ゴール喜び→SNSで「ボロカスに言われた」 痛感したレベル差…田中パウロ淳一が指摘する「これからの課題」

今シーズンからJ2に初昇格した栃木シティがJ2勢の洗礼を浴びている。開催中のJ2・J3百年構想リーグ地域リ―グラウンドEAST-Aで開幕3連敗。得点2に対して失点が10を数える現実を前に、攻撃の中心を担い、ピッチ外では著名インフルエンサーとして活動する田中パウロ淳一は何を思っているのか。(取材・文=藤江直人)

栃木シティの田中パウロ淳一【写真:徳原隆元】
栃木シティの田中パウロ淳一【写真:徳原隆元】

栃木シティはJ2勢に開幕から3連敗

 今シーズンからJ2に初昇格した栃木シティがJ2勢の洗礼を浴びている。開催中のJ2・J3百年構想リーグ地域リ―グラウンドEAST-Aで開幕3連敗。得点2に対して失点が10を数える現実を前に、攻撃の中心を担い、ピッチ外では著名インフルエンサーとして活動する田中パウロ淳一は何を思っているのか。(取材・文=藤江直人)

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 Tik Tokの約52万1000人をはじめとして、インスタグラムやX(旧ツイッター)、FacebookなどSNSのフォロワー数の合計は実に73万4000人を超えている。ひとたびピッチを離れれば著名なインフルエンサーとして、サッカーの域を越えて大活躍してきただけに、惨敗発進を喫した反響は小さくなかった。

 ホームのCITY FOOTBALL STATIONにベガルタ仙台を迎えた、7日のJ2・J3百年構想リーグ地域リーグラウンドEAST-A開幕節。1-4で敗れた栃木シティの田中パウロ淳一は、一矢を報いた自身のゴールを「喜び過ぎとか言われたけど、喜んでいる暇もなかった」と振り返りながら、SNSでの反響をポジティブに受け止めた。

「ボロカスに言われて本当に悔しかったけど、いまのうちに叩かれまくったほうが逆にいいストーリーができる。あれがあったから次はやってやる、という感じで受け止めながらやっていきたい」

 田中パウロが苦笑したのは、敵地・ニッパツ三ツ沢球技場に乗り込んだ21日の横浜FCとの第3節後だった。栃木シティは前半15分に幸先よく先制しながら、その後に5連続失点を喫して1-5で大敗していた。

 これで仙台、ホームで惜敗したブラウブリッツ秋田、そして横浜FCとすべてJ2勢に3連敗。得点2に対して失点は10を数える。田中パウロの加入後の3年間で関東サッカーリーグ1部、日本フットボールリーグ(JFL)、そしてJ3をすべて1年で突破する快進撃を続けてきた栃木シティがJ2勢の壁にはね返されている。

 負けて悔しくないはずがない。それでも田中パウロは「百年構想リーグでよかった」と笑い、秋春制へのシーズン移行に伴って今月から開催されている、昇降格のない半年間の特別大会で戦える意義を強調した。

「ここで負けないと、なかなか出てこないような課題ばかりなので。いままでは練習試合でも相手はすべてJ3だったので特に困らなかったんですよ。でも百年構想リーグでここまで戦った相手はすべてJ2で、本当に困ってばかりで。うまくいくとはもともと思っていないし、それはみんながしっかりと受け止めています」

 開幕3連敗を喫した相手のなかでも、昨シーズンはJ1リーグを戦っていた横浜FCとの一戦は、田中パウロをして「この試合が一番、何かができそうでできなかった感じがした」と完敗を認めさせている。

 それでも栃木シティが前へ進んでいくためのヒントを、自らのプレーを介してチームメイトたちに示した。それは前半15分に自陣から発動させたカウンターから、西谷和希が先制点を決めるまでの過程にあった。

 右サイドを起点に横浜FCが仕掛けていた波状攻撃のこぼれ球を、栃木シティの加藤丈が自陣のゴール中央から右タッチライン際へクリアした直後。ボールの落下点にいた右ウイングの田中パウロの背後から、3バックで形成される横浜FCの左センターバック(CB)を務めるキャプテン、細井響が猛然と間合いを詰めてきた。

 しかし、目測を誤ったからか。先にジャンプした細井が頭でクリアし切れない。こぼれ球を拾い、すかさずドリブルをスタートさせた田中パウロは「ああなると得意なので」とその後の展開に胸を張った。

