独で評価を高める高井幸大 獲得に動いたSDも絶賛…21歳が持つ”確かな計画”「今年いければいいなと」

ボルシアMGで存在感を示している高井幸大(左)【写真:picture alliance/アフロ】
ボルシアMGで存在感を示している高井幸大(左)【写真:picture alliance/アフロ】

高井幸大は今冬ボルシアMGへレンタル移籍

 日本代表DF高井幸大が、プレミアリーグのトッテナムからブンデスリーガのボルシアMGへレンタル移籍して2週間少しが経った。加入直後からベンチ入りを果たし、ここまでリーグ戦3試合に途中出場。短い時間の中でも、着実に新天地での存在感を示し始めている。

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 出場したのは16節アウグスブルク戦(72分から)、17節ホッフェンハイム戦(46分から)、18節ハンブルガーSV戦(88分から)の3試合で、いずれも途中出場。守備選手の途中交代は試合の流れを左右する怖さもあるので、簡単ではない。そんななか、それぞれの試合で起用されているところに、信頼を感じさせる。

 特にホッフェンハイム戦は0-4と大差を追う状況からの投入であり、守備側にとっては精神的にもタフな試合だった。それでも高井は落ち着いたプレーで対応し、周囲の評価を高めている。

 新加入選手が最初につまずきやすいのは、戦術理解以前に環境適応だ。言語、練習強度、試合のテンポ、ロッカールームの空気。そこで孤立せず、早い段階でチームに溶け込めていることは、今後の出場機会を掴むうえでも大きな武器になる。

 では高井自身は、この2週間をどう受け止めているのか。ハンブルガーSV戦後、ミックスゾーンで取材に応じた高井は、冷静に現状を見つめていた。

「もちろん信頼して獲ってくれたと思うので、まずはスタメンで出られるように、自分のプレーを見せていきたいです。もっとチームに貢献しないといけないなとも感じています」

 途中出場をまずは一歩と捉えながらも、目線ははっきりと先にある。狙うのはあくまでスタメン定着だ。

 レンタル移籍を決断した理由についても、高井は率直に語った。

「決め手…試合に出られる状況だったら、すぐ行きたいと思っていました。あとはチームの順位や力関係も含めて、ここが良いのかなと思いました」

 若い選手にとって最優先すべきはやはりプレー時間。チームの立ち位置や競争環境まで含めて、出場と成長が両立できる場所として、このクラブを選んだということだろう。

 さらに高井は、ブンデスリーガで戦う難しさも踏まえた上で、今後の目標を言葉にした。

「まだこちらでプレーした時間が少ないので、まずは試合に慣れるところからだと思っています。その上で、もっともっとチームで中心になっていけるように、リーダーシップを持ってやれるぐらいの立ち位置まで、今年いければいいなと思っています」

 順応、定着、そして中心選手へ。段階を踏んだ成長イメージが明確で、そこには確かな計画性がにじむ。

 高井への評価は、現場レベルでも上がっている。高井獲得に動いたルーベン・シュレーダーSDは、HSV戦後のミックスゾーンで高井に話を聞いているこちらに気づくと、親指を立てて微笑んでくれた。

 とても興味深いシーンだ。高井はここまで3試合でスタメン出場はなく、合計出場時間は65分。専門誌キッカーではホッフェンハイム戦だけ採点がされ、及第点の4点どまり。まだ抜群のパフォーマンスを披露したわけではない。

 新加入選手獲得の際に、クラブの代表が「資質のある選手。将来性に期待している」ということはよく口にするが、そのまま出場機会がないまま、クラブを去るなんて例はたくさんある。

 ではなぜ、シュレーダーはそんなリアクションを見せたのだろう?

 直接尋ねてみた。

「素晴らしい選手だからだよ。我々にとって、コウタ・タカイがうちに来てくれたというのは、非常に喜ばしいことなんだ。前節では0-4の後半から出場したけど、素晴らしいプレーを見せてくれた。今日も試合終盤のプレッシャーが非常に強い状況での出場ながら、落ち着いて自分のプレーを見せてくれた」

 シュレーダーはこちらの声かけに笑顔で受け答えしてくれた。短い出場時間で守備の選手が自分のプレーを見せたと表現されるのは、守備の局面で迷いが少なく、判断と実行のスピードが一定以上である証拠だ。

 さらに、高井の人間性にも触れている。

「それに彼は素晴らしいメンタルと人間性を持った選手だ。ポジティブなことしか言えない。今日もスタメン出場ではなかったけど、ポジティブな雰囲気を壊していない」

 選手なら誰もがスタメン出場を狙っている。どれだけ頭の中で整理しようとしても、ベンチスタートの日は感情が揺れやすい。しかし高井は、チームの空気を壊すことなく、仲間を支える側に回っていた。これは信頼を勝ち取るうえで、重要な要素にもなり得る。

「スタメンでプレーするには、試合感はまだ足りていない?」と重ねて聞いてみたら、シュレーダーはこう答えた。

「いやいや、もうすぐだと思うよ。練習と試合を重ねるごとによくなっている」

 スタメン出場の時期は時間の問題。現場はそう見ている。

 ボルシアMGでの高井幸大は、その短い出番の中で評価を積み上げている。戦力としてだけではなく、この短期間ですでにチームの一員として受け入れられている事実は大きい。次に求められるのは、スタメンとしてピッチに立った時のチームを勝利に導くパフォーマンスだろう。

 ブンデスリーガの強度とスピードに慣れた時、彼の真価が本格的に試される。

(中野吉之伴 / Kichinosuke Nakano)



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中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)取得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなクラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国で精力的に取材。著書に『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

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