日本戦でミス…ニュース番組報道「何百回」 闘莉王が感じた王国の“大事件”「凄まじかった」

インタビューに応じた闘莉王氏【写真:荒川祐史】
インタビューに応じた闘莉王氏【写真:荒川祐史】

昨年10月、日本代表に敗れた“大事件”

 2019年の引退から7年、かつての闘将は今もなおサッカーに情熱を注ぐ。元日本代表DF田中マルクス闘莉王氏は後輩の奮闘を追う。2025年10月14日、森保一監督率いる日本代表が世界を震撼させた。北中米ワールドカップ(W杯)を翌年に控えた親善試合で、森保ジャパンはブラジル代表を3-2で撃破。闘莉王氏も歴史的な逆転勝利に大興奮した。「FOOTBALL ZONE」の独占インタビューでは、母国で観戦していた当時を回顧。現地では連日報道された“大事件”について語った。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・小杉舞/全4回の2回目)

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 ブラジルの自宅で、画面を凝視した。2025年10月、味の素スタジアムで行われた日本代表とブラジル代表の一戦。前半を終えて0-2。誰もが「やはり王国は高い壁か」と感じたはずの展開だった。しかし、後半に待っていたのは、日本サッカー史に残る怒涛の反撃。闘莉王氏も「いやあ、凄かった……。大興奮しました」と口を開いた。

「後半の日本の集中力、そしてブラジルの隙を見逃さない姿勢。3-2で逆転した瞬間、僕も思わず声が出ましたから。カタールW杯の時もそうだったけど、後半に発揮する力は世界をあっと言わせる。北中米W杯で後半に別チームになると警戒されても大丈夫。それぐらい力を付けている。まあ……そのあとのブラジル国内の空気は凄まじかったです……」

 日本は前半、ブラジルの高い個人技と連係に苦しんだ。前半26分にDFパウロ・エンリケに先制点を許すと、前半32分にはFWガブリエウ・マルティネッリに追加点を奪われ、0-2でハーフタイムに。しかし後半、日本が猛然と反撃を開始。後半7分にMF南野拓実が敵陣でのボールカットから1点を返すと、同17分にはMF中村敬斗がボレーシュートを決めて同点。そして後半26分、コーナーキックからFW上田綺世がヘディングで叩き込み、ついに試合をひっくり返した。

 ブラジルが2点リードから逆転負けを喫したのは実に1952年に行われたヘルシンキ・オリンピックの西ドイツ代表戦以来73年ぶりだった。日本は14度目の対戦で歴史的な初勝利。試合直後から、ブラジルの主要メディアはこの「大事件」を一斉に報じた。単なる親善試合の敗戦ではない。事実は、ブラジル国民のプライドを無残に切り裂いた。

ブラジル代表が痛感した「優勝を目指すとはまだ言えない」

「報道の熱量はものすごかった。特にやり玉に挙げられたのが、後半の失点に絡んだ守備陣。2失点に関与したブルーノ・ファブリシオ(クルゼイロ)のミスシーンはニュース番組で何十回、何百回と繰り返し流された。解説者が寄ってたかって『もうブラジル代表には二度と選ばれないんじゃないか』と毎日のように言われていた」

 その後、11月シリーズで再招集されたブルーノ・ファブリシオ。だが、当時は「もうおしまいだ、と言われていて……。ブラジル代表はそれぐらいの重みがある」。セレソンは近年、深い苦悩の中にあった。2022年カタールW杯ではクロアチアにPK戦の末に敗れ、2大会連続で準々決勝敗退。2002年の日韓W杯を最後に優勝から遠ざかり、直近5大会ではベスト8止まりが4度、ベスト4が1度。ブラジル代表はサポーターとの距離がかつてないほど広がり、ピッチ上の選手たちも闘莉王氏の目から見て「自信を失っていた」という。

 だが、閉塞感を打破したのが、2025年にレアル・マドリードを離れて就任したカルロ・アンチェロッティ監督。ブラジル代表を指揮する初の外国人監督の招聘は、まさに王国再建の切り札だった。

「アンチェロッティ監督が来てから、ブラジル代表とサポーターの距離が近付いていた。でもそれだけじゃダメだということを日本代表が気付かせてくれた。W杯優勝を目指すとはまだ言えない。ブラジルにはそういう空気が流れていましたね」

 ただ、それは日本代表も同じ。W杯優勝を目標に掲げながら、ブラジル代表への勝利を手放しに喜ぶだけではなかった。地に足をつけ、前半の2失点に危機感を持ち、本大会での1勝を目指すビジョンを掲げた。「自信にはなっても過信になっていないのが伝わる。でも、僕は本当に嬉しかったですよ、こんな日が来るなんて。僕はもう喜んで喜んで喜びまくりました(笑)」。王国の地に住む闘莉王氏にとっても、2025年10月のあの一戦は、日本サッカーの新たな扉が開いたことを確信させる“事件”となっていた。

(第3回に続く)

(FOOTBALL ZONE編集部・小杉 舞 / Mai Kosugi)



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