高校でGK転向→選抜入り「まさか自分が」 地区予選で敗戦も…運命を変えた「ウチに来ないか」

東北選抜のゴールを守った岡野輝平【写真:安藤隆人】
東北選抜のゴールを守った岡野輝平【写真:安藤隆人】

高校からGKを始め、東北選抜入りした岡野輝平

 2月18日に開幕したデンソーカップチャレンジ刈谷大会(通称・デンチャレ)プレーオフ。東北選抜、北信越選抜、東海選抜、中国選抜、四国選抜、九州選抜の6チームが2グループに分かれ、上位1位が決勝に進み、勝者が2月23日から始まるデンチャレ本戦へと進出する。

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 ここではデンチャレプレーオフで目に留まった選手の物語を紹介していく。今回はプレーオフ敗退となってしまった東北選抜のGK岡野輝平(八戸学院大)について。高校時代は北海道大会初戦で大敗し、高校からGKを始めたという経歴の守護神は、どのようにしてデンチャレの舞台にたどり着いたのか。

 初のデンチャレの出番は、グループリーグ第2戦の東海選抜戦で訪れた。先発出場をした岡野は身長183センチの恵まれたフィジカルを生かし、安定したハイボールの処理とシュートストップのうまさを見せた。試合終盤まで1-0のリードを保っていた。

 後半34分に同点ゴールを浴びると、後半アディショナルタイム1分に東海選抜のDF十河拓平(東海学園大)と1対1となるが、十河のコースを狙ったシュートを抜群の反応で横っ飛びセーブ。ビッグプレーでピンチを救ったが、このプレーで与えたコーナーキックから逆転弾を浴びて1-2の敗戦。本戦出場は叶わなかった。

「1対1を止めたことでチームが乗るかなと思った矢先の失点。あれは僕のポジショニングミスだと思います。右CKが左に流れた時にコーチングしてDFを行かせたのですが、僕がそのDFに被ったポジションに立ってしまったので、シュートを打つ際を見ることができなかった。あそこはファーを消すポジショニングを取っていれば触れられることができるかもしれなかった。本当に僕の判断ミスです」

 試合後に唇を噛んだが、守護神の90分を通してのプレーは安定していて、ポテンシャルの高さを知るには十分の出来だった。

 岡野は北海道根室市の出身。中学3年の時は北海道大会に出場できず、地元の根室高に進学しても北海道大会の1回戦を突破できなかった。なぜ岡野はデンチャレ東北選抜に入るまでになったのか。本人に聞くとユニークな経緯を聞けた。

「多くの人が『根室高校?どこそれ?』だと思います。僕もまさか自分がデンチャレのピッチに立つなんて思っても見なかったです。そもそも大学でサッカーを続けていること自体が驚きです」

 根室柏陵中サッカー部ではセンターバックとしてプレーしていた。根室地区を突破できず、北海道大会に出場できなかったが、「地元のみんなと楽しくサッカーをやろうと思った」と根室市内唯一の公立高校である根室高に進学してサッカー部に入部した。ただ、サッカー部にはGKがいなかった。

「同じ根室の啓雲中にナショナルトレセンに入ったGK立花虎太郎(東京国際大)がいたのですが、『さすがに根室高には来ないだろう』と思っていたら、やっぱり旭川実業高に進学して。1個上の先輩GKも辞めてしまっていて、誰もいなかったんです。サイズがあって、走りたくなかったのもあって僕がGKをやることになりました」

 まさかの転身が自分の将来を大きく左右することになるとは思ってもみなかった。「やるからには自分なりに一生懸命やろうと思った」と、GKのプレー集やトレーニング動画をひたすら目に焼き付けた。根室高サッカー部の監督が同ポジション出身という縁もあり、自主トレに付き合ってもらうなど、守護神としての土台を必死で積み重ねた。

「GKとして上達するためにサッカーノートを書くようになって、GKの勉強とトレーニングをひたすらやりました」

 それでもチームは北海道大会ではなかなか勝てなかった。1年次の選手権予選、2年次のインターハイ予選は根室地区予選で敗れた。同年に開催された選手権予選では根室地区予選を突破し、北海道大会に進出すると、ここで驚くべき出来事があった。

 1回戦で帯広北高と対戦するが、結果は0-8の大敗。大量失点に打ちひしがれていると、八戸学院大の岩本寿生監督から「ぜひウチに来ないか」と声をかけられた。

「びっくりしました。初戦敗退で、しかも8点も取られたのに『なぜ俺が?』と正直思いました」

 ちょうど岡野と入れ替わる形で根室高を卒業したGK吉田匠人が八戸学院大に進学してレギュラーの座を掴み、大学2年でデンチャレ東北選抜に入ったこともあり、「後輩に面白いGKがいる」と話題になっていた。岡野の運命の歯車が回り始めていたのだった。

「GKの楽しさがだんだん分かってきて、『このまま続けたいな』と思っていた時だったので、本当に嬉しかった。『八学に来たらもっと上手くなれる』と言われて、進学することを決めました」

 よりGKというポジションを追求し、大学サッカーに向けてトレーニングを重ねた。高校最後の1年はインターハイ予選の道大会1回戦で滝川西高に0-3で敗れると、試合後に岡野以外の3年が受験のために退部。ただ1人の3年生として挑んだ選手権予選は、根室地区予選で敗れた。

 先輩の吉田のように八戸学院大でレギュラーになってデンチャレに出ることを目標に青森にやってきた岡野は、2年間ひたすら土台作りを継続した。

「1年の時は吉田さんとずっと一緒に練習をして、ポジショニングやステップ、セービングの姿勢などたくさんのことを教えてもらいました。2年の時はIリーグで試合経験を積みました。朝一から夜までひたすら飛んで、飛んでの連続でした」

 昨年は東北大学サッカーリーグ1部第6節の仙台大戦でスタメン出場を果たすと、そこからレギュラーの座をガッチリと掴んだ。夏の総理大臣杯にも出場し、道大会で勝てなかったGKがついに全国デビューを飾った。一気にブレイクの時を迎え、デンチャレのピッチに立った。

「プレーオフ敗退という結果は悔しいですけど、こういう場でいろんな人に見られながらプレーすることは嬉しかったし、楽しかった。『サッカーを続けてきて良かった』と思えたので、もっと続けるためにプロもここから視野に入れたいと思っています」

 夢は大きく。自らの力で引き寄せた運命の歯車をもっと大きなものにするべく、岡野はこれからもひたすら飛び続ける。それが飛躍への1番の近道であることを信じて―。

(安藤隆人 / Takahito Ando)

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安藤隆人

あんどう・たかひと/岐阜県出身。大学卒業後、5年半の銀行員生活を経て、フリーサッカージャーナリストに。育成年代を大学1年から全国各地に足を伸ばして取材活動をスタートし、これまで本田圭佑、岡崎慎司、香川真司、南野拓実、中村敬斗など、往年の日本代表の中心メンバーを中学、高校時代から密着取材。著書は『走り続ける才能達 彼らと僕のサッカー人生』(実業之日本社)、早川史哉の半生を描いた『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、カタールW杯のドキュメンタリー『ドーハの歓喜』(共に徳間書店)、など15作を数える。名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクターも兼任。

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