1年後に気付いた恩師の言葉「何で泣いてるん?」 選抜選出も…抱いた危機感「上の世界に行けない」
2月25日に開幕したデンソーカップチャレンジ刈谷大会(通称・デンチャレ)。関東A選抜、関東B選抜、関西選抜、北海道選抜、U-20全日本学生選抜、U-18日本高校選抜に加え、プレーオフを制した東海選抜、プレーオフ参加チームの中から選出されたプレーオフ選抜の6チームが2グループに分かれ、上位1位が決勝に進み、優勝が3月1日に決まる。

流通経済大MF柚木創「僕に言い続けていた意味がわかりました」
2月25日に開幕したデンソーカップチャレンジ刈谷大会(通称・デンチャレ)。関東A選抜、関東B選抜、関西選抜、北海道選抜、U-20全日本学生選抜、U-18日本高校選抜に加え、プレーオフを制した東海選抜、プレーオフ参加チームの中から選出されたプレーオフ選抜の6チームが2グループに分かれ、上位1位が決勝に進み、優勝が3月1日に決まる。
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ここではデンチャレ本戦で目に留まった選手の物語を紹介していく。今回は関東B選抜のMF柚木創(流通経済大)について。今大会で関東A・B選抜において1年生で選出となった技巧派MFが財産に感じた高校時代の経験とは。
正確な両足のキックと広い視野。ボールを持ったら奪われないキープ力、そしてボールを引き出す的確なポジショニング。ゲームメーカーとして高いスキルを兼ね揃えている柚木は、デンチャレでもタレント揃いの関東B選抜でトップ下としてゲームをコントロールする重要な働きを見せた。
大会前に体調不良になって静養していた影響で、万全のコンディションではないが、思考のスピードと圧倒的な技術でカバーし、グループリーグ最終戦の北海道選抜戦では90分間通して攻撃のリズムメーカーとしてだけでなく、積極的にフィニッシュに絡む動きを見せて2-0の勝利に貢献し、チームも1位通過で決勝進出を手にした。
「いろいろなチームのトップレベルの選手たちとやれているので吸収できるものが多いと思っている一方で、ピッチに立つ以上は学年関係なく自分が勝負を決めるつもりでやらないといけないと思っているので、まだまだ満足していませんし、自分はもっとできると思っています」
ルーキーイヤーの昨年は夏の総理大臣杯でトップデビューを飾ると、関東大学サッカーリーグ1部後期では11試合に出場。終盤の2試合はスタメンの座を掴み取り、デンチャレメンバーに選出された。
これだけ見ると順調な滑り出しのように見えるが、チームは関東2部に降格。「2部降格は自分の責任、問題でもあると思っています。僕が試合に絡むようになって、勝利につながっていないという現実からは目を背けてはいけないと思っています」と唇を噛んだように、高校時代の恩師に言われ続けていたことの真の意味を痛感する1年となった。
柚木は流通経済大柏で1年生の時から出番を掴み、3年生の時には10番を託され、チームの絶対的存在となるはずだった。しかし、プレーの波があり、スタメンを外されることもあった。
「エノさん(榎本雅大・流通経済大柏サッカー部監督)に『結果で示せ』と言われ続けていましたが、心のどこかで自分のプレーが出来ればいいと思ってしまっているところはありました。だからこそ、重要な試合でベンチスタートだったり、途中交代だったりした時に、『何でなんだ』と思ってしまうこともありました」
一番悔しい思いを味わったのは高校最後の全国高校サッカー選手権大会だった。前橋育英との決勝戦。58,347人もの観衆が詰めかけた国立競技場のピッチに、柚木はスタメンで立った。
だが、リズムを作り出すボールキープや展開力を見せる一方で、フィニッシュワークに絡めず、運動量がなかなか上がらなかった。ハーフタイに榎本監督から「(後半開始から)10分、15分は見るから結果を出してこい」と言われ、後半のピッチに送り出された。だが、そこでもゴール前で厚みを作り出せず、後半18分に交代を告げられた(結果はPK戦の末に準優勝)。
ピッチを去る時点で号泣し、ベンチに戻っても涙は止まらなかった。側から見れば、『無念の涙』と名シーンのように映るが、榎本監督は「もっと上に行くためにはベンチに戻ったら、最後までチームのために戦わないといけない」と厳しいメッセージを送った。
最初はそのメッセージを受け止めきれなかったが、大学に入って高いレベルで揉まれれば揉まれるほど、榎本監督の言葉が厳しくも、自分の将来にとって大事なメッセージであることに気付いていったという。
「大学に入って半年間試合に絡めなかった自分、後期から試合に出ても結果を出せなかった自分を知れば知るほど、その場面、場面では『いい選手だな』と思われる時はあるけど、結局それが目に見える結果に出てないという現実を思い知らされました。もっと結果にこだわってハードワークをしたり、フィニッシュのところでパワーや技術を発揮したりしないと、僕の望む上の世界には行けないと思いました」
このデンチャレで柚木はその自覚と決意をプレーで表現している。関東A選抜との決勝戦を前に、改めて彼に1年前の選手権決勝の話を向けると、引き締まった表情でこう語った。
「遅かったかも知れませんが、ようやくエノさんが僕に言い続けていた意味がわかりました。正直、決勝のベンチで座っている僕に、『何で泣いてるん?』と言いたいですね。あのプレー内容であれば代えられて当然だし、むしろ最大限の信頼を示してもらっていたにも関わらず、応えられなかったのは自分なのに、泣いていたらダメだなと思います。でも、あの経験があったからこそ、こうして自分にベクトルを向けてやれていると思うし、これからも絶対に忘れてはいけないと思うので、これからもプレー1つ1つを大事にして、まずは関東Aを倒して優勝したいです」
1年前よりも表情も大人になった。結果を出す。シンプルだが一番難しい課題に向き合って、柚木はプロサッカー選手になるためのステップを着実に踏んでいる。
(安藤隆人 / Takahito Ando)
安藤隆人
あんどう・たかひと/岐阜県出身。大学卒業後、5年半の銀行員生活を経て、フリーサッカージャーナリストに。育成年代を大学1年から全国各地に足を伸ばして取材活動をスタートし、これまで本田圭佑、岡崎慎司、香川真司、南野拓実、中村敬斗など、往年の日本代表の中心メンバーを中学、高校時代から密着取材。著書は『走り続ける才能達 彼らと僕のサッカー人生』(実業之日本社)、早川史哉の半生を描いた『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、カタールW杯のドキュメンタリー『ドーハの歓喜』(共に徳間書店)、など15作を数える。名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクターも兼任。





















