日本代表DFが独で記録する“意外な数字”「感化されて」 バイエルンFWに匹敵…開花は「時間の問題」

ブレーメンの菅原由勢【写真:picture alliance/アフロ】
ブレーメンの菅原由勢【写真:picture alliance/アフロ】

菅原由勢は今夏にブレーメンに加わった

 今夏サウサンプトンからドイツ1部ブレーメンにレンタル移籍で加入した日本代表DF菅原由勢は、第2節レバークーゼン戦から9試合連続スタメン出場を果たしている。加入直後はすぐに日本代表への合流があったり、しばらくはホテル生活が続いたりと、ドタバタな中でのプレーを余儀なくされていた。ここ最近はだいぶ落ち着いて、チームへの順応は着実に進み、それが結果にも表れている。

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 10節ヴォルフスブルク戦では1点を追う終盤に、見事なクロスでイエンス・シュターゲのゴールをアシストし、アディショナルタイムにはまたしても右からの鋭いクロスがきっかけとなり、サムエル・ムバングラの逆転ゴールが生まれた。9試合ですでに3アシストをマークしている。

 ドイツへ渡り2か月近くが経った。いろいろと感じることもあるはず。これまでのリーグとの違いをどこに感じているかを尋ねてみた。

「ボールを受ける時はある程度スペースはあるのかな。でも最後のところは、人がしっかり守りに来ている。ある程度ボールを運べる感覚はあるし、味方につけられる。見えているところも増えているし、選択肢を持てる状態でボールを受けられる。ただボックスでは人に強いというか、しっかり守ってくる。もっとチャンスを作れる部分はある。初めてドイツにきましたけど、非常に充実しているというか、成長を感じながらやれている。きっ抗した試合で一発のクロスだったりとか、一発のパスで流れを変えられたりというのはできると思う」

 クロスそのものだけではなく、クロスへつながるコース取りにも工夫が見られている。ブレーメンではミドルゾーンでボールを持っている時は相手の背後に抜ける動きをしようという意識がチームとしてあるものの、ファイナルサードに入ったときに、さらにもう1段階スペースを作る動き、相手を引き寄せるという動きがまだまだ足らないのではないか、と分析していたことがある。

「守備を固める相手にはそういう動きが必要になってくると思う。もっと自分が攻撃でオーバーラップして関わるのが大事になる。1回のアクションで1点を取ろうっていうんじゃなくて、1回でダメなら2回とかしっかり回数を増やしていくのは大事だし、もっともっとできると思う。質の部分も回数をこなせば上がっていく。僕が走れる部分もあるし、味方と共有して相手ディフェンダーにとってある程度カオスな状況というか、判断を迷わせるようなランニングがないと効果的ではないと思う。この最終ラインの最後のところでの動きは、もっと増やした方がいいかなと思います」

 賢い動き出しで相手守備を揺さぶる。ワイドに開くだけではなく、インサイドハーフに入ってパスを引き出すことも、そこからスペースに侵入することもできるのは、チームにとって重要な存在だ。

 そしてそんな菅原が、さらにブレーメンで日々取り組んでいることがあるという。それがシュートだ。

「ブレーメンは居残り練習をしている選手が多い。僕も感化されて毎日シュート練習しています。全然入んないですけど(苦笑)。でも、これを続けていくことが大事」

 実は菅原のシュート数は、DF登録の選手で最多の数字を残している。10節終了時で16本。1試合平均2本弱。同じシュート数でランクしているのがバイエルンのドイツ代表FWセルジ・ニャブリやレバークーゼンの新鋭FWクリスティアン・コファーネというのが興味深い。

 かなりのシュート数を記録していることについては、「それを枠に持っていったりができていないので、そこが課題ですよ」とこぼしはしているが、ネガティブな気持ちは一切持っていないという。

「入るときは入るし、入らないときは入らない。継続してシュート練習をしているし、またインサイドに持ち込んだ時にイメージを持ってのシュート練習は相当している。だから時間の問題だと思う。僕がシュートを打てているということをポジティブに捉えている。あとは点を決めるだけですね。責任感もってシュート打ちたいと思います。魂はのってるはずなんですよ」

 前述のヴォルフスブルク戦でも同点とした後のアディショナルタイムに、強烈な右足ボレーシュートを放っている。これはGKカミル・グラバラがファインセーブでしのいだが、コースといい、威力といい非常にレベルが高いシュートだった。

 シュートという選択肢が増えたことは、菅原の攻撃バリエーションがアップしたことを意味する。サイドからの精度の高いクロス、相手守備ライン裏へ飛び込むタイミングのいい走り込み、さらにハーフスペースに侵入してゴールを脅かすことができたら、これは日本代表にとっても重要な武器になる。

「しっかりとチームとしてやりたいところと個人として振り返るところ、毎回課題がチームに対しても、自分に対しても出るというのは、すごいポジティブなこと。そことしっかり向き合ってやっていけたらなと思います」

 10節のマインツ戦を1-1の引き分けで終えた後、菅原はそう言葉を残していた。明瞭な話し方から日々の充実と取り組みへの自信が感じられる。成長を続ける菅原が、日本代表にとって大事なピースとなるかもしれない。

(中野吉之伴 / Kichinosuke Nakano)



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中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)取得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなクラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国で精力的に取材。著書に『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

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