闘莉王がブラジルで学校設立 灼熱の教室、劣悪環境に使命感…引退7年で父と共闘「毎日が戦い」

インタビューに応じた闘莉王氏【写真:荒川祐史】
インタビューに応じた闘莉王氏【写真:荒川祐史】

田中マルクス闘莉王がブラジルで送る生活とは

 2019年の引退から7年、かつての闘将が今、母国ブラジルで驚くべき変貌を遂げている。元日本代表DF田中マルクス闘莉王氏がピッチで見せた魂の咆哮は、広大な大地と次世代の教育、ビジネスの現場へと向けられていた。「FOOTBALL ZONE」の独占インタビューでは、ブラジルでの多忙極まる日常や、北中米ワールドカップ(W杯)に臨む日本代表などについて語った。第1回は情熱を注ぐ新たな“勝負”について。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・小杉舞/全4回の1回目)

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 ブラジルの空の下、闘莉王氏の日常に“休息”の2文字はない。現在の肩書きを並べれば、バイタリティーに驚く。元サッカー日本代表として現役選手を引退し、母国に渡って約7年。実業家としての新しい顔では、ホテルのオーナー、レストラン経営、牧場の運営、学校の設立者……。かつてDFラインを統率した男は今、巨大なビジネスの現場を統率している。

「とにかく毎日が戦いですよ。朝、子供たちを学校へ送り届けたら、そのままどこかの現場に直行する。従業員と膝を突き合わせて話をして、仕事の進捗や現状を自分の目でしっかりチェックする。時には現場に泊まり込むこともあります。午後になればまた別の現場へ移動して、例えば牧場の牛たちの状態を見たり、競走馬の成長具合を確認したりも……。もう自分がどこにいるのかも分からないぐらい動き回っていますね」

 振り返れば、闘莉王氏の現役生活は常に“戦い”だった。2001年にサンフレッチェ広島でプロキャリアをスタート。水戸ホーリーホックを経て、浦和レッズでは2006年のJ1制覇、2007年のAFCチャンピオンズリーグ(ACL)優勝の立役者となった。名古屋グランパスでも2010年にクラブ史上初のリーグ優勝に貢献し、日本代表としては同年の南アフリカW杯で屈強な海外勢を完封。ベスト16進出という歴史を刻んだ。

 Jリーグ屈指の点取り屋DFとしても知られ、DF登録ながら通算100得点を超える金字塔を打ち立てた。2019年、京都サンガF.C.で惜しまれつつユニフォームを脱ぎ、選んだ道は尊敬する父を追う茨の道だった。

 父方の祖父母は日系移民で、父のパウロ・リュウジ・タナカさんは日系ブラジル人2世。闘莉王氏が「頭が上がらない」と話すパワフルな父は、地元の公立学校で数学、化学の教師をしながらイタリアンレストランを経営してきた。さらに、40歳で大学法学部に合格し、弁護士資格を取得した努力の人。だからこそ、父と「二人三脚でやってきた」とビジネスの道を志した。

設計士の父と新たな計画を実行「子供達の夢をサポート」

 数ある事業の中で、使命感を抱いたのが昨年完成した学校の設立。きっかけは、ブラジルの教育現場が直面している厳しい現実を目の当たりにしたことだった。

「子供たちが通う学校の中には、環境が本当に厳しいところがある。クーラーもない、風通しも悪い、地面は雨が降ればぐちゃぐちゃで……。そんな環境では、いくら教育を受けようとしても子供たちは集中できない。僕が貢献できていなかったのが『教育』という部分で、設計士の顔も持つ父と協力してやってきました。やっと昨年完成して、ようやく第一歩を踏み出したかな、と」

 理想の学び舎の名は「CEIA」。親子二人三脚でスタートしたプロジェクトだ。故郷パルメイラ・ド・オエシチの広大な土地に勉強だけでなく、スポーツも存分に楽しめる小中高一貫の私立校を開校。生徒は計700人以上、教師は40人以上が在籍している。

「父と一緒に、ああでもないこうでもないと議論を重ねて、ようやく形にできました。理事長だとか、校長だとかではなくて、ただの設立者です(笑)。教育の現場は、現場で高い経験値を持つ人たちに任せた方がいい。僕は子供達の夢をサポートできたらいい」

 あまりに多角的な活動ゆえに、思わぬ悩みもある。警察の検問や空港でのパスポートコントロールで職業を問われると「正直、分からなくて……説明すると長くなってしまうので、やっぱり元サッカー選手と答えます。それぐらいビジネスの世界に進んでも、サッカーは切り離せないし、自分にとってかけがえのない存在なので」。引退から約7年。歩みは着実に、力強く実を結ぶ。現役時代さながらの“泥臭さ”で現場を這いずり回った。

「サッカーでもチームをまとめるために修正とコミュニケーションが必要。ビジネスでもその姿勢を大事にして、スタッフとたくさん話しています」

 次なる目標を描き、プラン遂行のために足を運び、肌で感じる。徹底した“現場主義”が、地元に深く根付いた要因だ。かつての闘将が次に仕掛ける一手は何なのか。ブラジルでの「第2の人生」は、ピッチの上と同等にドラマチックで、情熱に満ち溢れていた。

(第2回に続く)

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■田中マルクス闘莉王、公式YouTube「闘莉王TV」にて3月シリーズ日本代表戦の解説が決定!
・スコットランド代表戦(日本時間3月29日 午前2時キックオフ)
・イングランド代表戦(日本時間4月1日 午前3時45分キックオフ)

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