先輩から試合中に「遅い」「入らない」 ハッとした指摘…鹿島新人が掴んだ“気づき”

鹿島の林晴己【写真:アフロ】
鹿島の林晴己【写真:アフロ】

鹿島の林晴己「健斗くんや遼太郎くんなどから『ゴールが見えてからじゃ遅いよ』と」

 やってきた大きなチャンスをモノにできなかった。それはサッカーだけではなく、何事にもよくあることだ。だが、大事なのはその現実よりも、「なぜモノにできなかったのか」を考えることで大きな気づきを得て、それが飛躍へのきっかけになることもある。

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 J1百年構想リーグ第8節の鹿島アントラーズvsジェフユナイテッド千葉の一戦で、大卒ルーキーのMF林晴己はまさにそこに気がついた。

 高川学園高校時代は10番でチームの攻撃を牽引し、“トルメンタ”のフィニッシャーとして高校最後の選手権を沸かせ、明治大学ではフォワード、サイドハーフとしてスピードに乗ったドリブル突破とシュートのうまさを駆使して、エースとして君臨。3年時には関東大学サッカーリーグ1部で史上初の無敗優勝を果たすなど、期待のサイドアタッカーとして鳴り物入りで鹿島にやってきた。

 開幕戦でベンンチ入りを果たすと、後半18分にMFエウベルに代わって投入されプロデビューを飾り、そこから第7節の町田ゼルビア戦まで全試合途中出場をしている。千葉戦でも後半20分にエウベルに代わって投入され、右サイドハーフに入った。

 後半34分に左サイドハーフに移ると、直後の39分にビッグチャンスがやってきた。最終ラインのボール回しから、右サイドのDF濃野公人が中央にサポートに来たMF柴崎岳へ横パスを入れる。

 このとき、林は相手の右センターバックの斜め横に立ち、背後を開けていた。柴崎がボールを受けて中に体を向けて顔を上げると、林と目があった。

「絶対にパスが来ると思った」と、オフサイドにならないように相手ラインを確認してから、空けておいた背後のスペースに飛び出すと、そこに柴崎から右足の浮き球のロングパスが届いた。

「ヘッドで折り返しか、胸トラップからシュート、ダイレクトシュートを考えたのですが、状況的に胸トラップして内側に持っていったらチャンスがあると思った」

 ボールの軌道と相手センターバック2枚の立ち位置を読み取って、少し内側に入ってボールを完璧な胸トラップで足元に置くと、「シュートコースが完全に見えた」とすかさず右足シュートを放った。しかし、シュートに反応してスライディングブロックをしてきた千葉DF鈴木大輔の伸ばした右足先に当たってゴール左外へと外れていった。

 これで得た左コーナーキックからDF植田直通の決勝ヘッドが生まれ、2-1の勝利につなげることはできたが、プロ初ゴール、初アシストはお預けとなった。

「あのシーンで僕がまだどのタイミングで足を振ったのかまでは映像を見直さないと分からないのですが、個人的には足を振るタイミングが遅かったのかなと思います。この後しっかりと振り返らないといけないと思っています」

 このシーンについて試合中、試合後にチームメイトから鋭い指摘が入ったという。

「(三竿)健斗くんや(荒木)遼太郎くんなどから『ゴールが見えてからじゃ遅いよ』と言われました。特に『無心で打つくらいじゃないと入らないよ』と言われたときはハッとしました。『来た』と思った時点で少しだけ遅れてしまっている。無意識で体が動くようにならないといけないし、練習あるのみだと思いました」

 林にとってあのワンシーンは、“ただ惜しいだけ”のワンシーンではなく、大きなヒントを得る1つのターニングポイントになるかもしれない。そう伝えると、真っ直ぐにこちらに目を向けてこう口にした。

「そうだと思いますし、そうしないといけないと思います。プロに入って感じたことは、いいプレーができただけでは、生き残っていけない世界だということ。いいプレーして満足するのは高校、大学まで。プロは結果を残す選手でないといけないし、途中から出たとしても、自分が入ったときに相手から『厄介なのが来たな』と思われる選手にならないといけない。

 じゃあ、そういう印象付けが相手にできているかと言われたら、まだ結果も何も残してないですし、インパクトが足りていない。ゴール前で足を止めない、ゴールアプローチのバリエーションや積極的なシュートなど、いかに普段の練習で成功体験を積み重ねられるかが自信や感覚につながって、そのシチュエーションになったら無意識に体が動くようになる。だからこそ、練習からいかにリアリティーを持って取り組んで、そういったシーンを作り出すことができるか。よりこだわりを持って取り組んでいきたいと思います」

 徹底して反復練習をして、シチュエーションワークを体に、脳に染み込ませる。凡事徹底の精神を持って、林は掴んだ気づきを大切に今後の飛躍につなげていく。

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安藤隆人

あんどう・たかひと/岐阜県出身。大学卒業後、5年半の銀行員生活を経て、フリーサッカージャーナリストに。育成年代を大学1年から全国各地に足を伸ばして取材活動をスタートし、これまで本田圭佑、岡崎慎司、香川真司、南野拓実、中村敬斗など、往年の日本代表の中心メンバーを中学、高校時代から密着取材。著書は『走り続ける才能達 彼らと僕のサッカー人生』(実業之日本社)、早川史哉の半生を描いた『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、カタールW杯のドキュメンタリー『ドーハの歓喜』(共に徳間書店)、など15作を数える。名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクターも兼任。

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