17歳に驚き「こいつだったら、何かやる」 大先輩も確信…奇跡を呼んだサプライズ起用

同点弾を決めた千葉の姫野誠【写真:徳原隆元】
同点弾を決めた千葉の姫野誠【写真:徳原隆元】

千葉の鈴木大輔、姫野誠について「『こんなにすごい選手なのか』と」

 ジェフユナイテッド市原・千葉は12月7日のJ1昇格プレーオフ準決勝で、RB大宮アルディージャに0-3という絶体絶命のスコアから4-3へ試合をひっくり返して決勝進出を決めた。小林慶行監督の采配が、会場の雰囲気を一変させた。

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 大きな転換点となったのは後半15分、高校2年生で17歳のMF姫野誠が投入されたときだ。前半の内容を見て、ハーフタイムは選手交代をする必要はないと感じていたという小林慶行監督だが、3失点目を喫していたこともあり、「何か状況を一変させたいところでした」と、姫野を送り込んだ。

 メンバー入りもサプライズだった姫野の抜擢について、「トレーニングのところからクオリティの高さは見せていましたし、彼はアンダー世代のW杯(U-17W杯)という目標があり、それが終わって合流したんですけれど、少し疲れているのかなという状況があったなか、今週は目の色が変わっていて、明らかに『自分がメンバーに入るんだ』という気持ちが伝わるようなトレーニングでの姿勢がありました」と説明した。

 とはいえ、一発勝負のプレーオフ準決勝、Jのピッチに立った経験のない選手を送り出すことは、相当に勇気のいることだったはず。それでも姫野起用に踏み切ったのには、劇的な起爆剤となることを期待してのことだったという。

「後半の1失点目でトータル0-3という相当厳しい状況にはなりました。その苦しい状況を一変させる。じゃあ何を今、自分たちが持っているかという選択肢のなかで、僕自身がチョイスしたのは、あの交代(姫野投入)でした。やっぱり彼がアカデミーの選手というのはジェフサポーターも理解していましたし、スタジアムの雰囲気を変えたいという部分も強くありました」

 ピッチ上の選手は、どう感じていたのか。DF鈴木大輔は「練習のなかから、彼がボールを持つと何かチャンスが生まれるくらいクオリティが高かったんです。練習のなかで僕らもみんな『こんなにすごい選手なのか』と、ビックリするくらいでした。言い方はあれですけど、入ってきた瞬間は『楽しみ』というか。『こいつだったら、何かやるだろうな』というのは、僕は思っていました」と話す。

 そして姫野は投入されてすぐのプレーで、いきなり味方とのワンツーからシュートまでいった。シュートはGKの正面を突いたが、そのプレーは『何かやるだろう』という予感を確信に変えるには十分だった。「物怖じしなく、フレッシュな気持ちで彼ができていて、そこに対して勇気をもらった選手はいっぱいいたと思います。彼のゴールもそうですが、姫野選手が入って自分たちが勇気を持てた。ちょっとだけ希望の光になったと思います」と、鈴木は言う。

 ピッチに差し込んだ“希望の光”は、後半26分にFWカルリーニョス・ジュニオが1点を返すと一気に弾けた。大宮のチーム関係者は「きょうはフクアリの雰囲気に敗れた」と肩を落としたが、スタンドとピッチが一体になり、16分間で4ゴールを奪取。そのなかには姫野自身のループシュートでの初ゴールもあった。この日のスタジアムには、J1で戦っていた千葉を知らない人も多くなっていたはずだが、2008年のJ1最終節FC東京戦(2-3)の『奇跡のフクアリ』を追体験するような試合となった。

 2008年はアルビレックス新潟に在籍していた鈴木だが、当時の大きな話題となったあの一戦について、「僕はあの試合をテレビで見ました。そのときから僕はフクアリの奇跡みたいな、フクアリの力は信じていて、『凄いな』と思いながらやってきました。きょうもこのスタジアムの力を信じてやっていました」と、0-3になってもあきらめずに戦えた拠り所となっていたと明かしたが、この試合も今後、千葉の選手たちがフクダ電子アリーナでの大一番で“不屈のメンタリティ”を持ち続けられる拠り所になるだろう。

 その奇跡の一戦が起きた2008年生まれの姫野のデビュー戦について、小林監督は「アタッカーとして、数字を出したことは年齢関係なくすごいと思います」と称えたが、「ピッチに立てば年齢は関係ない。まだシーズンは続くので、浮かれすぎずにやっていきたい」と気を引き締めた。

 まだ戦いは終わっていない。12月13日、再びフクダ電子アリーナで行われる徳島ヴォルティスとの決勝戦に勝たなければ、この一戦の勝利の意味は半減してしまう。小林監督は「最終的に自分たちがひっくり返せたことは良かったのですが、ゲームとしてはしっかり反省したい。選手にも先ほど伝えましたが、喜びすぎずに、また粛々と準備をしましょう、やるべきことをやろうと。きょうのゲームではやるべきことはやっていた部分もあったけれど、反省しないといけないことはたくさんあると話しました。次に向けて、また良い準備をしたい」と、気を引き締め直した。

(河合 拓 / Taku Kawai)



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