ミスを犯した夜、長田澪の心は沈んでいた。ただ、仲間の言葉に、コーチの映像に、周りの人たちの励ましに救われて心を震わせた。あれから4試合後、ブンデスリーガ第27節・ヴォルフスブルク戦で、21歳のGKはビッグセーブを連発し、敵地での勝利に歓喜の咆哮をあげた。「今日チームを助けられたのはものすごく嬉しい」——。その言葉の重さは、あの夜を知る者にしかわからない。(取材・文=林遼平)
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試合終了のホイッスルが鳴った瞬間、長田澪は感情を爆発させた。「勝つって素晴らしいこと。中毒になっちゃうくらい嬉しい」。敵地での勝利に、21歳のGKは心の底から喜びを噛み締めていた。
遡ること5試合前、長田は苦い経験を味わっていた。ブンデスリーガ第23節・ザンクトパウリ戦。残留争いの直接対決で、長田は試合を決定づけてしまうミスを犯して失点に関与した。「ミスだけではなくて、試合の出来自体も、ものすごく満足できないものだった」と振り返るほど、屈辱的な90分。1-2で敗れ、ブレーメンとしては、リーグ戦も未勝利が「13」に伸び、残留に黄色信号が灯り始めた。
失意の試合後、長田を支えたのは仲間たちだった。
「もちろん、あのミスはネガティブなことだったんですけど、ロッカールームに入ったら、みんなが来てくれて『そんなこともあるよ』みたいに声をかけてくれて、すごく助けてくれたんです」
バスに乗って携帯を開けば、何十人もの人間からの励ましが届いていた。日々、様々な言葉をかわすGKコーチは、すぐに自分のいいシーンをまとめた映像を用意してくれた。「ダメな時にもこうやって助け船を出してくれる人がたくさんいるんだなって。このクラブに愛されてるんだな、と。うるってきちゃいましたね、正直」。逆境の中で、長田は一人ではなかった。
その経験が、第27節・ヴォルフスブルク戦での長田を支えた。前半は我慢の時間帯が続いたが、訪れるピンチをことごとく長田がビッグセーブ。前半のアディショナルタイムには鋭いクロスボールからの強烈なシュートを超反応で防ぎ、最後まで崩れることなくスコアレスでハーフタイムを迎えた。
「そういう時に崩れないで、チームとして抑えられたのが勝因の一つ」と長田は言う。後半は「ゆき君(菅原由勢)がビルドアップの時に下がってきて、違うスペースの使い方ができた」とチームがアジャストしたことで流れが変わり、長田自身も前半同様にビッグセーブを連発したことで、最終的にチームは大きな勝ち点3を手にした。5試合前に味わった苦い記憶があるからこそ、「今日チームを助けられたのはものすごく嬉しい」と話す表情からは笑顔が溢れた。
そんな頼もしい後輩の姿を、誰よりも近くで見ていた選手がいる。ロッカーも、バスの席も隣の菅原由勢だ。
「こんなに頼もしい後輩になるとは思っていなかった。彼が試合を作って、彼が試合を締めて。本当にすごい選手ですね。ザンクトパウリ戦の苦い経験からの立ち直り方、メンタルの持っていき方、トレーニングへの向き合い方、本当にプロフェッショナルだった。後輩ですけど、すごく勉強になります」
先輩にそう言わせる21歳は、逆境を乗り越えて、また一回り大きくなった。

林 遼平
はやし・りょうへい/1987年、埼玉県生まれ。東日本大震災を機に「あとで後悔するならやりたいことはやっておこう」と、憧れだったロンドンへ語学留学。2012年のロンドン五輪を現地で観戦したことで、よりスポーツの奥深さにハマることになった。帰国後、サッカー専門新聞『EL GOLAZO』の川崎フロンターレ、湘南ベルマーレ、東京ヴェルディ担当を歴任。現在はフリーランスとして『Number Web』や『GOAL』などに寄稿している。


















