雪で1か月プレーできず…運命の本番で「戸惑い」 強豪校1年生の悔しさ「これも言い訳」

新潟医療福祉大のルーキーFW矢﨑レイス【写真:安藤隆人】
新潟医療福祉大のルーキーFW矢﨑レイス【写真:安藤隆人】

新潟医療福祉大の矢﨑レイス「後輩たちに後ろ姿を見せられるようにしたい」

 2月18日に開幕したデンソーカップチャレンジ刈谷大会(通称・デンチャレ)プレーオフ。東北選抜、北信越選抜、東海選抜、中国選抜、四国選抜、九州選抜の6チームが2グループに分かれ、上位1位が決勝に進み、勝者が2月23日から始まるデンチャレ本戦へと進出する。

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 ここではデンチャレプレーオフで目に留まった選手の物語を紹介していく。今回は北信越選抜の1年生ストライカー・矢﨑レイス(新潟医療福祉大)について。先の高校選手権でベスト4に進出した後輩たちに刺激を受け、この大会を「運命を変える大会」と位置付ける。

 四国選抜との初戦、1トップとしてスタメン出場を果たしたが、結果から言うと立ち上がりからうまくボールを引き出せず、ノーゴールのまま後半28分に交代を告げられた。チームは矢﨑の交代直後に1-2から3-2にひっくり返して勝利を収めたが、交代の際に表情が曇っていたように、個人としては悔しい結果に終わった。

「気持ちは十分に高まっていたのですが、少し空回りをしてしまった印象でした」

 試合後、矢﨑はこう唇を噛んだ。しかし、北信越選抜は雪の関係でほとんど練習ができていない。特に新潟県勢は大雪の影響でフルコートでのサッカーはこの試合が1か月以上ぶりの状態だった。

「雪かきをみんなでしてダブルボックス(ペナルティーエリア2個分)くらいのスペースでミニゲームやパス回しをしたり、雪上サッカーをしたりしていました。足腰はかなり鍛えられて、太腿まわりも一回り大きくなりましたが、きょう雪のないフルコートのピッチで試合をして、『ピッチってこんなに広かったっけ?』と正直感覚がうまく掴めなくて戸惑いました」

 その言葉通り、立ち上がりから北信越選抜は全体の連携が噛み合っていなかった。矢﨑以外でも動きに精彩を欠く選手がおり、リズムをつかめないまま2点のリードを先に奪われた。徐々に試合勘が掴めてきたのか、後半27分にMF中川豪(金沢学院大)が1点を返してからは完全にペースを握り返した。

 本領発揮の前に交代する形となってしまったが、「これも言い訳だと思います。それでもやれるようにならないといけない」と矢﨑は自分にベクトルを向け続けた。

 トルコ人の父と日本人の母を持ち、180センチのサイズとフィジカル、スピードを兼ね揃え、ゴールに向かう推進力が魅力のFWだ。埼玉県のレストFCでプレーしていた中学時代はフィジカルにモノを言わせて、ゴリゴリと前に突き進んでいくFWだったが、「パスとドリブルで周りとつながりながら相手を崩していくサッカーに魅力を感じたし、僕もオフの動きやダイレクトの連携などを身につけたいと思った」と高校は福島の名門・尚志高に進学した。

 2年生まではテンポの良いパスワークのなかで自分の推進力をアジャストさせることに苦労したが、高校3年生になるとエースナンバー9を託されて、周りを使えて、自分でも仕掛けられるストライカーとして頭角を現した。

 プレミアリーグEASTで18試合に出場をするがゴールは2。選手権も1回戦で東福岡に0-0からのPK負けを喫し、「ストライカーとしてチームを勝たせる存在になれなかったからこそ、大学では同じことを繰り返さないように成長したい」と強豪・新潟医療福祉大の門を叩いた。

 1年から出番を掴み、4ゴール1アシストで9連覇に貢献をし、デンチャレ北信越選抜に選ばれるチャンスを掴み取った。

「プロになりたいし、もっと周りから信頼されるFWになるために重要な舞台」と意気込んで刈谷に乗り込んだ矢﨑には、もう1つ奮起しないといけない理由があった。

「1個下の後輩がインターハイと選手権でベスト4という偉大な結果を残して、嬉しい反面、『俺はこのままじゃいけない』と思いました」

 1月の準決勝・神村学園戦は国立競技場のスタンドで声援を送った。インターハイ準決勝に引き続いて神村学園と激闘を演じ、PK戦の末に涙を流した後輩たちの姿に大きな刺激を受けた。

「僕らの代は決めるべきところで決められなくて負けて、後輩たちは決めるべきところで決めたから結果につながった。僕の力不足がそのまま出た結果だったんだと、後輩たちに改めて教えてもらいました。それに去年のチームは2年生のときにはほとんどトップで出ていない選手ばかりで、特に(臼井)蒼悟(東洋大進学)はこの1年で驚くほど成長をして、選手権の主役になって高校選抜にも入った。

 本当に『俺も負けていられない』と思いましたし、キャプテンのDF西村(圭人)と木村(心貴)の2人がウチに入ってくるので、僕が頑張らないと先輩として彼らに示しがつかない。だからこそ、このデンチャレで結果を残して自信を掴んでチームに戻って、後輩たちに後ろ姿を見せられるようにしたいと思っています」

 奮起しなければいけない理由は山ほどあるし、自身の結果にシビアになって自分と向き合い続けないと上にはいけない。デンチャレは矢﨑にとってどんな結果でも受け入れて、さらなる進化を誓って前に進んでいく決意表明の舞台でもある。

(安藤隆人 / Takahito Ando)

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安藤隆人

あんどう・たかひと/岐阜県出身。大学卒業後、5年半の銀行員生活を経て、フリーサッカージャーナリストに。育成年代を大学1年から全国各地に足を伸ばして取材活動をスタートし、これまで本田圭佑、岡崎慎司、香川真司、南野拓実、中村敬斗など、往年の日本代表の中心メンバーを中学、高校時代から密着取材。著書は『走り続ける才能達 彼らと僕のサッカー人生』(実業之日本社)、早川史哉の半生を描いた『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、カタールW杯のドキュメンタリー『ドーハの歓喜』(共に徳間書店)、など15作を数える。名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクターも兼任。

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