Jユースで2年プレーできず「エリート街道じゃない」 あえて選んだ“北陸の地”「関東だと埋もれる」

北陸大の小西陽希【写真:安藤隆人】
北陸大の小西陽希【写真:安藤隆人】

北陸大の1年生CB小西陽希

 2月18日に開幕したデンソーカップチャレンジ刈谷大会(通称・デンチャレ)プレーオフ。東北選抜、北信越選抜、東海選抜、中国選抜、四国選抜、九州選抜の6チームが2グループに分かれ、上位1位が決勝に進み、勝者が2月23日から始まるデンチャレ本戦へと進出する。

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 ここではデンチャレプレーオフで目に留まった選手の物語を紹介していく。今回は北信越選抜の1年生CB小西陽希(北陸大)について。183cmのサイズを誇り、守備スキルが高く、かつ左利きというCBは、この大会でこれまでの自分を超えようとしている。

「僕はちょっと性格的に大人しい方で、(北陸大の)西川(周吾)監督に『もっとリーダーシップを取れ』と言われているので、この大会は北信越選抜としての自覚と責任感を持って、もっと自分を表現しようと思って臨んでいます」

 フィジカル、高さ、対人スキルは間違いなく持っている。だが、まだ自信満々にプレーできているかと言われるとそうではない。ポテンシャルは十分あるだけに、今大会は『自分の殻を打ち破る舞台』として捉えている。

「僕はエリート街道を歩んできたわけじゃないんです」と口にするように、中学時代はFC東京U-15深川に所属するも、怪我や起立性調節障害などもあって、3年間のうち中2、中3の2年間はほとんどまともにサッカーが出来なかったという。

「もちろん元々の実力も足りなかったのもあって、試合に絡むことないまま終わりました」

 FC東京U-18の昇格は果たせず。高校の進路を決める際、八千代高に進学を決めた友人に「八千代で一緒にサッカーをやろう」と誘われた。

「もともと千葉県柏市が地元だったのですが、小学時代はレジスタFC(埼玉県八潮市)、中学は深川にいたので、地元でプレーしたことがなかったんです。それもあって、『八千代もいいな』と思うようになりました」

 練習会に参加をし、オファーをもらえたことで進学することを決めた。中学までは左足のキックを生かした左サイドバックをやっていたが、「中学でなかなか出番がなかったので、高校は違うポジションで勝負したいと思っていた」と、入学直後の面談でやりたいポジションを聞かれると、「CBです」と迷わず答えた。

 八千代では左利きCBとして2年生からレギュラーの座を掴み、関東大会Aグループ準優勝に導くなど、頭角を現し始めたが、県内では流通経済大柏、市立船橋の壁は分厚かった。
高校3年生ではインターハイ準々決勝と選手権準決勝で流通経済大柏に敗れ、全国大会にはたどり着けなかった。

 実際に高校時代のプレーを見ているが、鋭い出足で寄せることができて、ヘッドも攻守で安定しているし、かつ左足のフィードは伸びがある。将来もっと伸びそうなCBだと思ったが、雰囲気面では少しだけ物足りなさを感じた。いいCBは佇まいから自信と「かかってこい」というオーラが漂う。そのオーラがあるかないかが将来的に大きな分かれ道になるだけに、彼にそういう雰囲気が出たら相当面白い存在になると思っていた。

 このポテンシャルに目をつけたのが北陸大だった。8月の金沢ユースサッカー大会に八千代が参加した時、試合会場が北陸大グラウンドだった。そこで関係者の目に留まり、遠征中に練習参加をしてほしいと言われ、大会期間中に北陸大の練習に参加。そこで一発合格をもらった。

「8月の段階でどこからも練習参加のオファーがないという僕の現状では、関東の大学に進んだら埋もれてしまうと思った。それなら地方の大学で1年からチャンスを掴むこともありだと親とも話していた時期だったので、ちょうどお話をいただいて進学することを決めました」

 北陸大では1年生からCBとしてコンスタントに出番を掴んだ。スタメンから外れる試合もあるなど、完全なるレギュラーとまではいかなかったが、精神的にもフィジカル的にも着々と成長を遂げたことで、1年生ながらデンチャレの北信越選抜に選ばれた。

 ここで大学生となった小西を初めて見たが、まだ遠慮している部分はあるも、高校時代と比べると落ち着きが増しているように見えた。

 四国選抜との初戦。スタメン出場を果たした小西は、先に2失点を喫してしまうが、徐々にチーム全体が落ち着いてボールを握れるようになると、積極的なラインコントロールとインターセプトを見せるようになった。

 そして2-2で迎えた後半44分に左CKでニアサイドに飛び込んで、バックヘッド気味にゴール右隅に流し込んで値千金の逆転決勝弾をマーク。初戦勝利に大きく貢献した。

「昨年はまだ遠慮や甘えがあって、1年を通じて周りからの信頼を完全に得られたわけではありませんでした。それが僕としては悔しくて、やっぱり1年とか関係なく、僕が最終ラインに入ったら自分が牽引するつもり、いやしないといけないという気持ちでやらないといけないので、勇気を持って挑みたいです」

 FC東京U-15深川の1学年上の先輩に、今大ブレーク中のU-22日本代表FWンワディケ・ウチェ・ブライアン世雄がいる。ンワディケも中学時代に腰椎滑り症に苦しんでほとんどプレーできず、修徳高に進み、全国出場は叶わなかったが、桐蔭横浜大でさらに成長をして一気に超注目選手になった。

「ずっとリハビリが一緒で、黙々とやり続けていた姿が印象的でした。こうして年代別日本代表として活躍している姿を見て、僕も続きたいし、負けたくないと思っています」

 ピッチに立ったら頭は冷静にしながらも闘争心を剥き出しに戦う。彼が求めている相手を怯ませ、味方を勇気付ける迫力を身につけるためには、内側で自分に打ち勝てるかどうかにかかっている。彼は気づいているかもしれないが、自分の殻を破るために必死でもがいてきたことで、少しずつ殻に亀裂は入ってきている―。

(安藤隆人 / Takahito Ando)

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安藤隆人

あんどう・たかひと/岐阜県出身。大学卒業後、5年半の銀行員生活を経て、フリーサッカージャーナリストに。育成年代を大学1年から全国各地に足を伸ばして取材活動をスタートし、これまで本田圭佑、岡崎慎司、香川真司、南野拓実、中村敬斗など、往年の日本代表の中心メンバーを中学、高校時代から密着取材。著書は『走り続ける才能達 彼らと僕のサッカー人生』(実業之日本社)、早川史哉の半生を描いた『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、カタールW杯のドキュメンタリー『ドーハの歓喜』(共に徳間書店)、など15作を数える。名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクターも兼任。

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