 スライディングで止めにきた髙江麗央を軽やかにかわし、左斜め前へ向けてドリブルを加速させる。30mあまりを突破した田中パウロは、利き足の左足を介した絶妙のスルーパスを相手ゴール中央へ。鈴木武蔵が放ったシュートは左ポストに弾かれたものの、フリーで詰めてきた左ウイングの西谷がこぼれ球を押し込んだ。

「相手が前掛かりできているのは最初からわかっていたので。そこで五分五分のボールで僕たちが勝てたら、相手ディフェンダーもほとんどいない状況になるし、そこでチャンスになると思っていました」

 得点シーンをこう振り返った田中パウロは、関東サッカーリーグ1部やJFL、そしてJ3を席巻してきた攻撃的なスタイルを大事にしつつも、さらに上を目指すなかで新たな考え方を加える必要があると訴えた。

「これまでは勢いでいけたというか、リスクを背負って五分五分のボールをマイボールにしてきた分、攻撃的にいけていたんですけど、それがあまり通用しない。もうちょっとバランスよくしなきゃいけないフェーズに来たんじゃないかと僕は思っている。相手が前掛かりにくるなかでもうちょっとサイドでキープして、相手の矢印を剥がしていかないと。僕のところまで来たらキープできるつもりでいますけど、そこまでもっていける感じではないというか、どうしても焦って蹴っちゃう。ゴールが決まった場面はうまくいった瞬間でもあるし、相手のクオリティーが上がったのを頭に入れながら、あそこまでもっていくためにどうするのかがこれからの課題です」

 3試合続けて3トップを形成した鈴木と西谷だけではない。今シーズンの栃木シティには山下敬大や小池裕太、知念哲矢らに加えて、浦和レッズで活躍した元スウェーデン代表のダヴィド・モーベルグも新たに名を連ねた。

 照準を定めるのはあくまでも8月に開幕する2026-27シーズンのJ2リーグ。田中パウロは「(J1 リーグへの)昇格へ向けて選手を集めているので」としながら、栃木シティの現在地をこう語っている。

「阿吽の呼吸みたいなものはまだないので、今のうちに試せるものを試さないと、という気持ちはあります。とは言っても常に100%で、もちろん手を抜かずにやっていきますし、そのなかでJ3のクラブには絶対に勝たなきゃいけない。そのうえでJ2のクラブ相手にはどれだけできるか。そこは前向きに捉えています」

 百年構想リーグ終了後の6月13日には、MUFGスタジアム(国立競技場)で「JリーグオールスターDAZNカップが開催される。すでに2月6日から開始されているファン・サポーター投票の最初の中間発表で、田中パウロはJ2・J3百年構想リーグ地域リーグラウンドEAST-Aで堂々のトップに名を連ねている。

「期待していただけているのは本当にうれしいんですけど、それに見合った活躍はできていないので……」

 インフルエンサーの面目躍如とも言える人気ぶりに、田中パウロは思わず恐縮する。それでも日本時間の同15日早朝には森保ジャパンのワールドカップ北中米大会のグループリーグ初戦、オランダ代表戦のキックオフが待つ日程に「比べられますし、それこそワールドカップにも行きたいし」と笑いながらこう続けた。

「もちろん見に行きたい、という意味ですよ。代表メンバーに入る、とかとはちゃいますよ」

 大阪桐蔭高校から川崎フロンターレへ加入したのが2012シーズン。以来、ツエーゲン金沢、FC岐阜、レノファ山口FC、松本山雅FCとJ2およびJ3のクラブを渡り歩いた田中パウロにとって、在籍4年目の栃木シティは最も長くプレーし、インフルエンサー活動も含めてもっとも深い愛情を注いできたクラブとなる。

 だからこそ、J2勢の洗礼を浴びる船出にも下を向かない。常にポジティブで明るい32歳の苦労人を中心に、栃木シティは28日の第4節でJ1に長く所属し、今シーズンからJ2を戦う湘南ベルマーレをホームに迎える。

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藤江直人

ふじえ・なおと/1964年、東京都渋谷区生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後に産経新聞社に入社。サンケイスポーツでJリーグ発足前後のサッカー、バルセロナ及びアトランタ両夏季五輪特派員、米ニューヨーク駐在員、角川書店と共同編集で出版されたスポーツ雑誌「Sports Yeah!」編集部勤務などを経て07年からフリーに転身。サッカーを中心に幅広くスポーツの取材を行っている。サッカーのワールドカップは22年のカタール大会を含めて4大会を取材した。

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