名助っ人から「大きな影響」 地球の裏側へ届け…ポーズに込めた想い「人として尊敬」

清水の北川航也【写真:徳原隆元】
清水の北川航也【写真:徳原隆元】

清水の北川航也が語るドウグラス「彼がいたからこそ自分がここまでやれている」

 清水エスパルスの右ウイング、副キャプテンのFW北川航也が懐かしのゴールパフォーマンスを披露した。3月22日のサンフレッチェ広島との百年構想リーグで勝負を決める3点目を決めた直後に、かつて清水で大活躍したブラジル人ストライカー、ドウグラスが十八番としたポーズの封印を解いた理由に迫った。(取材・文=藤江直人)

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 地球の裏側へ届け。感謝の思いを込めて、清水の北川は右手の人さし指と中指とで“Vの字”を作って右目に挟み込むように当てて、さらに左手を伸ばしながら人さし指を天へと突きあげた。

 清水のファン・サポータ―には懐かしいポーズ。2018年7月から1シーズン半所属し、公式戦で51試合に出場して26ゴールをあげたブラジル人ストライカー、ドウグラスのゴールパフォーマンスが再現された。

 ホームのIAIスタジアム日本平に広島を迎えた、22日のJ1百年構想リーグ地域リーグラウンドWESTグループ第8節の後半21分。カウンターからリードを3点差に広げ、勝利を揺るぎないものにするゴールを決めた直後に北川が見せて演じたポーズには大きな意味が込められていた。

「自分に大きな影響を与えてくれた選手の一人で、人としても尊敬できた彼がいたからこそ自分がここまでやれている。そういったリスペクトの気持ちや、彼のサッカー人生は終わってしまいましたけど、これからの人生も頑張ってほしい、という思いを込めたポーズですし、今シーズンいっぱいはこれを続けようと思っています」

 清水の他にもこの日の対戦相手の広島、さらにヴィッセル神戸や柏レイソル、徳島ヴォルティス、そして京都サンガF.C.と計6チームでプレー。リーグ戦とYBCルヴァンカップ、天皇杯の288試合に出場して計102ゴールをあげたドウグラスは、柏を退団した翌年の2024年2月に36歳での現役引退を発表した。

 ドウグラスと2トップを組んだ北川は、2018シーズンに現時点でキャリアハイの13ゴールをマーク。森保ジャパン入りを引き寄せ、翌2019年7月のラピード・ウィーン(オーストリア)移籍につなげた。

 当時から北川は9歳年上のドウグラスへ畏敬の念を抱いてきた。だからこそ、清水へ復帰して3年目の2024シーズンから背負ってきた「23番」を、今シーズンからたっての希望でドウグラスが愛した「49番」に変更。ホームで初めて決めたゴールの直後にポーズの封印も解いた。北川はさらにこんな言葉も紡いでいる。

「自分に影響を与えてくれた選手の引退を聞くのはやはり寂しいけど、だからこそ彼の分も頑張らなければいけない。自分たちはそういったリスペクトの気持ちをもって、常にプレーしなければいけない」

 神戸で一時代を築いた吉田孝行監督が新たに指揮を執る今シーズン。昨シーズンまでは3-4-2-1がメインだったシステムは神戸と同じ4-1-2-3へシフト。FC町田ゼルビアから期限付き移籍で復帰したFWオ・セフンがターゲットマンとして最前線に君臨し、北川のポジションも真ん中から右ウイングへ移った。

 ほとんど経験のないポジションでプレーしながら、北川は自身のストロングポイントを実感している。

「1トップのときは、相手のペナルティーエリア内で前向きにボールを受ける場面が少なかった。いまは前向きにボールを受けて、そこから右足でも左足でも仕掛けられるのが自分の強みだとあらためて思っている」

 ゴールの場面は相手のゴールキックをMFマテウス・ブエノが頭でカット。ボールを受けた左ウイングのMFカピシャーバがカウンターを発動させ、グラウンダーのクロスをオ・セフンがゴール中央でフリック。広島守備陣を混乱させた直後に、右サイドを詰めてきた北川が右足でのワンタッチシュートをしっかりと決めた。

「前から限定して、攻撃につなげていく。これまでトライしていた形が出たいいシーンだったと思う」

 吉田体制での取り組みが出たゴールだったと胸を張った北川は、先制点をもぎ取った前半19分の場面でも相手ペナルティーエリア内で存在感を放った。右サイドから中へ切れ込んで左足による強烈なシュートを2連発。ともに日本代表GK大迫敬介に阻まれたこぼれ球を、左サイドバックのDF吉田豊が豪快に蹴り込んだ。

 大迫のビッグセーブに「ちょっと(コースが)内側すぎたかな」と天を仰ぎ、苦笑した北川は右ウイングとしてこれまで全8試合に先発し、672分のプレータイムで2点を決めている百年構想リーグをこう振り返った。

「試合を重ねていくなかで膨らんできた『いける』という気持ちを含めた自信や、もっと点を取りたい、もっともっと上にいきたい、といった欲のようなものが自分を動かしてくれていると思っています」

 2シーズンにわたって務めてきたキャプテンを、今シーズンからは22歳のMF宇野禅斗が務めている。自らは副キャプテンとして宇野を支える側に回ったが、試合へ臨むうえでの心構えは何ひとつ変わっていない。

 たとえば広島戦で何度も見せた激しいプレスバック。あるいはボールを失った直後に猛然とMF川辺駿との間合いを詰め、即時奪回に成功した前半28分の攻防に、北川は「もう感覚ですね」と無意識を強調した。

「やばいと思ったら戻らなければいけないし、いけると思ったら前に出ていくだけなので。それをやらないと試合に出られないし、あまり考えずに、自分の感覚的なところでおそらく体現していると思います」

 キャプテンだから特別に何かをしたわけではないし、副キャプテンとしてどうこう、という意識もない。チームの勝利のために、常に全身全霊でプレーする。広島戦後にはさらにこんな言葉も残している。

「相手の攻撃陣に個の力がある選手がそろっているからこそ、誰一人としてサボってはいけない。他のみんなが頑張っているなかで、自分だけが免除されるはずもない。全員がしっかりと体現したうえで初めて結果がついてくるので、そういったプレーはマストでやらなければいけないと思っています」

 苦戦を続けながらも、5度を数えたPK戦で確実に勝ち点を確保。そのなかで5試合ぶりに手にした2度目の90分間での勝利で、清水は首位の京都に勝ち点わずか1ポイント差の4位に浮上した。北川が続ける。

「優勝するとか、あるいは上位にいくのであればホームで絶対に取らなければいけない一戦でした。そのなかでしっかりと勝てたのは選手たちにとっても、チームにとっても非常に大きな自信になったと思う」

 前線からの激しいプレスとショートカウンター。吉田監督のカラーが鮮明に反映され、上昇気流に乗りつつある清水の中心で、百年構想リーグ後の7月には30歳になる北川が代役の効かない存在感を放っている。

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藤江直人

ふじえ・なおと/1964年、東京都渋谷区生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後に産経新聞社に入社。サンケイスポーツでJリーグ発足前後のサッカー、バルセロナ及びアトランタ両夏季五輪特派員、米ニューヨーク駐在員、角川書店と共同編集で出版されたスポーツ雑誌「Sports Yeah!」編集部勤務などを経て07年からフリーに転身。サッカーを中心に幅広くスポーツの取材を行っている。サッカーのワールドカップは22年のカタール大会を含めて4大会を取材した。

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